【薬コラム連載】熱性痙攣(ひきつけ)と薬の使用

【薬コラム連載】薬を間違えて飲ませてしまった時の対処方法 〜実例〜

[前回の記事]

もし、痙攣を起こしたらどうなるのだろう

薬剤師ライターのたんぽぽむしです。

冬になると子どもが風邪をひいて熱を出す機会も増えますよね。
発熱時の心配事に挙げられるものといえば「痙攣(ひきつけ)」
“もし、痙攣を起こしたらどうなるのだろう”?または、既に痙攣を起こしたことがあっても“またなってしまったときにはどうしたらよいのだろう?”“そもそも痙攣って何が原因で起こるんだろう?”などなど。

痙攣についてわからないことが多い故に心配な方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、2015年3月に改訂された、日本小児神経学会「熱性けいれん診療ガイドラインを基に、
痙攣とは何か?
痙攣が起ったときの注意
痙攣止めの坐薬の使い方、
痙攣を起こしたことのある子供には注意が必要な薬
等について解説してゆきます。

熱性痙攣とは?

・生後6ケ月~5歳の小児が高熱を出したときに起こすけいれんのこと。
(髄膜炎や代謝異常など痙攣の原因が明らかでないもの)
・原因としては「脳がまだ未熟なこと」「引き金となる熱を出したこと」「遺伝的要素などが挙げられますが、実際のところはよくわかっていません。

・急に熱が上がるときに起こりやすく、突然意識がなくなったり、白目をむいて身体を反り返らせたり、手足をがくがく震わせたり、顔が紫色になったりすることもあります。初めてだとかなり驚くと思います。

・大半は5分以内に収まり、後遺症などを伴わないことが多いので、むやみに心配する必要はありません。
・小児の7~11%に起こると言われますが、生涯で1回だけのことも多く、2回目を起こすのはそのうちの30~40%、3回以上起こすのは10%と言われています。
・薬により予防が可能です。(ただ予防のために薬を使うのは日本だけで、使い方に注意が必要です)

熱性痙攣が起こったときの注意

・慌てない!
痙攣は数分で収まることが多いです。
その後の成長や命に関わることはほとんどないので心配しないでください。
・余計なことはしない!
舌を噛んでしまうことを心配して、口の中に指や割り箸を入れないこと。
かえって危険になるので、大きな声をかけたり身体をゆすったりしないで、とにかく静かに見守ってください。
・楽な姿勢で寝かせる。
衣服をゆるめて、楽な姿勢で寝かせてください。
もし吐きそうなら、吐物でのどを詰まらせないよう身体ごと横向きに。
・痙攣の様子をよく見る。
痙攣は何分くらい続いてどんなだったか。(左右対称か、繰り返したか等)
あとで主治医に伝えるために、メモしておくとよいでしょう。
・痙攣止めの坐薬(商品名ダイアップ坐剤)を1個入れる。
(詳しい使い方については後ほど)
・場合により救急車で病院へ。
痙攣が10分以上続くときや一度収まってもまた繰り返すとき、痙攣の後に身体に麻痺が残るときなどは、救急車で病院に向かってください。
またすぐに痙攣が収まっても、初めての時は受診してください。
(初めての痙攣で心配な時は、救急車を呼んでも良いと思います。上記以外で本人も家族も落ち着いているなら、自家用車で病院へ)

どういうときに薬が処方されるか?

以前は、1回痙攣を起こした子供には、予防の目的で、熱が出るたび痙攣止めの坐薬を使用するよう指導されていました。けれども、一度痙攣を起こした子どもの半数以上が2回目は起こさないこと、また薬によりふらつきや眠気、興奮などの副作用を起こす可能性があることなどから、必要のない薬の使用は控えたいという考えで、今回のガイドラインには再発予防のための坐薬の適応基準が明記されました。(一度痙攣を起こしたら、その後も必ず薬を使うわけではないということです。)
診察後に坐薬(商品名:ダイアップ)が処方されるのは、次の場合です。

1) 初めての痙攣から24時間以内に起こりやすい痙攣を防ぐため。
(痙攣を起こしたとき病院で坐薬を入れてくれるのは、今起こっている
痙攣を止める目的ではなく、もう一度起こるのを防止するためです。)
2) 熱性痙攣を起こしやすい子どもが、次回発熱した時にまた痙攣を起こすのを防ぐため。
今回新たに明記された2)の“予防投薬の適応基準”は以下の通りです。
(わかりやすいように一部表現を変えてあります)

予防目的で処方されるのは、次のどちらかに当てはまる場合。
「痙攣が15分以上続いた場合」または
「次のうち2つ以上を満たした痙攣を2回以上繰り返した場合

ⅰ)焦点性発作(部分発作)または24時間以内の反復発作
ⅱ)熱性痙攣を起こす前から神経学的異常や発達遅滞があった
ⅲ)家族に熱性痙攣やてんかんの人がいる
ⅳ)生後12ケ月未満
ⅴ)発熱後1時間未満での発作
ⅵ)38℃未満での発作

例えば、痙攣が15分以上続いた場合は、それが初めての痙攣でも、これからは熱が出るたび予防で坐薬を使うよう勧められると思います。
また、痙攣が15分未満でも、0歳児でかつ家族にも痙攣を起こした人がいて2回以上痙攣を起こした場合は、予防投与を指示されると思われます。
逆に、発熱時、数分でおさまる痙攣を2回起こしても、1歳以上で家族にも同じような人がいなければ、予防で使わなくてもよいという考えです。
ただ、これは医師の考えや家族の希望、地域の医療体制などにより変わってくると思われます。痙攣を起こした場合は、今後の対応の仕方について、主治医の先生とよく相談しておくとよいでしょう。

痙攣止めの坐薬の一般的な使い方

それでは、実際に薬が処方されたら、どう使えばよいか?
・37.5℃以上の熱に気づいたら1個入れ、8時間後に38℃以上の熱が続いていたら、2個目を入れる。
基本的に3個目は入れないこと。(もし入れる場合は、2個目から16時間以上はあけること)
(痙攣は発熱後24時間以内に起きることが多いので、2個入れれば十分に対応できます。続けて使いすぎると薬の量が多くなり、眠気・ふらつきなどの副作用が出やすくなるので注意が必要です。)

・痙攣止めの坐薬が溶け出す温度は50~55℃。
坐薬を手の中で温めても柔らかくなることがなく、そのまま入れるとお尻が痛いので、坐薬の先を水やオイルで濡らしてから挿入するとよいでしょう。
挿入後、すぐに動くと坐薬が出てしまうことがあるので、ティッシュなどで肛門の入り口を押さえるか、すぐにおむつやパンツをはかせ、数分間は抱っこして肛門部を大人の太ももの上にのせておくと坐薬が出にくいです。

・もし、一度入れた坐薬が出てしまったら?
ダイアップを販売している高田製薬株式会社の学術部に聞いてみました。
薬の効果が出るのは15~30分。メーカーとして入れ直しに関する明確な規定はないとしながらも「参考までに」とある医師による基準を教えてくれました。以下の通りです。
入れてから5分以内に出てしまった場合は、同じものを再度入れ直す。
15分以内に出てしまった場合は、形が崩れていなければ同じものを入れ直す。形が崩れ始めて入れにくいときは新しいものを入れ、かなり崩れているときは入れ直しはしない。
15分以上経っていれば薬が吸収され効き始めているので、一部出てきてしまっても入れ直す必要はない。
30分以上経っていれば、薬はほぼ吸収されていると考えられる。
子どもの体重や、これまでの痙攣の度合いなどにより、入れ直すかどうかは変わってくると思いますが、痙攣自体は心配な状態ではないこと、日本以外では予防のために坐薬を使用しないこと、薬が多くなることで起こる副作用も考慮すると、個人的には迷った場合は入れ直さない方針でよいかと思います。

・解熱剤の坐薬も一緒に使いたい場合は?
痙攣止め(ダイアップ) →30分待って→ 解熱剤(アンヒバ)の順で。
2種類を続けて入れたり、順序を逆にすると、痙攣止めの成分が解熱剤の坐薬を作っている材質(基材)に取り込まれて、効き目が出るのに時間がかかってしまいます。
解熱剤の飲み薬を使いたい場合は、痙攣止めの坐薬と同時でも構いません。

・解熱剤で熱を下げたら痙攣は起きないのか? それとも
痙攣を起こしやすくなるので解熱剤は使わないほうがよいのか?
ガイドラインでは「解熱剤で熱を下げても、熱性痙攣を予防できるとする科学的根拠はなく、予防のための解熱剤の使用は勧められない」としています。
一方で「解熱剤を使用したことで、再び熱が上がった時に痙攣を起こしやすくなるという根拠もない」と書かれており、痙攣を心配して解熱剤の使用を控える必要もないと示されています。
結局、熱性痙攣を起こしたことがあってもなくても、解熱剤の使い方は変えなくてよいというのが、現在の考え方です。熱があってグズグズ機嫌が悪く、水分も取れない、眠れないというときには我慢せず使ってもよく、逆に、熱が高くても機嫌がよく、そこそこ元気がある場合は、薬を使って無理に熱を下げる必要はないと思われます。

・坐薬の量はずっと同じ量でよいのか?
ダイアップには4mg、6mg、10mgの3種類がありますが、通常の使用量は体重10kgあたり4~5mgです。
ですから、体重が増えれば薬の量も増やす必要があり、最初は4mgを使っていても15kg前後になったら6mgに増量します。
ただ、坐薬を使ったときにふらつきや興奮などの副作用が出た場合や、副作用は出ていなくても医師の考えにより少なめ(10kgあたり3mgくらい)処方されることもあります。

・一度使い始めた場合、いつまで使えばよいのか?
ガイドラインでは明確な科学的根拠はないとしながらも「最後に発作が起きてから1~2年、もしくは4~5歳まで
としています。その理由は、熱性痙攣の再発は最初に痙攣を起こしてから1年以内に7割程度、2年以内に9割程度が起こるという報告があるためです。
これまで予防で坐薬を使ってきた方は、小学校に上がる頃を目安に、最後に痙攣を起こした日を伝えて、もうやめてもよいか、主治医と相談することをお勧めします。
痙攣を起こした子どもに注意が必要な薬
以下の薬は、痙攣を起こしたことがある子どもが飲むと、また痙攣を起こしたり痙攣が長引いたりする可能性があるので注意が必要です。

・成分名:クロルフェニラミン(医療用医薬品名 ポララミン)、クレマスチン(タベジール)、シプロヘプタジン(ペリアクチン)、ジフェンヒドラミン(レスタミン)これらの薬は市販の総合風邪薬や鼻水止めの薬にも入っていることが多いので成分名でチェックが必要です。
・成分名:テオフィリン(テオドール)喘息や気管支炎の薬で、熱があるときに飲むと痙攣を起こしやすくなります。
・成分名:ケトチフェン(ザジテン)喘息、鼻炎、蕁麻疹などの治療薬です。市販薬にもあります。

これらの薬を服用しないためにも、初めての病院や薬局に行った際には、これまでに痙攣を起こしたことあることを忘れずにお伝えください。

今回は「熱性痙攣と薬」についてまとめてみました。
痙攣に限らず、風邪をひいたときの熱、咳、鼻水などの症状は、身体がばい菌をやっつけたり、身体から排除しようとして起こっていることであり、つらい症状をただ我慢する必要はありませんが、むやみに薬で抑え込もうとするべきではないと考えます。どこかに腫れや痛みがあるときも、帯状疱疹や蕁麻疹などの症状も同様で、身体からのSOSのサインを見逃さず、原因を考えて取り除いたり、原因はわからなくても身体を休めたりといった、薬以外のセルフケアについて、その都度立ち止まって考えてみることが大事なのではないでしょうか?

著者 薬剤師ライター たんぽぽむし

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。