文化的なミニマリストになるには、単に物を減らすだけではダメ

突然ですが筆者は自身を「ミニマリスト」だと思っています。
必要最低限な物を選んで生活しているからです。要らない物は捨てています。

(写真は2014年頃のコーディネートです。)

一方、グーグルで「ミニマリスト」と検索すると、信じられないようなミニマリストが数多く居ます。
彼らは、引っ越し直後としか思えない殺風景の中に、布団一枚だけ敷いて寝ているようです。

ミニマリストの多様性

ミニマリストの意味を検索すると

持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人。自分にとって本当に必要な物だけを持つことでかえって豊かに生きられるという考え方で、大量生産・大量消費の現代社会において、新しく生まれたライフスタイルである。「最小限の」という意味のミニマル(minimal)から派生した造語。

コトバンクには、このように紹介されています。

様々なライフスタイルがあるので、ミニマリストの「どれが正しい」というのはありませんが、見かけるミニマリスト達は文化や食事、美術的要素を排除して生活しています。

本来のミニマリストの意義である、「無駄を無くして自分にとって本当に必要な物だけを持つことでかえって豊かに生きられる」というコンセプトのはずが、いつしか豊かな生活という意義さえ失っています。

確かにスーツケース1つで移動できる身軽さは風来坊のように自由気ままに生きるには便利ですが、空の部屋に住むのは家具付きウィークリーマンションよりも劣悪な環境で生活を強いられます。

では、高級ホテルは無駄な物ばかりなのか?

上の写真は「横浜ロイヤルパークホテル」と「ローマ カヴァリエリ」の部屋ですが、質の高い調度品にテーブルや椅子、ベッドがあります。訪れたゲストが快適に過ごせる”最小限”の設備が整っています。筆者はこれこそが”ミニマル”のあり方だと思います。

そこに文化的要素、例えば「おもてなし」「食事」「服飾」などが加わってこそ快適な生活です。

食文化は日本人の基本では

米を炊き、旬の食材を調理して楽しむのは日本人の基本だと思います。たとえ朝食は白米と焼鮭だけ、といった粗末な料理でも、美しい器に盛り付けて頂くだけで心が豊かになります。
すぐに作れるおひたしや、筑前煮などの簡単なものでも、本宅で食事を作るのは良いものです。

ミニマリストのインタビューの中には、「家では自炊しません!凝ったものがあれば外食に行きますから」と言って包丁の1つも無い方も居るようですが、文化的な生活とは程遠いと思います。

同じ理由で、「おもてなし」が希薄になっています。「近くの喫茶店に行けばいいじゃん」という意見もあるでしょうが、来客者にお茶の一つも出ないのでは寂し過ぎます。筆者が古い価値観であるからか、来客者には「遅くなったので食べていって下さい」と言えるような、食器や調理器具、家具は生活に必要な最低限のものに含まれます。

ミニマリストは視覚的要素にこだわりすぎてる

ただ部屋を空っぽにして、チープな中国製の家具とも呼べない折りたたみテーブルなどを置いて満足しているようですが、視覚的にすっきりしているだけで本質的に快適だとは思えません。

「この固形石鹸ひとつあれば、手指、食器、洗濯、身体に頭に全て洗えます」と言っているようなものです。確かに物理的には洗えますが、それが豊かな生活かは分かりません。

もし極限まで無駄を減らすと言うのであれば、ドヤ顔で置いてあるマックブックやスマホさえも無くせば無駄な情報や、俗世のしがらみさえも捨てる事ができます。

(現在の部屋は模様替えして、このような形になっています。無駄な物はありません。)

質の高い調度品を揃えて”買い換えない”という選択

ヨーロッパを旅行してB&Bのような民宿に泊まると、18世紀にタイムスリップしたのではないかと思えるような光景を目の当たりにします。
美しい象嵌細工の施された家具や、天然大理石の床、色の沈んだ油絵など、映画のワンシーンのようです。

そこに泊まって気づくのが、「この宿の中で、ここ数年に新しくなったものは何だろう」ということです。
ぐるりと部屋を見渡しても、50年〜100年を優に越えるものばかりです。
目に付く新しい物と言えば、お湯を沸かす”電気ケトル”と”テレビ”程度です。

一見、豪奢に見える部屋ですが、ミニマリストの極地に達しているように思えます。無駄な物が一切無く、何十年、何百年もそのままになっているのです。

これはヨーロッパに限ったことでなく、日本の古民家でも同じ事が言えます。
桐箪笥に一枚板の座卓、いずれも何百年も使えて、傷ついたり古くなったらカンナで一枚剥いてやれば新品同様に美しい姿に戻ります。囲炉裏もしかり、南部鉄器などの鉄瓶も何十年も使う事ができます。日本人も同じようにミニマルで最小限の生活をしていたはずです。

本質的な意味での”ミニマリスト”は、単に賃貸アパートに布団1枚を敷いて寝るのではなく、「不必要な物を置かずに、長く使える調度品に囲まれて、快適な暮らしをする」のが本来のあり方であると思うのです。

著者 おはし

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