オールド・ノリタケの魅力

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オールド・ノリタケの魅力

今回は洋食器の中でもアンティークに分類されるオールド・ノリタケを紹介します。
オールド・ノリタケとは、現在のノリタケ・カンパニーリミテッドの前進である日本陶器がヨーロパやアメリカに出荷した物を指します。

日本では未だにコレクターが多く、洋食器を収集している人であれば一度は聞いたことがあると思います。

私も以前、横浜のみなとみらいでタカラダというお店でオールド・ノリタケをじっくりと見たことがあるのですが、緻密な金彩加工で色合いが独特なのに圧倒された覚えがあります。
そして先週に大阪出張した際に阪急百貨店で素敵なオールド・ノリタケに出会ったため今回合わせてその食器も紹介したいと思います。

 オールド・ノリタケの定義

明治の中頃(1884(明治17)年)から第2次世界大戦終結(1945(昭和20)年)までの約60年間に、森村市左衛門を創始者とする森村組(前期)と日本陶器(中・後期)が製造した磁器製品の総称。
※参考文献 オールドノリタケと国産アンティーク コレクターズガイド ドンボ出版 著者 木村一彦 葵航太郎

このように、1884年〜1945年までのノリタケをオールドと定義しているそうです。
ですので10年〜20年前など少し古いノリタケをお持ちでも、それはオールド・ノリタケとは呼ばないそうです。

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金彩を多様して有機的曲線を多様したアール・ヌーヴォー様式のプレートから、シンプルな幾何学模様のティーセットまで様々な趣向のデザインがあります。

上記の写真では、写実的な絵に一周加工用に金を厚く持っています。
一方、下記の写真の作品はリチャードジノリのデミタスのようなシンプルな幾何学模様が絵付けされています。

興味深いのが、当時全ての絵付けをハンドペイントで行っていたという事です。
この幾何学模様にしても転写プリントではなく全て筆で絵を書いています。
写真では目立ちませんが、実際に手にとってみると、驚くほどに下手です。

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ハンガリーの芸術家(ヘレンド)などに普段見慣れてしまっている人からすると、なんて下手なんだ!と思うはずです。
ところが味が出て良いんです。現在、日本で流通している食器というのは99.9%位が大量生産の転写プリントです。
フランフランなど雑貨屋さんに行っても、百貨店に行っても多くは量産品です。

ですので大量生産で全て同一の規格品に見慣れている現代人からすると、同じ模様なのに、一つ一ついびつに歪み、おじさまが手で描いているというのに、無性に惹かれてしまいます。

例えばこのデミタスカップのセットは明治44年の作品です。今から104年前です。
明治44年といえばアインシュタインさえ生きており、夏目漱石や森鴎外が小説を連載していた時代です。
そんな現在に職人によって作られたハンドペイント・カップ素敵ではありませんか。

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当時は輸出が多く、ヨーロッパやアメリカで好まれるために、こってりとしたデザインの物が多かったのです。
更には贅沢な事に、当時の金彩というのは18金ではなく23金・24金が多かったそうです。
つまり、純金に近い高純度の金で描かれていたものなのです。

余談ですが、金彩を最近まで”きんさい”と読んでいました(汗)
ただしくは”きんだみ”だそうです。彩というのは”だみ・たみ”とも読むそうですね。

オールドノリタケの店 「ソノリテ 阪急百貨店うめだ本店」というお店にふらり立ち寄ったのですが、あまりに素敵なコレクションにうっとりしていると、店員さんに熱く語られてしまい、ついつい買ってしまったという次第です。

その時に悩んだのがこの3つのプレート。カップ・ソーサーは少し高く5万円〜なので低予算でも買えるプレートを選びました。

もちろんカップ・ソーサーでも、100年以上前のコンディションの良いアンティーク品が、5万円〜10万円で買えるというのは、とても妥当な値段だと思います。
ヨーロッパの窯であれば、2〜3倍は高くなってしまいます。描写の細かさを考えると少し安いのかな?とさえ思えるクオリティです。

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このプレートは左の作品が、一部線傷が入っているため1万5千円(!)。
中央の2枚は3万円程度です。右のカップ・ソーサーは対になるものらしく、確か4〜5万円だったはずです。

絵はオスマン帝国からアジアを行き来するラクダでしょうか?キャラバン隊をイメージさせる素敵な作品です。

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うーん、素晴らしい!
金彩の上にも点を細かく装飾しています。

ただ少し下手だな〜と思いました。笑
これくらい描けるんじゃないのー?って思いますが、きっと難しいのだと思います。
むしろ、今のペインターがどれだけ技量が高いか驚きます。

先日、外商パーティに行った時にKPM(ベルリン王立磁器製陶所)のペインターが澄ました顔をしながら美しい花を描いていましたが凄い画力なんですね…。

話がずれましたが、このオールド・ノリタケのプレートは明治41年頃の作品のようです。
ウェッジウッドなどと同じように、後ろのバックスタンプによって大まかな製造時期が分かるそうです。ここのお店はとっても優しく、解説のプリントまで付けてくれました。

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ただ、画力は別としても100年以上前の作品だと思うと、持っている手が震えます。
染料の色が確実に現代の物とは異なり、深みを持っています。
青色が七宝焼きのような、暗く吸い込まれそうな美しい青です。
白磁の色も寒色系によっているのですが、マイセンの白磁とも違う独特な色合いです。
僅かにグレーを帯びているようにも見えます。

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オールド・ノリタケの金彩は、ただただ美しい。
「息を飲む」という言葉がありますが、オールド・ノリタケであれば、その言葉に出会うことができます。
さんざん下手だの言ったのですが、手に取り光に当ててみると、「こんな芸術品を個人で持って良いのか?」という気持ちに襲われる事もあります。

輸入食器が好きで、マイセン、ヘレンド、ウェッジウッド、ロイヤルコペンハーゲン、現行ノリタケなど集めてきましたが、ここまで特殊な世界観に引き込まれる作品はありませんでした。
もちろん絶対的な価格で言えば、マイセンのアラビアンナイト・シリーズなど何百倍も高価なのですが、独特な雰囲気はオールド・ノリタケの方が強く持っていると言えます。

頑張れば誰でも手に届く価格なので、もし興味があるのでしたら、一度現物を手にとってその雰囲気に浸る事をお勧めします。