前回のウイスキーレビューから随分と間が空いてしまいましたが、今回は第2弾です。
THE GLENROTHES(グレンロセス) DISTILLED IN 1991 BOTTLED IN 2007
43%
液体は深みのあるゴールド。
グラスからはシェリーが演出する濃密なフルーツ香に加え、バターやヴァニラ、そしてシナモンのようなスパイスの香気が漂う。
口に含むと、シルクのように滑らかなテクスチャーのタンニンのなかに、塩味を蓄えたバタースコッチとカスタードが演出するクリーミー、そしてバーボンカスク由来と思われるヴァニラとホワイトチョコレートとメープルが混ざり合う甘いフレーヴァーと濃密なラムレーズンのフレーヴァーが、スパイスの下支えを受けてリッチで華やかな香りを演出する。鼻腔に突き抜けていく鮮烈で華やかな印象のエクスペリエンス。口に含んだときから明瞭な輪郭を持つ純度の高い甘さが舌上を支配して、雑味を感じさせないままフィニッシュまで長く残存する。終始甘やかなシェリーの香りが存在するのが印象的である。弱めにローストされたアーモンドの中心部やカシューナッツのような香りも余韻には存在する。キーフレーヴァーの構成がマルセイのバターサンドに似ていると感じた。
Bunnahabhain(ブナハーブン) STELLAR SELECTION Gemini 2008
58.8%
液体は微かにピンクゴールドがかった、ファーストフラッシュのキャッスルトン ムーンライトを思わせるレモンイエロー。
グラスから漂う香りは躑躅の蜜を思わるボタニカルでフラワリーな甘美な香りに加え、ジョーマローンのコロンを彷彿とさせるシーソルトを含んだミネラリーな風の香気、ホワイトグレープフルーツの皮に近い部分の香気、ローズマリーやゼラニウムやダージリンのAV2にも似たハーバルな香気、輪切りにしたレモンを氷砂糖に漬け込んで3日ほど経過したあとの森林を思わせるフレッシュでフローラルな香気があり、それらをさわやかなカカオの香りや上質なモルト香が下支えをして、全体として若々しすぎない印象を演出しているように感じられる。
口に含んでみるとまずはなめらかなテクスチャーの塩味が舌先から根元に広がっていくのを感じる。この広がりは奥行きという要素だけに留まらず、たしかな幅と厚みをもって感じる。徐々に広がるこの塩味を伴うフレーヴァーとウォッシュは口蓋や鼻腔でもキャッチできる。またそれらが広がるにつれ、利尻の昆布を思わせる上品ながらも濃い旨味や、若干のピート香やレモンと夏みかんのような柑橘系の風味が顔を出す。このとき、針葉樹の木の消し炭のようなウッディなフレーヴァーも存在する。その後にガレットやビスケットのような焼き菓子のバター感のある風味と旨味が支配的となり、フィニッシュのべっこう飴のような焦げかけの砂糖やクレームブリュレのキャラメリゼのような香ばしく甘いノートへとなめらかに接続し、カスタードプリンのような風味と甘みも感じられる。
グラスに鼻を近付けたときに感じられた躑躅の蜜のようなノートは裏切られることなく、口に含んでもトップからフィニッシュまで蜜のような甘みが持続し、それとアルコールの質の高さが相まって、このアルコール度数ほどのアルコール感は感じられない。終始雑味がなくキレがよいため、クリアな印象が強い。
ADELPHI’S(アデルフィ) Breath Of SPEYSIDE 10YEARS OLD
58.4%
液体は深みがありつつも明るい輝きを放つゴールド。
巷ではマッカランやグレンロセスのどちらかであるとも言われているこちらは、グレンロセスを取り扱う今回のレビューに最適だと考えたので取り合ってみる。
鼻をグラスに近付けてみると万年筆の黒いインクやラッカー系の溶剤をエアブラシで吹いたかのような香りが、その芯を確かに感じさせつつもふわっと香る。乾燥デーツやレーズン、そしてラトビアのドライクランベリーなどの乾燥して濃密な甘い香りを纏う赤い果実の香り、カカオ分の高く濃厚で重いダークチョコレートと麦パフのような香ばしさセブ島のドライマンゴー、そしてバナナを彷彿とさせるトロピカルなフルーツフレーヴァーなどがファーストコンタクトから明確に感じられる。
口に含んでみるとアルコールの度数ほどには感じられなくもそれなりの高さを感じる舌触りと黒糖のようなこっくりとした濃密の風味を湛えるキレの良いモルトフレーヴァーが舌上を圧巻する。最初はまとまりのある液体の塊として転がせるような感覚があるが、それが温度や唾液の関係か突然開花するかのように口蓋から鼻腔に抜けていく香りと舌に浸透するピュアな甘みも移ろいで行く。コクのあるカカオとその焙煎香の余韻と、舌の根元で感じる濃い甘みが印象的である。ラストにはピスタチオの殻のような香りも感じられる。
MORTLACH(モートラック) AGED 12 YEARS
43.4%
液体は少し薄い印象を与えるゴールド。
注がれたグラスからは、アプリコットジャムやチェリージャムなど加熱された円熟みのあるフルーティーさや、ドライプルーンやドライプラムのような濃密な味わいのフルーティーさとカルヴァドスを感じさせる熟れた林檎のインスピレーション、そして微かなオレンジピールのフレーヴァーが感じられる。
口に含むと、黒糖や焦がし砂糖を思わせる甘美な味わいとダークチョコレート、オーク、白檀の香気がそれぞれ調和し、ダビドフのクラブシガリロを思わせる獣感のある煙草の香り、ブラックペッパーやクローヴ、アニス、シナモンを感じさせるスパイシーさと若干のゼラニウムのようなハーバルさ、といった要素が感じられる。力強くもクリアな印象を与える旨味とふくよかなミディアムボディで、ダイナミックなテクスチャーと十分なミネラル感があり、もっさりとした感覚や重さは感じられず飲みやすいがスカスカというわけでもない。12年にしてはまろやかな輪郭の口当たりのなかに、突如として姿を現す荒々しいウォッシュの感覚がある。