芸術の街は、ファッションの街
ボッティチェリ、ミケランジェロ、レオナルドダヴィンチ、ラファエロ。
その他数々の天才的な芸術家によって花開いた街フィレンツェは、ルネッサンスを牽引した芸術の街として知られています。ある意味で「フィレンツェの城」とも呼びたくなるウフィツィ美術館を周り、数々の美しい建造物が織りなす旧市街を歩けば、その街の全てが芸術で出来ているのではないかと誰もが勘ぐることになるでしょう。
イタリア的なゴシック様式が美しいサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のファサードを見上げ、その設計に携わった芸術家と建築家、そして職人がどれほどいたかを考えてみれば、フィレンツェがどれほど強大な力を持った都市であったかが分かりますね。
そんなフィレンツェという街は何も、500年以上も前にヨーロッパの文化を牽引しただけの過去の街ではありません。実は今では世界のメンズファッションを牽引する、最もエレガントでお洒落なクラシコスタイルの街になっているのです。
イタリアのメンズファッションブランドが一挙にコレクションを発表する、メンズファッションの祭典ピッティウォモはフィレンツェ郊外で毎年2回開催され、世界中からバイヤーが訪れますね。そこに集まるバイヤー達のファッションは、各国の取材班にスナップとして撮影され、光のように早く世界に配信されていきます。
ピッティウォモでのトレンドを大きく左右するといわれるセレクトショップも、フィレンツェに存在します。日本に関して言えばTIE YOUR TIE タイユアタイがフィレンツェ発祥で、今では日本のラグジュアリースタイルの頂点に君臨しています。
そういうわけで、フィレンツェに起源を持つブランドやフィレンツェ仕立ては常に、世界中の洒落者たちの注目の的となっています。
フロレンティンスタイルの特徴とは?
フィレンツェのスタイルはざっくりと言えば、華やかさと上品さを兼ね備えたややフェミニンなシルエットを特徴とするもの。
例えばフィレンツェ仕立てと呼ばれるものは、大胆なフロントカーブやなだらかな山なりに落ちるラインなどが特徴になっていますが、どれも丸みと連続感のあるシルエットを生み出すディティールです。
実際にフィレンツェ仕立てのジャケットと、ナポリ仕立てのジャケットを並べてみると、フィレンツェ仕立ての丸く少しフェミニンな印象が際立って見えます。
グレーの方がフィレンツェ仕立て、ライトブラウンのチェックがナポリ仕立てです。ナポリ仕立て軽やかな仕立てやナポリ人の圧倒的な技術を生かした手縫いの妙が魅力です。ちなみにトルソに着せたときにそれほど美しくないのもナポリ仕立ての特徴ですね。それはナポリ仕立てが着心地で人間の動きに重きを置いた、非常に動的な仕立てだからです。
それに対しフィレンツェ仕立ては連続するカーブや全体のシルエットのバランス感など、いわばデザイン性が美しい。もちろん着心地も素晴らしいですが、何より着ている姿は常に凛としていて、無駄がなく美しい。
これはまさに芸術の街であるフィレンツェらしい仕立てと言えますね。
そしてその芸術的な仕立てはちょうど、ルネッサンスで解放された人間の持つ本来の感覚を生かして描かれた絵画のような官能性と、ブルネレスキが設計したサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドームのような曲線美に満ちたものとなっています。
フィレンツェ発祥の一流ブランド達
さて、そういうわけでフィレンツェのスタイルを作りたい。ならば話は簡単です、まずはフィレンツェのスタイルを体現する一流ブランドのアイテムを身に付けてみましょう。
イメージしてもなかなかフィレンツェスタイルがどういうものか、なんていうのは分かりにくいですが、フィレンツェの素晴らしいものを組み合わせているうちに、自然とスタイルは出来上がっていきます。
liverano & liverano リベラーノ&リベラーノ
スーツやジャケットの仕立屋であるリベラーノは、世界中の人々が仕立てるためにフィレンツェを訪れる名店。先ほど上に書いたようなフィレンツェスタイルを最も分かりやすくしかも優雅に表現するこのリベラーノのジャケットは、世界的なスタンダードとしても通用する洗練されたフィレンツェスタイルですね。
ローマのBrioni ブリオーニ、ナポリのAttolini アットリーニに並びイタリアを代表するフィレンツェのサルトリアとして、サルト仕立てのジャケットが好きな人であれば一度は聞いたことがあるでしょう。
現在リベラーノではアントニオリベラーノ氏より絶大な信頼を寄せられている日本人ショップマネージャーである大崎氏がスタイリングや通訳をしてくれるので、日本人にとって理想のものが仕上がりやすい素晴らしいサルトリアでもあります。
また日本ではユナイテッドアローズの最上位ラインに当たる、ソブリンハウスで別注の既製服が扱われていたりオーダー会が開かれたりしています。
ORIALI オリアリ
オリアリは日本ではあまり有名でありませんが、フィレンツェを代表するシャツブランドです。オリアンというマシンメイドシャツぼブランドがあり、よく間違えられていますが、別のブランドですね。
ORIALI オリアリのシャツにはマシンメイドラインとハンドメイドラインがありますが、ここでおすすめしたいのは間違いなくハンドメイドライン。タグのORIALIの文字のしたにハンドメイドを意味するCucita a mano の文字があるものがハンドメイドラインになります。
手縫いを多用したナポリのシャツは世界中を虜にしていますが、オリアリのシャツの手縫いはそれをも凌ぐ勢いのクオリティです。各所が手縫いで作られているのはもちろんのこと、その手縫いは繊細で縫い目までもが美しい。それに加えてブリオーニやフライのような精巧なミシン縫いが素晴らしいシェイプの襟やカフスのエッジを走る様子は、まるで芸術ですね。
ルイジボレッリ、フィナモレ、ピッコロといったナポリのハンドメイドシャツ、フライやブリオーニといったマシンメイドの最高峰シャツなど様々なものと比べても、このオリアリの感動といったら頭一つ抜けているのではないでしょうか。
個人的にこれほどの感動を受けたシャツは、伝説と言われるナポリ最高峰のシャツであるアンナマトッツォと、セミハンドメイドでありアンナマトッツォのようにエレガントな雨降らしの袖付けやギャザーを持ちながらも、2万円以下で手に入るルチアーノロンバルディの既製シャツ以外にはありません。
TIE YOUR TIE タイユアタイ
日本で最もラグジュアリーでハイクオリティなセレクトショップと言っても過言ではない、フィレンツェ発祥のセレクトショップTIE YOUR TIE タイユアタイのネクタイは、まるで一枚のスカーフのように軽やかで立体的な丸みを持った素晴らしいものです。
特にタイユアタイのセッテピエゲ(七つ折り)のネクタイは、芯地を用いずに作られるため非常に軽く、他のどのブランドとも違った魅力を持っています。
もちろんタイユアタイのスカーフ、ストールなども一級品です。コットンスカーフが3万円というのは流石にちょっと高い気がしますが、徹底した一流さがこのブランドの魅力。妥協がないので、どのアイテムを選んでも絶対に外れないという安心感がありますね。
日本とフィレンツェの共通点
いかがでしたか?今回はフィレンツェスタイルの特徴や、フィレンツェの一流ブランドについてを解説してみました。
フィレンツェのアイテムの持つ魅力に、心を動かされてしまった人は少なくないはずです。
それもそのはず、実は日本とフィレンツェには共通した感性があるのです。そう、中庸的な美しさと精巧な美しさを愛することですね。
ミラノ仕立てのように堂々として構築的なわけでも、ナポリ仕立てのようにシワまでを楽しむリラックス感があるわけでもなく、とことんニュートラルでありながらも「間」と「輪郭」の生きたデザインで結局美しく見える。
そしてその美しさを、手間を掛けて丁寧に運ばれるひと針ひと針が支えている。それがフィレンツェのスタイルてなんです。
ぜひフィレンツェの美しさを体感してみてください。