さて今回は久々に真面目なテーマです。アンティークを選ぶというのは非常に難しいです。何しろ「正しい」というのがありません。
何を幾らの値段で買うかは本人次第と言えます。しかし多くのガラスを触ってきた経験から、実際に選ぶと満足度の高いグラスの選び方をお教えします。
重厚で透明度が高く、カットが繊細なもの
巻頭の写真はサンルイのエクセレンスという1脚10万円以上するフランスのグラスです。このように透明感が高くクリスタルガラス特有の虹色が出て、更に装飾が施してあるものはひと目にして高価な品であることが分かります。まれに、分からずに手頃な価格で販売されている事もあるので、そんなときは経験として手に入れるのをおすすめします。
どこにカッティングをされているか、それはボウル部分とステムとの接合部分。
型抜き跡のバリの線があるものはカッティングでは無いですが、妙にきれいに見える場合はカッティングであることが多いです。下手な技術者が行うと歪みがあったり、後から滑らかに研磨することがあるのですが、サンルイのように偉大なクリスタルブランドの場合は、マシンメイドのような完成度を誇ります。
ボウル部分を良くみると、アイスクリームをスプーンですくったような跡が見えますね?
これらも職人が一つずつ施す部分です。
他にもステム部分、ここにもカットを入れることが流行していましたが、のこぎりの楔のように二重の半円が複雑に融合して彫刻されています。底受の部分にも花弁のようにカットが入れられています。
実際に見ると信じられないほどに美しく、薄暗い照明のもと無垢のカウンターに置かれたのならば、皇帝にでもなった気分になることでしょう。
しかし実用的かと言われればそうではなく、500g以上あるので両手で持ち上げたいほどに重いのです。そして、城にでも住んで居ない限り部屋に絶対に似合いません。
サンルイ
同じサンルイでも先ほどのエクセレントよりは、わずかに技術が劣りますがそれでも繊細で鋭利なカットには変わりありません。そして何よりも、多くのシチュエーションに似合うことです。金彩が無いシンプルなデザインのグラスは家庭でもレストランでも、インテリアに溶け込みやすいと言えます。
更にこのフローレンスは軽量ですので、実際に食事をしながら使うのにも向いています。
日常使いするのであれば、透明感があるか?カットが美しいか?軽量か?を確認すると良いでしょう。
光に当てるとこのように、黒と白が浮き上がり、大人の為の万華鏡のようにうっとりします。
むしろ余計な色が少ないのでより一層引き立ちます。
ボウル部分の薄さにも着目してください。
ヴァルサンランベールは使いにくい
筆者はヴァルサンランベールが大好きで仕方なく何脚も集めたのですが、全然部屋に似合わないのです。
お城か広い邸宅にでも住んでいない限り、日常使いには向いていないと言えます。
それも同じグラスを6脚12脚と揃えていないと様にならないのです。物は良く美しいのですが、これは初心者・中級者には余りおすすめできません。
例えばこのヘキサゴナル(六角形)のグラス。
水用かカクテル用だと思うのですが、なんとも使いにくいです。
しかし学ぶことはあります。アンティーク品で元箱やシールが付いているということは、高い確率で一度も使われていません。新古品という状態なのでキャビネット用として飾るにはおすすめできます。
そこを見るとシールが貼ってあります。このシールが残っているのは結構希少で価値があります。
他にもよく見るとVal Saint Lambertとエッジングしてあります。このエッジングのロゴに形によって時代が分かるので、いつのもの知りたければ「ブランド名+logo」などで検索すると英語のサイトで時代が調べれたりします。
手頃な価格で良いグラスを買うにはウォーターフォード
最後にお得なグラスを。
90年代に日本の百貨店でも大量に売られたイギリスのウォーターフォード。ガラスとしてはサンルイやバカラよりも技術が少々劣るものが多いですが、高い透明感と技術があるにも関わらず市場に流通量が多いため価格が下がっています。当時1万円以上したウォーターフォードのリズモアでさえ、酷いと1脚千円以下だったりします。
これを買わない手はありません!入門用としては最適ですし、バカラだと1脚しか買えなくてもウォーターフォードだと5〜6個買えてコレクションを一気に増やすこともできますよ。(それにもしも割れても余り気になりません…)
ということで、クリスタルガラスの選び方でした。
本当のアンティーク・クリスタルガラスについてや、ラリックについては今度お話します!