【難易度S級!】白ワインのブラインドテスト会の結果は!?

飲み物

SNSの普及により、お酒を飲むときに味わいではなく「情報を飲んでいる人」が増えています。
「これは希少なカルフォルニアのワイン」「これは希少な日本のウイスキー」といった具合に、誰かが作ったイメージや著名人の発言によって、飲むものの味さえ変わってしまいます。
そこで大人本編集部では銘柄やラベルの情報を飲むことなく、自分自身でそのお酒の本質を考えるようにブラインドテストで試飲することがあります。

今回は注いだ色で「白ワイン」ということしか分からない状況で、りんりん氏に4種類のワインをレビューしてもらいました。

ワインのブラインドテストの手順

どこかのイベントやワインバーでブラインドテストをすることがあったら、視覚的な情報でもヒントが隠れているので探ってみてください。
最初に色、明るいグリーンなのか、イエローなのか、それともアンバー(琥珀色)、褐色に近い濃い色なのか。
色はブドウの品種やそのヴィンテージ(年数)を考察するときの参考になります。

次にアルコールのタレ具合、「ワインの涙」と呼ばれますが、グラスワインの液面近くのガラス内壁に零れ落ちるアルコールを確かめます。
雨のように何本もの線が残っている場合は、粘性やアルコール度数が高い傾向にあります。逆に全くアルコールの涙が残っていない場合は度数が低い傾向にあります。

次に香りを確かめます。最初のインスピレーションが大切で、思った感想をどんどん脳内で整理するとワインの核心に近づきます。
時間が経つごとに紐解けるケースよりも、最初の直感の方が当たっていることがおおいです。

例えば、白ワインのグラスに鼻を近づけた瞬間「うわっ!アルコール臭い」「ちょっと石油っぽい香りに、グレープフルーツっぽさ?」となったなら、若いビンテージの2018~2019年ころのドイツのリーリングかな?といった具合に産地と品種、年代が絞れます。

アルコールとワインが馴染んでいる場合や、どっしり調和している場合は瓶内での熟成期間が長い傾向にあります。もし白ワインに味噌や醤油、紹興酒のような発酵臭を感じ取った場合は、15~20年以上の長期熟成ワイン、もしくはスペインのシェリーのような酒精強化ワインかもしれません。

このように、色→香り→味わい→口に残った香りという順番で考察すると、大まかなワインの特徴が見えてきます。

「情報ゼロ」のテイスティング会の結果はいかに?

りんりん氏にA~Dまでの4種類をテイスティングをしてもらいました。
Dは抜栓時にコルクがボロボロに傷んでいて、抜いたあとにも酸化臭がしていたので空気が入って傷んでいました。
勉強になるのでそのままグラスに注ぎました。

りんりん氏 ブラインドテストA~Dまで感想

Aのテイスティングメモ

白ごま、ジャスミン、レモンムース、
粘土が高い、洋梨とろっと、アルコールあたっくない、トップのアルコール感少ない
シャクナゲ花の香 フランスのゲヴェルツトラミネール ドイツ感
ミネラル感。シャルドネの香りの強さが全面に出ている。
香りの主張が強すぎる。
ピンクグレープフルーツ、ホワイトグレープフルーツ

Bのテイスティングメモ

アーモンド ペトロール
クリアで透明感
朝露のユリ、安納芋、冷たいさつま芋
青さ ダージリン ファーストFF
ジュンサイ、石油香が強い
ずんだ白い豆を濾した
後味にマンダリンの果皮、ネーブルの酸味

Cのテイスティングメモ

水出しの烏龍茶 台湾の高山、甘みが黒糖すっと水のように入ってくる
酸のバランスが良い
黄金糖の砂糖を作るときの甘い香り。それがシェリーカスクのウイスキー、スコッチに共通する
樽を焦がして甘いとう共通する

Dのテイスティングメモ

青のり佃煮
完全に酸化していってまってる。
テトラポット、海沿いの水槽に魚が泳いでる料亭
ホタテとかの貝、捨ててある、海の生き物が腐ってる
ミネラルの骨格がある。空気に触れすぎた。
甲殻類カニ

「フランスのブルゴーニュに間違いない」「ボーヌ周辺のミネラル感?」

A=シャルドネ 2017年 ピリついたアルコールのウォッシュ  水っぽい
B=シャルドネ 2018年 余韻の深さ 求められるミネラル感 水っぽい
C=シャルドネ 1994年
D=シャルドネ 1996年

ブラインドテストの正解はこちら!【全てシャブリ】

A ドメーヌ ヴォコレ 2018年 シャブリ プルミエ クリュ モンテ ド トネル

B ドメーヌ ヴォコレ 2018年 シャブリ グランクリュ モンテ ド トネル

AとBは兄弟のようなワインです。
どちらも2018年で同じシャブリ、違いは「プルミエ・クリュ」か「グラン・クリュ」の違い。
つまり畑が特級かそうでないかということです。実際に飲み比べるとミネラル感や香りが別のワインのように感じるほど異なります。

ただし、りんりん氏も私もAのプルミエ・クリュの方が美味しい!と結論つけてしまいました。
2~3日放置した後はグラン・クリュの方が美味しかったです。

シャブリの地で1870年から4世代に渡りワイン造りを続けてきた歴史あるドメーヌ・ヴォコレのワインは、樽熟成にで更に素晴らしさを発揮する長命なシャブリとして定評があります。 英字表記:Chablis 1er Cru Valmur Domaine Vocoret & Fils

 

C ブシャール・ペール・エ・フィス 1993年 シャブリ プルミエ・クリュ フルショーム

こちらは古酒のブシャール・ペール・エ・フィスです。
先日記事で出た「昭和63年(1988年)のブルゴーニュ白ワイン サンセールは飲めるの?」に似た古酒のニュアンスがあります。
白ワイン古酒の特徴的な発酵臭を感じ取れます。1988年のサンセールよりも飲みやすく、時代を感じさせないフレッシュさでした。
本当に台湾高山茶のような香りを感じ取ることができます。

D ビショー 1996年 プティ・シャブリ

こちらは傷んでいたので評価が難しいですが、海沿いの貝殻などが夏の熱で傷んで腐敗しているようなニュアンスがありました。
もともとのワインは悪くなく、健康であれば美味しいワインだったんだなぁ〜という感想です。
りんりん氏は惜しかったのですが、この貝殻や甲殻類カニからシャブリを的中できたかもしれません。

ブラインドテストをした結果と感想

両極端なワインを2本ずつ並べて比較して、シャブリが何か少しだけ勉強できました。
本当にシャブリを知るには何十本、何百本と飲まないと理解することはできませんが、短期熟成の畑違いシャブリ2本と、長期熟成の2本の比較は類似性を見出すのには適切でした。

りんりん氏の予想は非常に優れていて

A=シャルドネ 予想 2017年 正解 2018年
B=シャルドネ 予想 2018年 正解 2018年
C=シャルドネ 予想 1994年 正解 1993年
D=シャルドネ 予想 1996年 正解 1996年

人間ガスクロマトグラフィーのように年数を当てる精度は凄まじいものがあります。
AとBは最後まで迷って、「かなり似ているから年数が1年違いだろう」という結論に達したらしです。

たんにエチケットを見てワインを飲むのも楽しいですが、情報が分からないブラインドテストでワインを飲んでみるというのは新しい発見の連続です。

そして、シャブリというのはワイン好きの中では「時代遅れ」「ジジくさい」「ワインのこと分かってなさそう」「アメリカの白の方が美味しい」といったネガティブなイメージの方が大きいです。ワインブームの周期では1980~1990年代にシャブリワインが人気だったこともあり、過剰にもてはやされた結果いまのようなイメージが定着してしまいました。実際に1990年代のデパート地下にあるワインショップでは、「赤はボジョレー・ヌーヴォー」「白はシャブリ」と飛ぶように売れたようです。

2021年になって、じっくりシャブリワインと対峙すると「全然悪くない、むしろ伝統的な製法でおいしい!」という感想でした。
もちろんムルソーやモンラッシェのような花形フランス白ワインと比較すると香りや味わいに物足りなさを感じるかもしれませんが、価格によってはシャブリを選ぶというのも間違いではなさそうです。

ちなにみAのドメーヌ ヴォコレ プルミエ クリュは販売価格が7,480円、グラン・クリュが11,000円ですがセールで半額になるときがあるので、それが適正価格です。定価で買ってしまうと、きっとこう言ってしまうことでしょう。

「この金額ならピュリニー・モンラッシェの方がうまいやん…」

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