至高のヴォルネイ「Clos des 60 Ouvrees」と「Clos de la Bousse d’Or」は何が違うのか

ワイン

ブルゴーニュ地方のヴォルネイに位置する「La Pousse d’Or」は、特にそのモノポール(単独所有)畑で知られる、非常に名高いドメーヌです。

このドメーヌは、ヴォルネイをはじめ、ブルゴーニュ全域において7つのグラン・クリュ、11のプルミエ・クリュ、さらに3つのモノポールを所有しています。これらの畑は、その優れたテロワールを反映し、ピノ・ノワールとシャルドネを用いたワインを生産しています。

その中でも特に注目されるのが「Clos des 60 Ouvrees」と「Clos de la Bousse d’Or」という二つの畑。

この二つは同じヴォルネイ村にあるモノポール(単独所有)ながら、その香り、味わい、そして全体的な印象には大きな違いがあります。今回は、これらのワインを比較しながら、ヴォルネイの持つ魅力を探っていきます。

ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールの歴史

ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールの歴史は、16世紀にさかのぼります。17世紀にはルイ14世の治世中にブルジョワ階級の家として発展し、その姿は現在でも残っています。

フランス革命期には、ピエール・クレマン・ドーディニャックがこの地を所有しており、現在でもその名がブドウ畑に刻まれています。このドメーヌの歴史はフランス革命以降、詳細に記録されており、時代を超えてワイン文化を伝えてきた場所として知られています。

Story – Domaine de La Pousse d'Or

※公式サイトのストーリーより引用

Clos des 60 Ouvrees

「Clos des 60 Ouvrees」は、香りからして非常に個性的です。開けた瞬間、万年筆のインクのような深い香りが漂い、さらにカーフレザーやアンティーク家具のワックスを思わせる香りが加わります。

まるで、歴史的な建造物や古い大理石の廊下を歩いているかのような錯覚を覚えます。ジュヴレ・シャンベルタンのプルミエの獣臭とフィサンのミネラルを足したような複雑さが感じられ、この香りだけでも特別なものだとすぐに分かります。

味わいは、香りの重厚さに比べるとやや控えめです。タンニンは非常にきめ細やかで、シルクのような舌触りを持つものの、口の中にわずかに青臭さが残りました。

特に、ピーマンのような未熟な要素が感じられ、余韻が短いことが特徴です。この点が、全体の統一感を損ねていると感じるかもしれません。

ただ、これは長期保管を前提としているもので、もしかしたら後10年ほど熟成することで、逆に良いニュアンスが出るかもしれません。

1万円弱でこの品質のヴォルネイとは思えないほどの品質です。

Clos de la Bousse d’Or

一方、「Clos de la Bousse d’Or」は、まったく異なる世界観です。このワインを開けた瞬間、まるで薔薇が咲き乱れる荘厳な庭園に招かれたかのような香りが広がります。

曇り空の下、小雨が降る静まり返った庭園を思わせ、白鳥が水面を滑るような美しい風景を想像させる香り。香りの層が豊かで、深い紅色のイングリッシュローズのように、高貴で繊細な印象を与えます。

口に含むと、その密度の高さに驚かされます。喉を通る瞬間、ヴォーヌ=ロマネのプルミエ・クリュを凌ぐほどの香りと味わいの調和が感じられます。

水っぽさが一切なく、全ての要素が非常に凝縮されているため、一口ごとに新たな発見があるような印象です。特に、ヴォルネイの他のモノポールと比較しても、強い男性的な力強さの中に優しさが共存している点が魅力です。

また、このワインは長期熟成にも耐えるポテンシャルを持っており、2019年産でもあと10〜20年は寝かせて楽しむことができるでしょう。そのため、まだ若いヴィンテージであっても、すでに柔らかさがあり、感動的な味わいを持つ点が評価されています。

ヴォルネイのイメージが変わる1本

「Clos des 60 Ouvrees」と「Clos de la Bousse d’Or」は、同じヴォルネイでも全く異なる体験を提供します。

前者は、香りの複雑さが際立つものの、味わいにやや青臭さが残り、余韻の短さが感じられる点で一部の人には物足りなさを感じさせるかもしれません。しかし、その価格帯を考えると非常に高品質なワインであることに変わりはありません。

一方、後者の「Clos de la Bousse d’Or」は、香りと味わいの両立が見事で、すべての要素が高次元でバランスしており、ブルゴーニュワインの真髄を味わうことができます。

どちらもヴォルネイの代表格として語られるにふさわしい存在ですが、求める体験に応じて選ぶべきワインは異なります。香りを重視するなら「Clos des 60 Ouvrees」、総合的なバランスを求めるなら「Clos de la Bousse d’Or」がベストです。

同じドメーヌ、また同じビンテージ、モノポールのワインを比較することで、ヴォルネイの奥深さをさらに理解することができます。

ブルゴーニュに興味があれば、また特にヴォルネイについて知りたいと思ったのなら最善の選択肢となるはずです。

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