知的好奇心とは面白いもので、私が20歳くらいの頃はワインにとても興味があって、 お店で販売しているワインを片っ端から全て一口ずつ飲んでみたいと思うほどでした。
「このワインはどんな味と香りがするんだろう?」と無限に妄想しては、大事な3千円程度の予算で1本買って、じっくり飲んだものです。
人生いろいろあって、35歳にもなると、信じられないほど大量のワインを飲み、高級ワインでさえも作業ゲーのような状態になってしまいました。とはいえ、読者の方の中には、「高級なワインってどんな味?」と気になっている人もいると思うので、私なりの言葉にして伝えてみたいと思います。
ブルゴーニュ ピノ ファン アルヌー ラショー 2020
Domaine Arnoux Lachaux Bourgogne Pinot Fin 2020
実に3年ぶりにアルヌー・ラショーを試飲することができました。
前回は2021年の初め頃に名古屋のエノテカでイベントが開催されていて、エシェゾーを試飲することができました。
このワインは以前までは1本1万円以下で購入できたのですが、 最近人気が非常に高くプレミアムワインとして実売価格が6万円近くまで上昇してしまっています。
エノテカでも限定42本、38,500円で販売されていましたが、すぐに完売するほどです。
いつも通り池袋のエノテカを巡回していると、偶然にも6月17日からの イベントで 1本限りがテイスティング用として開封されていました。ワングラス45ml取りで4,180円と、かなり高価なのですが、一本買って飲むことを考えるとコスパが良いので試してみます。
ワインが抜線してから何日か経っているので、香りの広がりも良く、状態は良好でした。
以前飲んだエシェゾーと比べると何段階か下のクラスになるので、かなり小さくスケール感がまとまっているように思います。
作り方や味わいの方向性はとてもよく似ているのですが、 肝心なブドウ本来のエネルギーは感じにくいなと思いました。スケールダウンはされていて、余韻はかなり短く、あっさりとした印象を受けました。
以前のエシェゾーを飲んだときに感じたシナモンや何種類もの中東のスパイスはなく、ゴリゴリとした硬いタンニンもありません。醸造されてから4年経過していますが、ちょうど飲み頃になっているようです。そこまで長くはもたないような感じがして、おそらく製造から5年から10年くらいがちょうどいい飲み頃なのではないでしょうか。
エシェゾーは20〜30年は持つイメージでしたので、こちらはかなりカジュアルです。
こちらのブルゴーニュ・ピノ・ファンは、シャンボール・ミュジニーとヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュの3つの村のピノ・ファンをブレンドして造られます。ピノ・ファンとは、ピノ・ノワールのクローン品種の1つ。ピノ・ノワールの性質を安定させるために造られたピノ・ファンは、果粒は小さい割に果皮が厚く、収量は少ないですが、果実味とタンニンの際立ったワインが造られます。 ブドウを収穫・選果後、マセラシオンを3~4週間実施します。ヴィンテージ毎に全房発酵の比率を変更しています。その後新樽比率を村名で約10%、一級畑で約20%、特級畑で約30%で熟成を行います。比較的低い新樽比率で熟成を行うことで、樽香をワインに加えすぎることなく、テロワール毎の特徴とブドウ本来の密度の高い果実味を表現しています。こうして造られるピノ・ファンは、シャンボールの繊細さとヴォーヌの気品、ニュイの力強さが揃ったスタイルに仕上がります。
引用:https://www.enoteca.co.jp/item/detail/022070020
エノテカの説明では、ヴィンテージ毎に全房発酵の比率を変更していると紹介しています。
実際に飲んでみると全房発酵の比率が高く、ややスパイシーな香りもあります。
他の生産者と比較して、ちょっと高すぎる?
ブルゴーニュに対して何を求めるかが人それぞれなのですが、 この価格帯でこの味わいは少し納得ができないかなと思います。ピノファンであれば1本7,000〜13,000円程度が妥当?な感じを受けました。
例えば同じように人気のある「ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール」のヴォーヌ・ロマネは、村名で4万円程度です。こちらの方がはるかに本格的で、味や香りに深みがあり余韻も長く、艶やかでうっとりしてしまうような味わいです。
作りは少し異なりますが、ジャン・グリヴォ、シャルロパン、アンヌ・グロが2万円台で購入できる事を考えると、アルヌー ラショーのピノファンは割高に感じます。予算が潤沢にあり、試してみたいのであれば止めはしませんが、限られた予算の中でいろいろ楽しみたいのであれば、こうした有名生産者のヴォーヌ・ロマネを先に飲んだ方が感銘を受けると思います。
全房発酵であれば、ドメーヌ・デュジャックやビゾー、プリューレ・ロックも良いはずです。ヴォーヌ・ロマネは高いですが、マイナーな村名ワインであれば2〜3万円で購入できます。
アルヌー ラショーは、エシェゾーとピノファンしか飲んだことがないのですが、もし飲むのであれば村名以上が良いはずです。一人で買って飲むというよりは、 誰かワインに精通した人に手ほどけを受けながら、 良い状態のものを飲むのが理想だと思います。
または、こういった試飲の機会であれば、そこまで費用はかからないので、おすすめできます。こうしたブルゴーニュワインは一度人気になると何年も入手ができないので、テイスティング機会があれば積極的に試してみてくださいね。