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偉大なブルゴーニュワイン対談

久しぶりに偉大なワインをテイスティングしました。
34歳になると嗅覚が落ちてるので、日々ACブルゴーニュで鍛錬を積んでも22歳と対等に張り合うことはできません。
そんなわけで今回は、ゲストのりんりん氏のテイスティングを中心に紹介していきます。

りんりんワインメモ

JEAN-CLAUDE RAMONET SAINT-AUBIN 1er CRU “Les Charmois” 2014

香りを嗅いでまずラモネのシャサーニュっぽいと感じたが、ニアミス。
僕がラモネやマルクコランらによるシャサーニュ系の香りだと感じていたのは、彼等のシャルドネの取り扱いによるものだったみたいだ。

ねっとりと濃い和栗やハチミツ、よく熱せられた上白糖の香りが土台にしっかり乗っていて、サントーバンにしては田舎臭さがなく、洗練されており、重厚感のある香りと味わいだと思う。
こっくりとした甘みとコクの強さはバロミロのムルソーとは対照的で、大規模なオーケストラの低音のような厚みがある

ブドウに対する熱狂的なリスペクトを感じるほど徹底された凝縮度と透き通るような透明感は、このワインの生産者がラモネであることを最も容易くわからせてくれる。
僕はルフレーヴよりラモネの方が好きかな。

BALLOT MILLOT MEURSAULT PERRIERES 2014

フレッシュでいて軽快、春風のようにそよぐ繊細な香りが鼻腔をくすぐる。
非常に女性的でいて、なおかつ洗練されている印象を受けるムルソー。
口につけた瞬間にルフレーヴのスールドダーヌが頭を過ったが、それと比べて黄金糖のような香りがないと思う。

さわやかでいて優しいテクスチャの酸味と、甘すぎない果実味のバランスがとても良い。
年代が早いムルソー1erにありがちな青みも角が取れていて、飲み頃に入っている。
このレベル帯のムルソーにありがちな新樽感は少なめ。
モネの「陽だまりのライラック」的な一本。

TAITTINGER Brut Reserve

定価5,000-7,000円のピノムニエ入りNVシャンパーニュにしてはかなり出来が良い。ピノムニエの存在は感じるが、シャルドネとピノノワールの中に適切に調和している。海外にありがちな缶に詰め合わされたクッキーを開封した時の香りやショートブレッド、ブリオッシュの香り。

そういったイーストっぽい香りの中に、完熟ラフランスのようなねっとりとした甘い果実の香りやクリスピーナッツのような香ばしい香りが存在する。 コクがあるけど、スッと消えて余韻だけが残るのでくどくない。 (今エノテカで調べてみたら10,000円だったけど、10,000円の価値はないかなー)

ANNE GROS CHAMBOLLE-MUSIGNY LA COMBE D’ORVEAU 2019

1日目は偉大なグランクリュの近くにあるやや水捌けが悪いような土地柄を思わせるテロワールで、若干の水っぽさを感じたが、男性的で力強い骨格にダイナミックな土の香りが支配的で素晴らしい香りだった。

香りはVosne-Romaneeのような濃密なバラの香りにGevrey-Chambertinのような雄の獣の脂がついた毛の香りがして、やや金属感のあるテクスチャーでもある。ブラインドでChambolle-Musignyだとは思えなかった。 2日目はペンハリガンの香水、ピオニーヴのような芍薬の香りが全面に出てくる。

とにかくエレガントな芍薬主体の香りの中に、プラムや巨峰の皮の部分のようなフルーティーな香りが存在している。 アルコールのアタック感は13%にしてはやや強めで、10年ほどは熟成させる価値がありそうな印象。

はしワインメモ

シャンボール・ミュジニー ラ・コンブ・ドルヴォー
CHAMBOLLE MUSIGNY LA COMBE D’ORVEAU

入手してから1〜2年ほどですが、ずっと香りと味が気になっていました。
畑的には右に特級ミュジニー、左にエシェゾーのアン オルヴォーに囲まれた土地で、なぜかそこだけ格下げされた1級と村名になっているのです。傾斜の上部は村名で、下部は一級なのですが、ネットの情報によると少し離れた村名畑の方では?と推測されています。

抜栓直後は、香りには”硬さ”をイメージさせる骨格が残っています。ミネラルに由来するのかもしれませんが、フィサンなどの柔らかい感じではなく、がっちりとした強さを感じさせました。
ヴォーヌ・ロマネは村名までは鮮やかな薔薇、黒系の薔薇をイメージさせる分かりやすい香りが多いのですが、1級以上になると香りのパターンが様々でヴォーヌ・ロマネだと当てるのも一苦労です。

以前飲んだ、アルヌー・ラショーは巨漢な中国人男性のような、圧倒される力。それも鍛え上げられた肉体をイメージさせました。
おそらくシナモンや、東洋のスパイスの香りが入り混じっていたからです。このコンブドルヴォーは、力強いのですが、やや細さもあります。

香りは良いのですが、一口飲んで出た声は「うすい!」
嗅覚からくる期待に対して、想像以上に薄くて驚きました。近年のブルゴーニュのように、濃ければ良いってものではありませんが、ぶどうの凝縮された濃さが期待より低かったです。ドメーヌ・テナールのジヴリのほうが凝縮感があったほどです。

りんりん氏の水っぽい感想も共通していますが、やはり水捌けの悪い土地なのかもしれません。
2日目以降は突如として、芍薬と薔薇を混ぜたエレガントな香りが立ち上り衝撃を受けました。味の方は酸化には強く、二日目に飲むのが一番美味しいと思います。

テタンジェ ブリュット・レゼルヴ
TAITTINGER BRUT RESERVE

セールで購入して何本か試したのですが、過去最も良いコンディションでした。
ハーフとブテイユでは商品が違うのではないかというほどに状態が異なり、この1本は青りんごのような鮮やかなフルーツの香りが漂ってきます。

他のボトルは、果汁が酸化したような、少し果実が劣化したニオイが混じっていました。二日目以降は氷を入れたボトルもあったほどです。
ですので、この夜に奇跡的に良いロットに出会えてよかったです。ブルゴーニュワインと比べるとロット差は少ないのですが、それでもシャンパーニュは個体差が大きいですね。

ラモネ サン・トーバン レ・シャルモワ

抜栓直後から、直立した1本の神木杉のようなブレの全くない香りです。菩薩樹のはちみつのような、単一の甘い香りが漂ってきます。
だからといって安い千円ワインの単調な香りではなく、グラスを揺らすと、それが複合した香りから導かれたことが分かります。

大魚だと思ったものが、近づくと小さな魚の集合体だったスイミーの話のように、ブレのなく雑な香りが存在しないことに感動を受けました。味わいも凝縮感があり濃厚、それでいて後味は軽く余韻はエレガントです。
ただ濃いだけであれば、アメリカの白ワインなんかは安くても濃いものがありますが、このサン・トーバンはシャサーニュ・モンラッシェのワインにありがちな軽快さをうまく凝縮させたような感覚があります。

樽の香りが邪魔をすることなく、液体と香りが一体化しているのは、ひとつの芸術作品の域に到達しているといえます。

ムルソー・ペリエール 2014年 バロ・ミロ

2021年から宗教上の理由で、ムルソー・ペリエールは飲んでいなかったのですが、久々にボトルを空けてみました。
このワインに必要なのは時間です。リリース直後に開けて、数十分で飲みきるようなワインではありません。

飲み頃を迎えるには少なくとも10年近く、またグラスに注がれてからも、その姿を見せるには1時間以上かかります。
某漫画のようですが、ワインの声が増幅させ、味覚と嗅覚が劣った34歳にも、情景を見せてくれます。

それにしても新樽の主張を抑えて、バニラの香りをうまくコントロールしているようです。

分かったこと

ブルゴーニュワインの研究は、嗅覚が劣っていない有識者と行わないと本質的な理解は難しいということです。
また赤ワインだけでなく、白ワインであっても2日間以上の時間をかけないと、隠れていたワインの魅力を見落としたままになります。

一般的なワイン会ではデキャンタなどで、その時間を縮めるのかもしれませんが、ただでさえ難しいワインの声を適切に聞き取ることができる人は、さらに絞られてしまいそうです。

それと若いうちにテイスティングをバンバン積んでおかないと、30〜40歳過ぎてからブルゴーニュワインに入門するのは難しいです。
例えばピアノやヴァイオリンを始めるのに、何歳になってからでも遅くない、80歳からでも楽しめる!といいますが、実際には幼少期から始めた方が理解は早いはずです。ワインの場合は嗅覚と味覚を活用することになるので、加齢とともにそれらを判断するのは更に難しくなります。

正直、私自身も34歳になってから、以前のように香りを細分化して認識するのが厳しくなってきました。世の中のソムリエや調香師など、何歳になっても優れた才能を発揮する人もいると思いますが、そうでない場合は早めに一通り体験するのも大切ですね。

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