2018年シャンボール・ミュジニー1級畑の比較〜ルシアン・ルモワンヌ、ヒュエ、パンショ、パトリスリオン、シゴー

飲み物

ブルゴーニュとは何か

初めのうちはワインというのはとても楽しく、何を飲んでもおいしいと思いました。
私がブルゴーニュを初めて出会ったのは3,000円の『ジェラール・ラフェ』で、村名ブルゴーニュを思わせる大人っぽい香りに大喜びしていました。「他の国のワインと違って、なんでブルゴーニュはこんなに美味しいのだろう。」そう何度も同じワインを買っては、週末のささやかな楽しみにしていました。

知的好奇心とは怖いもので、「3,000円でこのおいしさなら10,000円のワインはどうなってしまうんだろう?もしかして比較にならないほど美味しいのでは?」と、自ら底のない沼地へ一歩踏み出してしまいました。
初めて7,000円のジュブレ・シャンベルタンを飲んだ時は、冷涼な酸味にエレガントな香り。魂を抜き取られたかのように、その甘美な赤い滴に惚れ込んでしまい、空になったグラスをしばらく大切に抱えていました。
文字通り禁断の果実に手を出してしまった私は、そこからワインの、それもブルゴーニュの沼に飛び込んでしまい来る日も来る日も静岡のワインバーで飲み続け、東京に出てからは1~2万円のブルゴーニュを毎晩飲ませてもらっていました。

すると、あんなに楽しかったワインはすっかり見え方が変わり、効き目が薄くなった麻薬のように「これは良くない」「これは悪い」と高価なワインに文句をつける生活になってしまいました。時既に遅し、あのときに飲んだ3,000円のワインの感動はそこには無く、3万円近いワインにケチをつけ、残してしまうような性格になってしまいました。ここまで来てしまったらやるしかない、ということで最近は高級ワインの研究を自分なりに続けています。

2018年シャンボール・ミュジニー1級畑を識る

エノテカ様の有り難いイベントで、庶民でもシャンボール・ミュジニーのテイスティング比較できる機会をいただけました。ありがたい事に、全て同じビンテージの2018年、それも生産者違いの1級畑という素晴らしい条件です。

【開催日】:1月15日(土)~■参加料金:5,500円(税込)
【クラブエノテカVISA会員様割引対象クラシック5%OFFゴールド10%OFF】
【定員】24名様【内容】赤5グラス・各30ml

華やかで愛らしい香りと、シルクのように滑らかな飲み心地。
ブルゴーニュで「最も女性的」と表現される優美で可憐なワインを生む魅惑のシャンボール・ミュジニー村。複雑な地形と土壌ゆえに多様な表情を見せるそのワインは、世界中のワインラヴァーから愛され続けています。
この度、シャンボール・ミュジニーの中でも高いクオリティを誇る1級畑をご用意。
是非この機会に、シャンボール・ミュジニーの魅力をご堪能下さいませ。

1.【2018年シャンボール・ミュジニープルミエ・クリュレ・オー・ドワ/ルシアン・ル・モワンヌ】
ユニークで情熱的、異彩を放つブルゴーニュNo.1ネゴシアン。
シャンボール・ミュジニー村の特級畑や、隣接する1級畑レ・ザムルーズと比べると、
活き活きとした酸と瑞々しい果実味が特徴です。

2.【2018年シャンボール・ミュジニープルミエ・クリュレ・サンティエ/フランソワ・フュエ】
透明感溢れるスタイルには根強いファンが多く、ヴィンテージに左右されない安定した高品質を誇るドメーヌ。
特級畑ボンヌ・マール直下に位置する1級畑。厚みのあるゴージャスな味わいが魅力です。

3.【2018年シャンボール・ミュジニープルミエ・クリュレ・フスロット/ジャンテ・パンショ】
著名な評論家をも魅了するジュヴレ・シャンベルタンの造り手。
こちらは、フィネスに富んだワインを生み出す銘醸畑。ピュアでエレガントなスタイルに仕上がっています。

4.【2018年シャンボール・ミュジニープルミエ・クリュレ・シャルム/パトリス・リオン】
こだわりのネゴシアンスタイルを貫く天才醸造家。クロ・ド・ヴージョの近くに位置する最上の1級畑。
樹齢60年に及ぶ古樹が生み出す、凝縮したアロマが魅力の1本です。

5.【2018年シャンボール・ミュジニープルミエ・クリュレ・フュエ/アンヌ・エ・エルヴェ・シゴー】
香り高いエレガントなワインを造り出す老舗ドメーヌ。
繊細かつ複雑、妖艶さを極めた味わいが魅力的です。
引用元:エノテカ・メールマガジン案内

2018年シャンボール・ミュジニーの味わいは?

昼過ぎに行ったためか、イベント一人目ということで抜栓して口明けから稽古できました。1時間以上かけて真剣にテイスティングしてみたので、間違っているかもしれませんが感想を載せてみます。

まず全体を通してみると、2018年のブルゴーニュにありがちな加熱された果実の凝縮感はなく、かといって冷涼ともいえず、造り手の技量が非常に高いことが伺えます。ヴージョ、エシェゾーにあるような力強い樹木を感じさせることはなく、あくまでエレガントで薄いヴェールを被った女性の彫刻のようなイメージです。
ヴォーヌ・ロマネほど肉付けはなく、かといってモレ・サン・ドニのような鮮やかさもなく、ブルゴーニュの数ある村名ワインのなかでも非常に玄人向けのシビアな世界だと感じさせられました。

事前の情報に左右されないように、作り手、銘柄か分からない状態でテイスティングを開始しました。

No.1シャンボール・ミュジニー1erレ・オー・ドワ /ルシアン・ル・モワンヌ販売価格26,400円(税込)

出てきた直後は、バラや百合の花のような生花のアレンジメントのような香りがしましたが、ほんの1分もすると鉄の香りが強く出てきます。金属臭く、公園の鉄棒を触ったようなニオイが気になります。
少しスワリングして落ち着くかと思ったのですが、今度はマグロの赤身それも打ち身して出血しているような少し品質が悪いようなマグロの臭いがします。

実際に飲んでみると、味の方はまだよくアルコールの質が良く、タンニンもきめ細かで柔らかく馴染むのですが、いかんせん臭いがだめで古い水道水を飲んでいるような感覚です。
醸造で問題があったのか、それとも瓶内熟成で生じたのか明確ではありませんが、1時間経ってもネガティブな香りは消えずに残してしまいました。ルー・デュモンにありがちな青銅系のブショネとは違い、鉄の香りです。

畑はまさかのレ・ザムルーズの隣です。ヴォギュエのレ・ザムルーズが如何に素晴らしいかは、マット・クレイマー氏が著書の中で繰り返し語っていますが、このレ・オー・ドワは残念な結果でした。ルシアン・ル・モワンヌは有名な生産者ですが、何かトラブルがあったのかもしれません。

No.2シャンボール・ミュジニー1erレ・サンティエ /フランソワ・フュエ販売価格19,800円(税込)

こちらは有機シナモンの香りに、庭園を散歩しているような小さな草花の香り、あとからチャイティのようなスパイスが少し出てきます。
味わいはかなり薄く、余韻も長くエレガントです。今美味しいかと聞かれると物足りないのですが、きっと10~15年すると素晴らしいブルゴーニュに生まれ変わると思わせる固めの味わいです。1時間ほどすると生のライチの香りが出てきて、少しトロピカルになって楽しいです。入手した場合は寝かせることをおすすめします。

レ・サンティエという畑は、先ほどとは真逆にモレ・サン・ドニの近くそれも特級畑のボンヌ・マールやクロ・ド・タールに隣接している畑です。つい先月、ラ・フォルジュ・ド・タールを飲みましたが、骨格があり長期熟成の感じは似ています。

No.3シャンボール・ミュジニー1erレ・フスロット /ジャンテ・パンショ販売価格17,600円(税込)

現時点で飲むなら100点満点の素晴らしいシャンボール・ミュジニーです!!
近年まれに見る素晴らしい仕上がりで、2018年の作柄を忘れさせる洗練されているブルゴーニュです。

香りはスリランカ、セイロン・ウヴァとアッサムをブレンドしたようなアイスティーのような、ほっこりとしつつ冷涼なメントール香が出ています。少しエステリーで香水のようなニュアンスの中に、白樺の木を割ったときのような生の木のニオイが隠れています。うっとりする素晴らしい香りです。

飲んでみると、香りと関連性はなく味わいは完璧にフランボワーズ。春先に野いちごを詰んで口に頬張るような、そんな綺麗で整った小粒の酸味を感じさせます。クリーム感もあり、フランボワーズ・ムースにも似ています。とにかく美味しいです。かなり女性的な一本で、パーティーに持っていったら絶対に喜ばれるブルゴーニュです。買ってすぐ空けても美味しいと思いますし、数年寝かせても良さそうです。

No.4シャンボール・ミュジニー1erレ・シャルム /パトリス・リオン販売価格16,500円(税込)

レンガの赤土、レーズン、サルタナ、シナモン、革クリーム、蜜蝋ワックス。
ヴォルネイのような力強さと、どこかローマにある古物商のような香り。20~30年後に飲み頃が来るのでは?と思わせるほど骨格がきっちりとしています。作りも良く方向性も分かるのですが、今すぐに飲むのには向いていなそうです。硬派なシャンボール・ミュジニーで、やや男性的な雰囲気があります。
香りはアルヌー・ラショーのエシェゾーのような力強い香りがあります。

No.5シャンボール・ミュジニー1erレ・フュエ /アンヌ・エ・エルヴェ・シゴー販売価格13,200円(税込)

これが最も曲者で、チューリップの花弁に鼻を突っ込んだときの強烈な香りと、シャネルの口紅が日差しにあたってちょっと柔らかくなってるときの強烈な香りを足して割った感じです。
うお!?なんだこりゃと驚いてしまいました。飲み物のニオイではありません。

ヤバすぎワロタとなっていたのですが、時間が経つと濡れた木や湿った新聞紙のようなネガティブな香り、熟れる前に腐った硬いラ・フランス(西洋梨)中華料理の五香粉など散々のメモがあります。飲めるには飲めるのですが、ブショネでは?と自分の嗅覚を何度も疑い、時間を経って再び嗅ぐのですが、ただ臭いだけで傷んではいません。実際に口に入れてもブショネではありませんでした。どうやったらこんな香りが出るんだと不思議な一本でした。

シャンボール・ミュジニーとは何だったのか

何がなにやら分からないですが、かなり上級者向けの畑だということが分かりました。畑の位置と生産者によって、全く180度違う味わいのワインになるのです。ジュブレ・シャンベルタンやフィサンなんかは、誰が作っても似たような共通する香りや味わいの一つくらいあるものですが、今回のシャンボール・ミュジニーは特徴が様々で個性がありすぎて驚きました。今回のテイスティングイベントでシャンボール・ミュジニーが分かるはずだったのが、より謎が深まってしまいました。ブルゴーニュの聖書に答えが書いてあったので引用してみます。

Chambolle-Musignyシャンボール=ミュジニー

この場にかぎっていえば、ブルゴーニュの村の特徴を一口でいいあらわすのは難しいことではない。シャンボール=ミュジニーは優雅なワインを生む、といえばいい。その本領は、量感からくるのではなく、すぐれた味わいと高い品格とが相またところに生まれる。さしずめ柔術のごとき力をもつワインといえようか。シャンベルタンとクロド・ラ・ロシュはもっぱらスケール感によってひとを圧倒するが、同様の存在感をもっているのはシャンボール=ミュジニでは、ボンヌ・マルだけである。ミュジニはブルゴーニュでもっとも異彩をはなつワインで、重さでせまってくるのでなしに、いわばゴシックの美によってそびえ立っている。

骨組みと果実味の両方を見てとることができるはずだ。コート・ド・ニュイの他のワインとくらべたとき、シャンボール=ミュジニには、顕著なテロワールの風味がある。というより、当然そのはずである。この村は、コート・ドニュイにしては異例なくらい土壌に含まれる石灰分が多いからだ。

そこで、ジュヴレシャンベルタンが土くさく、ヴォーヌ=ロマネがスパイス風であるならば、すぐれたシャンボール=ミュジニからは、テロワールの風味がびりびりと伝わってくる、といおう。どうしてそうなのかというと、この村のぶどうの果実は、味の透明感がすぐれているからで、それはやはり石灰分を含む土壌によるところが大きい。粘土質の強い土壌だと、石灰質土壌にくらべてピノ・ノワールは重さとはりの強さを身につけがちとなる。 『ブルゴーニュが分かる』マット・クレイマーより引用


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