湿ったマデューロの葉巻、鬱蒼とした森の湿った土、ゴボウの皮と土、プラムの果皮。
イチゴ香料のキャンディ、ドロップ缶のキャンディの粉の部分、赤身の牛の血生臭さ。
明け方の濡れた庭の薔薇、雨の日の庭の散歩。
うまい、うまい、これでいい。これでいいんだよ(?)
古典的なボルドーの作り方、最初は酸味が強いけれど3日経つと落ち着く。
ここ20年の中で最悪といえば2013年ビンテージです。もうね、ブルゴーニュといいボルドーといい2013年は信じられないほどに外れが多いです。そのため2022年になってもネットショップには在庫が溢れ、32歳で職歴がない無職の三男のような、腫れ物に触るような扱いです。どのシャトーだとしてもネットショップでは投げ売りの嵐で、実はこのシャトー・ボイド・カントナック2013年も某ワインショップの福袋に入っていました。
厳しい作柄でよくぞ、ここまで仕上げた!拍手を贈りたいです。
2013年のボルドーってどうなの?
デキャンタ誌によると、ボルドー・ヴィンテージ・ガイド・ヴィンテージ2013は次のようなレポートです。
メドック&グラーヴは早く飲もう!
雨、暖かい夜、そして腐敗により、生産者は最適な熟成の前に収穫することを余儀なくされた。多くのワインが青白く、アンストラクチャー。気象状況 生産者に休息はない。
雨の多い春に続いて開花が遅れ、7月末から8月初めにかけては激しい雹の嵐、9月は雨が多く暖かかったため収穫直前に腐敗が発生するなど、2013年ヴィンテージは最初から多くの困難がありました。
1月の時点で、例年より51mm多く雨が降り、10月から3月までの冬の雨量は30年間の平均より70mm多く、土壌は湿ったまま新鮮で、芽吹きと新梢の成長を遅らせることになり、状況は厳しいものでした。4 月も初期は雨が多かったが、中旬には気温が上がり、ブドウの木が動き出し、2012 年よりも少し均等に芽吹くようになったが、月末にはアントル・ドゥー・メール、グレーヴ、ブレイユで霜が降り、さらに頭を悩ませた。5 月は過去 20 年間で最も雨の多い 22 日間となり、全体的にブドウの木が十分に光合成を行うのは非常に困難な状況でした。5月もあまり良いニュースはなく、特にメルローのような早咲きの品種では、かなり悲惨な状況の中、中輪の開花が平均より15日遅れで行われた。天候は7月にようやく好転し、60年以上にわたって最も暑い7月のひとつとなった。2012年の日照時間は247時間であったのに対し、331時間であった。残念なことに、この暑さは嵐を招き、ペサック・レオニャンは特に大きな影響を受けた。8月は雹が降り、最初の1週間ほどでアントル・ドゥー・メールの収穫物の約80%が影響を受けたが、ようやく嵐は治まり、穏やかな晴天が月の残りに続いた。この休息にもかかわらず、成熟は遅く、特に結実が困難であったメルロには困難であった。特にメルローは結実が難しく、多くの房を切り落として残りの房を熟成させたため、収量が少なくなってしまった。
収穫が近づくと、疲れ果てたワインメーカーたちは、温暖だが雨の多い天候に対処しなければならず、多くの場合、早めの収穫を余儀なくされた。結局のところ、非常に注意深く、ブドウがワイナリーに到着してからも無理をしなかった人たちが報われる、難しい年でした。
この情報を知る前に、りんりん氏と2013年のフランスワイン研究を行ったのですが、感想としては総じてどこのシャトーやメゾン、ブルゴーニュのドメーヌさえも「水っぽい」印象でした。腑抜けた薄さ、葡萄が凝縮した味わいはとても感じることができずに酷い仕上がりばかりでした。
「これは2013年なのに濃いボルドーだな」と思う1本でも、今度はかび臭かったりブショネのように傷んだニュアンスを持っているワインばかりでした。そのためか例年は1万円近いワインも半額で特売されています。
シャトー・ボイド・カントナックは美味しい?
このワインは「メドック格付け第3級」という立派な格付けを持っています。
格付けのマルゴー村だと、パルメは何本かボトルで飲んだことがあり、次にシャトー・ディッサンやシャトー・ジスクールもグラスで飲んだことがあります。ボルドーの格付けは非常にややこしく、類似したシャトー・カントナック・ブラウン(3級)、シャトー・ブラーヌ・カントナック(2級)など存在してソムリエを目指す人でも覚えるのは困難です。私は頭が悪いので実際にエチケットを見て飲まないと覚えることができません。
このシャトー・ボイド・カントナックは1本しか飲んでいないので、ここで結論付けるのは早計ですが、少なくとも今飲んでいるボトルに関して言えば、果実感がありボルドーのマルゴー村の特徴を良く掴んだワインといえます。さすがにシャトー・パルメまではいかないものの、格落ちのアルタ・エゴ・ド・パルメよりは美味しいです。実売価格は7000円前後ですが悪くない価格設定です。むしろ先日購入した、シャトー・オー・バイィ(ペサック・レオニャン)の2万円と比べたら良心の塊です。デイリーワインが2~3千円程度の人であれば、ちょっと背伸びして飲んでみて欲しい1本です。
2013年という非常に厳しい作柄でさえ良い味わい、ということは2000年,2005年,2010年といった当たり年は唸るような美味しさを秘めているかもしれません。このシャトー・ボイド・カントナックを飲むと、コンサートホールでバイオリンソロを聴いた後のような満足感があります。これを官能的というのかは定かではありませんが、りんりん氏の言葉を借りるならば、心を満たす何かがそこにあります。ワイン好きは私と同じように2013年にトラウマを持っている人もいると思います、それでも滋味深い感動を得ることができるというのもまた、ワインという奇跡の飲みものだからこそといえそうです。
輸入者:株式会社ファインズ ALDYR13 4573542481263
メーカー希望小売価格 (税込) 8,800 円 通常販売価格 (税込) 7,480 円