標高と味覚・嗅覚の影響が気になって調べてみたのですが、最近のGoogle検索がイマイチで良い文献が見当たりませんでした。J-STAGEなどで細かい文字列で関連文章を引っ張り出すしか無さそうです。個人のブログなどでは、富士山の山頂では味覚や嗅覚が鈍くなり、酸味や塩味が分かりにくくなるといわれています。山小屋のお弁当などは濃い味付けになっていて、海抜数メートルの自宅で作ったお弁当が薄く感じたと紹介されています。
富士山の標高は3,776m、山頂では水の沸点が87℃程度まで下がります。カップラーメンにお湯を入れても芯が残ることは有名ですよね。
そこまで極端ではなくても、標高が1000m近くなると水の沸点も100℃ではなく約97℃まで下がるそうです。
標高と水の沸点の関係というユーザーが投稿した計算式を利用すると、一例で標高h 1000 m 現地気温T 25 ℃ 海面気圧P0 1013.25 hPa では、水の沸点が 96.8635786 ℃になると表示されました。
このように軽井沢(軽井沢駅は標高940m)のような身近な避暑地でも気圧の影響を受けます。
標高1000mって嗅覚と味覚に変化がある?
実際に海抜数メートルの都市で生活していて、突然に標高1000mに上るとどんな変化があるか検証してみました。
味付けの濃いものが食べたくなる
都市部では薄味の料理を好んで食べていましたが、標高1000mになると濃いものが食べたくなります。例えばラーメンやトンカツなど塩や油がしっかり効いた料理が食べたくなります。
つい昨日まで冷奴やトマトを食べていたのが信じられないほどに食欲の変化があります。ソースなどが特に美味しく感じます。
高地では嗅覚が著しく低下する
焚き火のニオイや森のニオイなどは判別できるのですが、繊細な香りがキャッチできなくなります。
台湾の「大禹嶺烏龍茶」という高級茶は都市部では鮮烈な山百合や牛乳のような香りが立ち上がり、濃い台湾茶に感じますが、1000mまで上がると濃い目に入れても香りが全然分かりません!
下手すると何を飲んでいるか分からないくらいです。味はわずかに苦くてお茶だということは分かるのですが、華やかな香りが根こそぎなくなっています。
次にイタリアの高級赤ワインのバローロを抜栓したのですが、「何だこれ!?」というアルコール臭さと、新樽のきつい木のニオイしか感じ取れません。マニキュアの瓶を鼻の穴に流し込んだんじゃないかってほどきついアルコール臭です。味わいも分からずにタンニンのきつさしか感じ取れませんでした。
3日経つと体感的に60~70%ほどまでに回復する
驚くことに翌日になると、少し嗅覚が回復してニオイが分かるような〜分からないような〜という状態です。
3日経つと体感的に60%以上も回復して、バローロのエレガントな草花や果実の香りがキャッチできるようになりました。たぶん1~2週間滞在することで90%以上の味覚と嗅覚が戻るのではないでしょうか?
ただし、都市部で感じ取れる香りとベクトルが異なるというか、色眼鏡をかけたように感覚に誤差が生まれている可能性が高いです。馴染みのある何本も飲んだワインでさえ、今までに飲んだことのないワインのように感じてしまいました。
軽井沢ではワインを飲むな!?
極端なタイトルで釣ってみましたが、もし東京から一泊二日で軽井沢旅行をして「今日は特別に高級ワインでも開けちゃおうかな〜!」とするのは控えた方が良さそうです。
高所に対する環境適応能力は個人差が大きく、高山病の症状なども出ない人も実際に存在します。それでも鋭い嗅覚と味覚が要求されるワインは、急に1000m級まで登って飲むものでは無さそうです。
1週間ほど滞在するのであれば、1~2日はビールや蒸留酒でやり過ごし、美味しいワインは3日目以降に抜栓した方が良さそうです。もちろん軽井沢の別荘暮らしで長期滞在している人であれば、いつ開けても無問題ですが……。
そんな訳で、短期旅行での高級レストランや高級ワインは、満足度の低下が考えられますので極力避けた方が良いかもしれませんね。