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ブルゴーニュワインの村名は何を飲めばいい?

私自身が迷える羊なので、ブルゴーニュワインについて偉そうに語ることはできないのですが、分かったことがあります。確実にいいきれることは、フランス人は(食事は別として)ワインの評価について極めて高い味覚を有しているということです。

私はワインを10年以上飲んでいますが、昔はこんな意見を持っていました。
「ボルドーの格付けや、ブルゴーニュの村名や一級、特級なんてのは昔の話。今は無名な生産者でも美味しいワインがある!」
正しいのは、「無名な生産者でも美味しいワインがある!」という部分です、格付けや村名というのは現在も確実に存在し、そのほとんどがワインの品質を担保するほどに強い力を持ちます。

ブルゴーニュの村名=産地は正確

ボルドーの例ではメドック格付けシャトー2級・3級など一部当時と違う評価・味わいもありますが、ブルゴーニュのコート・ドールに限っていえば、村名の区別や一級、特級の味わいの違いは明確に存在します。飽きるほど聞いたことがあると思いますが、その土地のテロワールがたしかにワインに表現されます。

特にV.V.(ヴィエイユ ヴィーニュ)つまり古樹になると区別は明確で、目隠しをされても村名や産地を判断できる場合があります。
古樹のワインは共通して深いミネラルを有していることがおおく、野菜でいうゴボウのような地深くの力強さを感じます。
樹齢が40~50年、長いものだと70年~90年以上もの古樹で作ったワインも存在しますが、それらは地下深く根を張り、昔の地層にしか含まれることない成分を組み上げることが良くあるのです。
ジュブレ・シャンベルタンやニュイ・サン・ジョルジュ、ヴォーヌ・ロマネなど村によって特徴的な香りを有しています。

日当たりや水はけ、表面の土の成分が石灰質なのか砂利なのか粘土質なのか、土地の傾斜や樹木の仕立てやブドウの間引き、そして醸造と熟成。あらゆる要素がワインの特徴を形成しますが、中でもその土地でしか持っていないテロワールが存在するのです。
つまりラドワに本拠地を持つ生産者が、ラドワの小さなクリマ(畑の区画)と同じ方法でアロース・コルトンで作っても同じ味にはならないのです。畑の作り方や選定、収穫、除梗や醸造などの方向性から「もしかして、同じ生産者かも?」と判断できることはありますが、隣の村でそっくりの作り方をしても別のワインができてしまうのです。これがブルゴーニュの面白いところです。

人によって知覚できる香りが異なる

ワインを飲む仲間とテイスティングを繰り返していると、面白いことに気が付きます。
同じワインで共感する部分と、別の部分をみていることがあるのです。

例えば「この動物は?」と目かくして触ったときに、私の感想は「触ると固い、とても大きい、土のニオイがする、長い筒がついている」
同伴者の感想は「触ると固い、とても大きい、湿った土と藁のニオイ、そして固い木のような角がある」
このように共通認識している部分と、共通認識していない部分があり、まるでお互い別のもの触っているようです。

最終的な感想はお互い「これは多分、像だ!」と導くのですが、そこに至るまでのロジックが異なり、それでいて互いに得た特徴をもとに同じ到達点にたどり着くことがあり、それが本当に面白いです。
このことからも、テロワールはたしかに存在するのです。
優れたテイスティング能力を持つ人だと、その年の味を感じることができるそうです。ブルゴーニュワインをテイスティングして、村はともかく「2015年のブルゴーニュの味がする」とここから感想が入ることがあります。
カラッと晴れたあとに凝縮した果実の味わい、2018年のように水っぽいジューシーでもなく、2016年のように乾いたドライな果実感でもなく、2015年のピノ・ノワールの味があります。

初めから良いワインを飲んではいけない?

ブルゴーニュのテロワールが分からないうちは、高級なグランクリュのワインを飲んでも「美味しいなー!」という感想しか出ないかもしれません。できればブルゴーニュを始めるのであれば、ACブルゴーニュ(広域)からはじめるのが良いと思います。
価格も750mlで2,000円~3,000円と手頃ですし、様々な生産者が工夫して作っているので個性が出ていて面白いです。
広域で収穫されているので、村名に指定されない区域から収穫されていたり、複数の村のワインをブレンドしてACブルゴーニュに仕立てているところもあります。量販店やドラッグストア、コンビニに置いてあるような非常に安いACブルゴーニュは、大量の買い付けブドウを混ぜた乱雑なワインも存在します。しかし、小さな家族経営のドメーヌで自分が手入れをしている畑を中心にして、一級、特級にはならないな?という格落ちしたブドウを使って醸造しているACブルゴーニュは、村名ワインのようなエレガントな香りと味わいを持つものもあります。
ルロワはもとより、シルヴァン・カティアールやフーリエといった生産者は特級ブルゴーニュと同じようにACブルゴーニュも丁寧に生産していたり、その味わいと希少性からACブルゴーニュでありながら5,000~12,000円という価格のブルゴーニュもあります。
他にもドメーヌ アルロー ロンスヴィ ブルゴーニュはACブルゴーニュですが、以前までジュブレ・シャンベルタンの区画で格下げされてしまった畑を使っていることもあり、ほぼジュブレ・シャンベルタンなACブルゴーニュです。
ドメーヌ・ラモネという生産者は、シュヴァリエ・モンラッシェやバタール・モンラッシェという1本10万円以上の特級白ワインを生産していますが、片手間で作った赤ブドウのACブルゴーニュが透明感が高く香りもよい素晴らしいワインです。

このように必ずしも村名でないと良くないというわけでなく、生産者やビンテージなどに注意を払うと優れたブルゴーニュが手頃な価格で手に入り、その周辺のテロワールと生産者の作りたい方向性が理解できることもあります。

ちょっとマイナーな村名ワインは勉強におすすめ

ブルゴーニュをはじめると、ついつい王道のヴォーヌ・ロマネやジュブレ・シャンベルタンといった産地にこだわって飲んでしまいがちです。確かにジュブレ・シャンベルタンは、クロドベーズなど偉大な特級畑をいくつも内包していますし、隣接しているモレ・サン・ドニはクロ・サン・ドニやクロ・ド・タールといったモノポール(単一畑)が存在します。
そこから南下するとシャンボールミュジニー、ヴォーヌ・ロマネ。ヴォーヌ・ロマネには有名なDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)や故アンリ・ジャイエのクロパラントゥなど100万円以上もの値段がつく超弩級ブルゴーニュの生産地もあります。
ラ・ターシュやリシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァンなどもヴォーヌ・ロマネ村です。

そうなると有名な産地を優先して飲んでみたくなるものですが、ここに落とし穴があります。
ヴォーヌ・ロマネとジュブレ・シャンベルタンは軒並み価格が高騰して異常事態になっています。1990年代には現在300万円のロマネ・コンティが10~20万円でした。ヴォーヌ・ロマネのワインは特級でも1~2万円出せば十分に美味しいものが手に入れられました。
しかし今は当時1~2万円で飲めたはずのボトルも数十万円まで高騰しています。クロ・デ・レアといったヴォーヌ・ロマネのプルミエ・クリュ(1級)でやっと2万円を切るような価格です。

予算が潤沢な人であれば、偉大なワインをバンバン開ければ勉強になりますが、数万円〜数十万円のワインを気軽に開けるのが難しいのであれば、背伸びしてプルミエ・クリュのヴォーヌ・ロマネを選んだり、安い1万円を切るヴォーヌ・ロマネを選択するより、まだ高騰していない村の優れたワインを飲むほうが美味しいブルゴーニュワインに出会うことができます。
安いヴォーヌ・ロマネや安いジュブレ・シャンベルタンには、それなりの理由があるのです。そして有名な村だと中身がどんなものであっても、飛ぶように売れてしまうのです。

見落とされがちなボーヌ周辺

人間知らないものに対しての恐怖があるので、未知のワインを積極的に選ぼうとしない傾向があります。
しかし良いワインバーに出会うと、有名ではない村のワインを飲ませてくれることがあり、ワイン選びの手本を学ぶことができます。
例えばボーヌ、ショレイ・レ・ボーヌやサヴィニー・レ・ボーヌ、ポマール、ヴォルネイ、オークセイ・デュレス。
このボーヌ市街周辺の村は高級フランス料理店のワインリストにも載っているにも関わらず、ワイン愛好家の中でも花形・主役とはいえない村です。格付けに特級畑がない村もあるので、予算無制限の場合はヴォーヌ・ロマネやジュブレ・シャンベルタンに勝ることは難しいといえます。
ですが、1万円以下で美味しいブルゴーニュを飲むというところに焦点を合わせると、昔ながらの丁寧な製法で作ったプルミエ・クリュが、それらの村なら1万円を切って買えることがあるのです。

中でもボーヌ、ポマール、ヴォルネイ、オークセイ・デュレスは1万円以下であれば有名な村を越えるパフォーマンスを秘めているワインが多いのです。有名でない分、有名税が付与されていないので本来の価格で手に入れることができます。
昔の洋酒図鑑を眺めていると、ヴォーヌ・ロマネは先ほどのように30倍以上の高騰をしていますが、ボーヌやポマールはせいぜい1.5~2倍、3倍いくかどうかといった価格の上昇です。端的にいうとお買い得というわけです。

ブルゴーニュワインの村名は何を飲めばいい?

初めてブルゴーニュを楽しむのであれば、良きワインバーでジュブレ・シャンベルタンやヴォーヌ・ロマネをグラスワインで頂きましょう。
その香りにうっとりしたら、ACブルゴーニュなどを経験してみて、そこから上記の有名村を楽しむのもありです。
そこでずっと、有名な村ばかり買っているのは少しもったいないです。マンネリしてきたのであれば、積極的に隣接する村を試すのは良い出会いに繋がります。ジュブレ・シャンベルタンであればフィサンのプルミエを試してみると新しい発見につながります。

そのようなトレーニングを積んでから、2~3万円やそれ以上する偉大なワインと対峙することで、ブルゴーニュの一級や特級が何か、美味しいという言葉だけでなく本質的な部分まで見えてくるはずです。

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