日本人がイタリアのブランドを駄目にしている
今日本では空前のトレンドとなっているイタリアファッション。
おかげで数多くのブランドが日本で紹介され、日本では本当にたくさんのものが手に入るようになりました。イタリアのナポリやミラノ、フィレンツェに行っても手に入らないものが、東京に行けば必ずと言って良いほど手に入るのですから、素晴らしい時代です。
今や日本はイタリアの製品を買うことによって、イタリアのファッション文化を支えている存在と言っても過言ではありません。
しかし、それと同時に今日本人はイタリアの素晴らしいファッション文化を壊しつつあります。
普段からイタリアファッションを紹介している『大人になれる本』ですが、今回はその事実について改めて考え、私たちが買う側としてできることをもう一度確認していきたいと思います。
最初に日本に来るときは「素晴らしい」ブランド
日本人は非常に高感度であり、素晴らしいブランドには世界で一番敏感です。数多くの小さなファクトリーブランドや工房が日本人によって掘り出され、日本でブームになることによって人気ブランドとしての地位を確立していますね。
すなわち、日本に初めてあるブランドが入ってくるとき、そのブランドは素晴らしいブランドであることが多いです。本当に良い製品だからこそ、「ネームバリュー無し」「売れるかどうか分からない」というリスクを背負ってまで日本人はそのブランドを日本に持ってくるのです。
しかしそのブランドがある程度売れてくると、ある現象が起こります。
それはすなわち、ブランド名が売れてきてしまい、品質の善し悪しではなくブランドバリューで服が売れるようになることです。
するとセレクトショップなど売る側はどのようにするかと言うと、売価はそのままにジャケットの原価を下げます。もともと服の原価の大きな割合を占めているのは生地代ですから、この生地を安く、祖末なものにすれば原価はいくらでも下がって行くのです。
他にも、仕様を簡略化したりミシン縫い行程を増やしたものをオーダーすることでも原価を下げることもできます。例えばあるブランドは最初、襟や前見頃が手縫いでステッチが入っていました。しかしあるときからそれがAMF(手縫い風)のミシンステッチになり、最終的には何の変哲も無いミシンでざーっと縫ったステッチのモデルも出てきました。
手縫いでステッチしていたところをAMF(手縫い風)でさえないミシンで縫えば、コストはずいぶん安くなります。
また、このような粗悪さをごまかすために、セレクトショップは別注でいわゆる「遊び心のある表地や裏地」を発注します。
私の個人的な意見ではこういった生地はおもちゃのようにしか見えず何が良いのか分かりませんが、生地感や色柄を工夫することで、買う側は無地であれば絶対に買わないようなナイロン、ポリアミド、ポリエステルなどが混紡された粗悪な生地のジャケットを買うようになるのですね。
一部のセレクトショップの別注でブランドの信頼が下がる
こうして品質の悪い服を、セレクトショップなどは同じ価格で販売し続けます。また原価を下げ、売価も下げて「他より安く同じブランドを売る」ことで客を集めて売っているセレクトショップもあります。
最初は買う側も言われるがままに買っていますが、だんだんとお洒落な人たちはそれが粗悪品であることに気づきます。少しでも目の肥えた人からすればそういった服の質の悪さは明白ですし、そうでなくても品質を重視している良心的なセレクトショップの別注品と比べればすぐに違いが分かるのです。
するとブランドの信頼は下がってしまい、「このブランドはふざけたものばかり作っている」という評価が出回ってしまうのです。
先日私は、ネットなどでも展開している都内のセレクトショップが別注したイタリア製ジャケットを見て驚愕しました。