筆者の知る限り、真に高級な食器ブランドといえば、「KPM」と「セーブル」でしょうか。次に日本で人気があるのが「マイセン」と「ヘレンド」。食器に詳しい方の中には異論があるかもしれませんが、市場の視点から見ると、この4つが特に”高級で人気”と言えるでしょう。
KPMとは
KPM – Königliche Porzellan-Manufaktur Berlin GmbH は「ベルリン王立磁器製陶所」を意味し、ドイツのベルリンで1763年に設立されました。歴史的に見ると、現マイセンの前身である「王立ザクセン磁器工場」が1710年に設立されているので、マイセンの方が約半世紀早いと言えます。
ヨーロッパの歴史に詳しいわけではないのですが、KPMのルーツはベルリン(プロイセン王国)、マイセンのルーツはドレスデン(ザクセン王国)と、それぞれ別の国にあったようです。北のプロイセンと南のザクセン、どちらも外資を獲得するために窯を設立していたとのこと。
17世紀から18世紀にかけて、当時は東洋趣味(シノワズリ)が最高潮を迎え、ヨーロッパの貴族たちはこぞって中国や日本から高価な磁器を買い漁っていました。その需要を満たすために、国が力を入れて窯を設立したそうです。
KPMの価格は、シンプルな白磁のカップ&ソーサーが新品で約4万円。絵付きのものや壺、大型作品など特殊なものは20万円〜500万円と幅広い価格帯があります。
セーブルとは
1738年にパリ東端のヴァンセンヌで、2人の職人が窯を開いたのが始まりで、その後ルイ15世やポンパドゥール夫人の支援を受け、パリとヴェルサイユの中間にあるセーブルに移転して王立の窯となりました。
セーブル焼きと言えば、特徴的な濃紺の艶や深みのある色合いが有名です。日本には明治時代に少数がフランスから輸入されていたそうです。セーブル焼きは年間の生産量が少ないため、ほとんどがフランス国内で流通しています。
セーブル焼きの価格は、ティーカップ&ソーサーでペインティングされたものが約20万円。ティーポットなど10ピースほどの2人分セットを揃えると、約250万円になります。
セーブルとKPMは日本に店舗を持っておらず、一部の代理店や百貨店の特別なイベントでのみ本国から受注や販売が行われています。
次に、日本に店舗があり人気の高級ブランドとして挙げられるのが、マイセンやヘレンドです。最近では、台湾の高級食器ブランド「FRANZ」も有名になってきました。
マイセン
先程も話に出ましたが、1710年にドレスデンで設立された「王立ザクセン磁器工場」がマイセンの前身です。現在でも世界中で高い人気を誇る窯で、ドレスデンにはマイセンの博物館を見に旅行に行く人も多いようです。日本の柿右衛門様式など東洋の影響を受け、東洋をテーマにした作品が多いのも特徴です。
価格は、白磁の絵のないカップ&ソーサーが1万円程度、絵付きのものは3万円〜20万円程度。特殊な壺や香炉などの大型作品は100万円〜200万円以上することもあります。また、富裕層に人気の「マイセン アラビアンナイトシリーズ」は、6人分のセットを揃えると700万円ほどになると言われています。
(写真は所有品のマイセン剣マークと波の戯れ)
ヘレンド
ヘレンドは、1826年にハンガリーで設立された窯です。他の窯と比べると、かなり後からできたと言えますね。中央ヨーロッパらしい可愛らしい絵柄や繊細な形状が特徴で、日本でも人気が高く、百貨店や輸入食器店などでよく見かけます。
カップ&ソーサーは2万円〜8万円の価格帯が多く、6人分のティーセットを揃えると50万円ほどになります。また、百貨店などのイベントではペインターが来日することもあります。大型の壺などは800万円を超えるものもあり、希少性の高い作品も存在します。
しかし、硬派な食器マニアの中には、ヘレンドに対して厳しい評価を下す人もいます。19世紀に一度倒産し、贋作や他社を真似た絵付け工房としての時期があったからです。現在では一流企業として振る舞っていますが、そうした大変な時代を経て今に至っています。
(写真は所有品のウィーンのバラ)
超高級な食器まとめ
筆者の個人的な感想ですが、世間一般で「高級食器」と言われるものは、カップ&ソーサーで5千円〜1万円程度のものが多いと思います。さらにグレードが上がると、1客3万〜5万円の手作業で作られた品となり、超高級品は8万円〜20万円くらいだと感じています。
3万円〜5万円程度の高級カップであれば、紅茶やコーヒーを入れて楽しむために使う人が多いですが、8万円〜20万円の品になると、キャビネットやディスプレイ棚に飾ってコレクションとして所有する人がほとんどです。
また、1客だけでなく、そういった超高級食器を6人分のお茶会などで使うとなると、ティーポットやプレートなども合わせて購入する必要があり、軽く100万円を超えてしまいます。これを日常的にテーブルで使えるとなると、本当にセレブな暮らしをしている感じがしますね。
フルセットで100万円超えも
ヴィラ・レオナーレという洋食器専門店で楽天市場に掲載されていた商品です。「わあ、ユーランダーの珍しい色(ターコイズ)のディナーセットだ!」と驚く方は、セレブかもしれません…。こういった高級食器を用意して、家にゲストを招いてディナーをもてなすために、6セットのディナーセットを揃える家庭もあるようです。
これはつまり、ホスト(夫婦)とゲスト(夫婦)×2組、もしくはどちらかに子供2人がいる場合などに対応できるセットです。
一般的なディナーセットには、ブレッド&バタープレート、サラダプレート、ディナープレート、カップ&ソーサー、フルーツボウルが含まれますが、スープ皿やその他の特殊な皿が追加されることもあります。
ちなみに、上記の写真にある72ピースのセット(中古)は、なんとお値段975,000円(!)ちょっと安く感じるかもしれませんね。
ちなみに、ブランド紹介ではあえてウェッジウッドを外しましたが、最高級品である「アストバリーブラック」のディナーセットを揃えると、かなりの金額がかかるようです。
•ディナーセット: 41ピース 特製ケース付き 税込価格 ¥8,190,000(本体価格 ¥7,800,000)
•ティーセット: 23ピース 特製ケース付き 税込価格 ¥3,990,000(本体価格 ¥3,800,000)
さらに、アーサープライスのスターリングシルバーのカトラリー一式やグラス類を用意すると、合計金額は相当なものになりますね…。ただ、高級腕時計なら1本1000万円というのも普通にあるので、食器に1000万円を出せば、最高級品の6人分がフルセットで揃うと考えると、意外に安い?なんて少し思ってしまいます。先ほどのユーランダー・ディナーセットが90万円代というのが、なんだかお手頃に感じてきますね!
編集部にあるこちらのウェッジウッドは「カメオ トロフィー・グレイ」と言って、アストバリーブラックと双璧を成すカップですが、定価はなんと24万円! セーブル級の価格と言えますが、まだ一度も使ったことがありません…。
カップ&ソーサーで定価4万円以下でないと、日常使いする気にはなれませんね。
ウェッジウッド公式ホームページから借用した写真ですが、定番のワイルドストロベリーであれば、ルノーブルで6人分のセール価格が89,000円。そこにプレートなどを追加したディナーセットでも、15〜20万円で十分収まると思います。子供の代まで使えるので、これくらいの価格であれば、一般家庭でも十分手が届き、素敵だと思いますよ!