ブランドはユニクロと同じようなものを10倍の値段で売っている??
ブランド品を買う人は情弱で馬鹿なのか、ユニクロは果たして最強なのか。
ちょっと真剣に考えてみました!長くなってしまいますが、お付き合い頂ければ幸いです。
関連記事 :「お金持ちは同じ服を2着買う」は本当か? – 富裕層の服の買い方、着こなし方
ブランド服には種類がある
まず知っておいてもらいたいのは、ブランド服にはいろんなタイプがあるということです。
これらを分かりやすいようにざっくり3つに区別してみました。
基準はブランド料が主にどこに掛かっているかということ。ブランド料って何?? 便宜上言いきってしまうならば、例えば普通のノーブランドの服が3,000円で、ブランドの服が20,000円だったら、20,000円−3,000円=17,000円がブランド料です。
で、区別してみたのがこちら。
①主にイメージ料が掛かっているもの
②主にデザイン料が掛かっているもの
③主に材料費、品質管理費がかかっているもの
です。
一つずつ見ていきましょう。
①主にイメージ料が掛かっているもの
まずはハイブランドに多いこのタイプ。ルイヴィトンやコーチ、アルマーニのように持っていることによって「人から熱い視線を受ける」「優位に立てる」「凄いと思われる」ことができるブランドです。
もちろん上に書いたブランドが悪いわけではありません。個人的にはアルマーニだって好きですが、これらのブランドはトップモデルを使った広告や様々なオーソリティとのコラボレーションに莫大な資金を使っている。
ブランドのゴージャスで圧倒的なイメージを作るためのお金が、一つ一つのバッグや服に上乗せされることになります。
そういうわけでブランド料=イメージ料となるわけです。
②主にデザイン料が掛かっているもの
これはDCブランド、ドメスティックブランドと呼ばれているもの、デザイナーズブランドと呼ばれているものなどが当てはまります。例えば分かりやすい例で言えばトムフォード、コムデギャルソンやポールスミス。
コムデギャルソンはそのデザインや感性、世界観が欲しくて着ている人がほとんどで、「素材が良い!」と言って着ている人はあまりいません。あるいは「周りよりも優位に立ちたい」という人はコムデギャルソンよりもルイヴィトンを選ぶでしょう。
あるいはポールスミスは非常に人気なブランドですが、それはポールスミスにしかない独特の「お洒落さ」や「可愛さ」があるから。ユニオンジャックやミニクーパーをモチーフにした大胆なプリント柄や、鮮やかなマルチストライプは中々他のブランドにはデザインできないですよね。
これらはブランド料=デザイン料となっています。
③主に材料費、品質管理費がかかっているもの
これは分かりやすい例が、イタリアの服地ブランドです。
ロロピアーナやゼニア、カノニコと言った様々なスーツ&ジャケット生地メーカーがイタリアにありますが、それらがブランドたる所以は一つ。「質が良いから」です。彼らは例えば上質なウール原毛を仕入れるルートを持っていたり、それを美しく生地にするノウハウや環境を持っていたりする。
そういったブランドの製品がなぜ高いか、最も大きな理由は「良い物を作るためにお金が掛かるから」。そして次に大きな理由は「品質を維持するために先にお金をとっておかなければならない」からです。
良いウールは高いし、美しい生地を作るには手間がかかる。また高い品質を維持するためには、リスクに備えてお金を貯えておかなければならない。1000万円分生地を作っても出来が良くなければそれは売れない。そういう場合にも「品質の低いものを売らなくて済む」ように、予めやや高い金額を取っておく必要があるわけですね。
これがブランド料=材料費、品質管理費の場合です。
もちろんこれらは分かりやすく、極端に区別した例です。
実際にはルイヴィトンのバッグだって品質のためにお金が掛かっていますし、イタリア生地ブランドにだってイメージ料はかかっている。その比重の大きさの問題なのです。そういうわけもあって「主に」と付いているんですね。
ただ、この分類を意識しておくといざブランド品を見たときにも一概に「ぼったくり」と思ってしまうことなく、冷静になることができます。
「このブランドは結構品質にお金がかかってるなー」
とか、
「このTシャツは完全にロゴ代が高いなー」
という風にです。
次ページでは、なぜブランド品がユニクロと同じに見えるかを書いていきましょう。
ブランド服とユニクロが同じに見える(むしろブランド品の方がひどい??)
左からバルバ22,000円、ユナイテッドアローズ14,000円、ユニクロ2,000円。
ユニクロは分かると思います。ユナイテッドアローズは日本で最も人気なセレクトショップの一つで、こちらはオリジナルのシャツ。いわゆるセレオリというものになっています。
最後にバルバは、シャツ好きなら誰でも名前を知っているイタリアの名門シャツブランド。
ユニクロのシャツは中国製、ユナイテッドアローズのシャツは日本製、バルバはイタリア製。
ですがどれも綿100%で、これらのシャツは一見したところではそれほど違いはありません。
そこで「ユニクロが最強」「ブランド品はタグで10倍の値段を買わせてる」と言った意見がでてきます。
こう言った意見が出てくる状況には大きく分けて2つの場合があります。まずは先ほど説明したブランドタイプ①のように、イメージ料が高く付いていて品質が確かにあまり良くない場合。
ですがバルバは多くの人がそのシャツの品質を認め、その品質のおかげで一流ブランドになりました。ですから品質がユニクロと同じ!とは言い切れないでしょう。
そこで考えられる理由が2つめの「価値が分からない」場合です。
こちらの写真を見てください。
ヨーロッパに行ったことが無い人や、写真でしか見たことが無い人は「あ、ヨーロッパだ」と言います。
ここ数日間でパリのことをTVで見た人は「パリだ!」「パリと同じだ」と言うでしょう。パリの町並み以外をあまり見たことがないため、ヨーロッパの町並みの写真を見るとどれもパリと同じに見えてしまうわけです。
ヨーロッパを旅行したことがある人なら「イギリスじゃないなあ……フランスともベネルクスとも違うし、屋根の形とか建物の雰囲気からするとドイツの南の方か、オーストリアか、あるいはチェコの方かなあ……」と考えるでしょう。
実際にはスロヴェニアの首都リュブリャナですね。
ファッションに関しても同じことが起きます。
服についてほとんど知らない人は「あ、ジャケットだ」と言います。
いつもユニクロを着ている人は「ユニクロと同じだ」と言うでしょう。
ですが普段いろいろな店を見て歩いたり、よく観察したりしている人は「全体のシェイプが綺麗だし、生地も光沢感があって高級な感じ。襟が立体的になってるし、ポケットも柄合わせをしてある。高そうなジャケットだね」と言うはずです。
実際には7万円弱のビームスのジャケットです。
人は何か新しいものと出会ったとき、自分の知っているものに当てはめてそれを判断することしかできません。
例ばかりで申し訳ありませんが、美術を勉強したことがなく、美術館に一度も行ったことがない人が、ある画家の絵が上手いか下手かを見極めることができるでしょうか。
あるいは午後の紅茶しか飲んだことが無い人が急に高級な紅茶を飲んで、それが美味しいかどうか判断できるでしょうか。
美術を知っている人であればその偉大な画家の絵をレンブラントの光と影の表現技法と比べて「コントラストが弱いように感じる」と言うことはできるでしょう。しかし美術を知らない人が偉大な画家の絵を見ても「この前見た美大の友達が書いた絵の方がうまい」と思う可能性が高いです。
毎日フォションやマリアージュの紅茶を飲んでいる人であれば、その高級な紅茶を「値段の割にはエグみが強く、香りが弱い」と判別することができるでしょう。ですが今まで紅茶を茶葉からいれたことがなく、ペットボトルでしか紅茶を飲んだことがない人は恐らくファーストフラッシュ(春摘み茶)を「緑茶じゃんwww」 と言うでしょう。
ファッションでも
いつも着ているものと同じに見える=「ユニクロと同じ」
いつも着ているものと違って見える=「ユニクロよりひどい、ダサい」
というように判断してしまうのです。
ですからユニクロとブランド品が同じに見えてしまう人も、いろいろなお店でいろいろなものを見てみましょう。冷やかしでちょっと高級な店舗に入ってみるのも良いでしょう。
いくつも見ているうちに「ああ、確かに違う」というふうに分かってくるはず。
その10倍の値段が相応かどうかは別の話になりますが、まずは違うということは実際に見て意識しておいた方が得なのです。
イタリアのエレガンスを纏う。カヴァリエリのリングに新作登場。
ブランド服とユニクロは具体的にどう違うか
さて、じゃあ実際にブランド服とユニクロ服は具体的にどう違うかという話ですね。
ここで先ほどのブランドタイプのことを思い出してください。
①主にイメージ料が掛かっているもの
②主にデザイン料が掛かっているもの
③主に材料費、品質管理費がかかっているもの
ですね。
タイプによってどうユニクロと違うかというのは話が変わります。というより、言ってしまえばこれがそのまま答えですが……。
まずは①です。
①主にイメージ料が掛かっているもの
こういうブランドの場合はユニクロに比べイメージ料が掛かっている分、「人から見て凄い」「ステータスになる」といった利点があります。ユニクロの服を着て優越感に浸るのは難しいですが、ブランド服なら簡単にできます。これがこのタイプのブランド服とユニクロ服の違いですね。もちろんこういうものを嫌う人も多いですが、これも一つの事実です。
②主にデザイン料が掛かっているもの
このタイプのブランドの場合、デザイン料がかかっている分ユニクロに比べ個性があり、お洒落さや存在感のある服が多いです。ユニクロに比べると優れている点はそれ自体のお洒落さだけでなく、「これを選べるセンスが自分にはあるよ」と主張できることにもあります。
③主に材料費、品質管理費がかかっているもの
ユニクロに比べて材料費や品質管理費用が掛かっているだけ上質で、見た目に高級感があり、体型がよく見え、着心地が良いという利点があります。
先ほどのバルバのシャツとユニクロのシャツを例に出してより深く考えてみましょう。
◯生地の質
ユニクロのシャツとバルバのシャツでは、生地の質が違います。ユニクロのシャツは大量生産をしているおかげで2,000円で買うものの中では生地のレベルも非常に高いと言えます。
ですがバルバのシャツは良質な綿を使った細い番手の糸を使っているため、比べ物にならないほど滑らかで上品な光沢感があります。イタリアを始め世界中で「素肌に着る」のが当たり前とされているドレスシャツとしては重要な「肌触り」が良いのは言うまでもありません。
逆に耐久性に関してはユニクロの生地の方が高い。イタリア製の生地でも正しく着ている分にはまったく問題ありませんが、無理な着用や不適切なクリーニングをしているとすぐに痛んでしまいます。手が掛かり、神経を使うということですね。
◯シルエット
高いシャツは多くの場合、縫製やデザイン自体が非常に立体的になっています。これはもともと立体的な形をしている体というもののラインに自然に沿ったシルエットを作るためです。
その立体的な仕立てのおかげで見た目のシルエットが美しくなる。それはすなわち、スタイルがよく見え、野暮ったい服のたるみなどがなくなるということですね。特にウエストラインや襟周りのシェイプは明確に差が出ます。
◯作り
多くのハンドメイドの過程を経て、経験と技術を持って丁寧に作られているバルバのシャツと、機械生産がメインで一日に大量に作っているユニクロのシャツではバルバの方が良いということは何となく想像できますよね。
ですが一概に、誰がどう着るのにもバルバの方が良いかといえばそうではない。例えばバルバは袖付けを手縫いで行っているシャツが多いですが、これは着心地を優先しているため。洗濯機で洗ったり、タフに着るには圧倒的に耐久性が足りません。そういう使い方にはユニクロのシャツの方が適しているでしょう。
いかがでしょうか??
これは違いのほんの一例ですが、高いものと安いものではやはり大きく違います。それは方向性の違いであり、多くの場合高級品は着心地や手触りそして風合いで勝るが繊細で、安い物はそういったものを二の次にしており結果として耐久性が高いです。
「これだったら絶対ユニクロの方が良い!」という人は多いでしょう。
そうなんですね。実際のところファッションが好きな人や着心地、自分の身につけるものの質にこだわる人でない限りはユニクロの方が利点が良いことも多いんです。ましてや値段は10分の1です。
そう考えるともしかしてブランド服は無駄なんじゃないの?? 最後にそれについて考えてみましょう。
ブランド服は無駄?? ユニクロが最強??
「10倍の値段を出してブランド服を買う人は情報弱者」「ユニクロが最強」
これについては間違っていると言えるでしょう。
例えばメンズ雑誌Safari サファリに出てくるハリウッドスターは皆こぞって高級なブランドの服を着ています。これは彼らが全員馬鹿で情弱だから、というよりはそれが彼らに適しているからですよね。
彼らは常に民衆のあこがれに無ければいけませんから、良い物を買って、みんなが「やっぱりハリウッドスターは違う」と思うようなセンスで着こなす必要があります。(上の写真はモデルで、ルイヴィトンの紹介記事です)
英国首相が数十万も出して高級スーツを仕立てているのも彼が頭の悪い無能な人間だからと言うよりは、彼が人前に立つ人間である以上は完璧な装いをするべきだと理解しているからでしょう。
逆に都内で普通の会社に勤めている、普通の年収の人が高級ブランドのスーツを着るのはどうか??
これについては間違っている可能性もありますから、しっかりと考える必要があるでしょう。
毎日満員の地下鉄に乗ることや雨の中歩くこと、何時間も座って仕事することなどを考えれば高級ブランドのスーツよりも青山のスーツの方が良い場合が多いです。また、高級なスーツは何より連続で2日以上着用することを考えられていないですから、数着をローテーションする必要があります。クリーニングもある程度高級なコースにしないとすぐに生地が痛んでしまうでしょう。
しかもスーツだけが高級だとアンバランスになってしまうため、シャツや靴なども高級にすることになってしまいます。
そういうわけで、高級ブランドが「最強」とも言えません。
大学でモテたいからと言って、質の良いことで有名なブランドを着るのも間違いです。
なぜなら多くの大学生の女の子はそれがユニクロのポリエステル混の生地であろうと、イタリア製のシルク混生地であろうとそれほど違いが分からないからですね。
左6,500円、右65,000円だとしても……
せいぜい「右の方が色とチェック柄が可愛いー!」という答えになります。
重要なのは、自分が何を求めて服を買うか
できるだけファッションにお金をかけず他のことにお金を回したい人や、洗濯や取り扱いで気を使いたくない人にとってはユニクロが最強です。
ちょっとお金を出してでもお洒落に見られたければ一般にコスパが良いと言われているユナイテッドアローズのgreen label relaxingなどをチェックしてみるのも良い。お洒落さを求めるのであればコストや耐久性、万人に合うことを優先したユニクロがベストとは言えないでしょう。
あるいはファッションが本気で、趣味として好きならデザイン料を出してDCブランドの服を買うのも良い。
質の良いものが好きな人は、品質で定評のあるブランド品を買えば良い。
人よりも上の立場にあるべき人や、そうありたい人はイメージ料の高いブランドのバッグや服を買えば良いわけです。例えば相手は従業員数千人の大企業で自分たちは数人で経営する小企業だが、契約は対等な立場で結びたい。その契約のための商談には、ユニクロのジャケットや量販店のスーツよりも一流ブランドのスーツの方がより適しているでしょう。
他の女の子よりも優位に立って目立ちたい高校生の女の子がバイトしてコーチを買うのは間違っていません。なぜならそれは彼女の、同級生や友達の中で「目立ちたい」「ステータスが欲しい」というニーズにピッタリ合っているし、彼女達はそれにお金を払っているからです。
それに対して、まったく違う世界に生きている私たちが「品質が値段に釣り合っていない」と言うのは滑稽なことですね。
本当に無駄なのは例えば、「モテたい」という目的があるのに他人に理解されにくいデザイナーズブランドで服を買ってしまうこと。
他人よりお洒落で派手なファッションをしたいのにユニクロで服を買ってしまうこと。
ファッションのセンスを主張したいのに、多くの人があまり良いイメージを持っていないハイブランドの服を買ってしまうこと、などです。
人が求めるものによって、価値のある服は変わります。ユニクロの服とブランドの服とではイメージ、デザイン、品質等で明確に違いますが、どれがベストかはその人が求めるものによってのみ決まるのです。ですから、自分が何を求めて服を買うのかをしっかりと考えましょう。
「ブランド品は無駄」「ユニクロはダサい」というような偏った考え方をなくし、自分に必要なものを適切に判断して買えるようになったら、それは素晴らしいことですよね!