日曜日, 7月 22

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静岡茶が好きなんです!は隠れた禁句

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ちょっとした旅行や出張で静岡に来た人は、きっとこう思うはずです。

「いやぁ〜、せっかくだしウマイお茶でも飲みたいな〜」

静岡にはお茶と富士山くらいしか名物がありません。
新幹線で静岡駅に到着してお茶を飲める場所を探しますが、スターバックスやドトールばかりで一向に静岡茶が飲める場所が見つかりません。駅にある総合観光案内所で「どこか静岡茶を飲める場所はありますか?」と聞くと、きっと駅の地下道にある静岡茶商工業協同組合の運営する「一茶」というお茶カフェを紹介されるはずです。

しかし行ってみるもののイマイチぱっとしない茶が出てきます。
確かに日本茶インストラクターやアドバイザーの人が丁寧に淹れてくれるので美味しいのですが、何しろお茶の等級が低いです。安い茶を出してきます。つまり静岡には、ちょっとしたウマイお茶が出てくるところが無いのです。

お茶を試飲したり楽しみたい、という人のために「逸品お茶会」というイベントが年に1回静岡茶市場の拝見場で行われるのですが、こちらはかなり殺伐としていて茶界隈のプロがひしめきあっています。

飲み手も日本茶通で、写真にある「安倍の百年茶」「日本平手摘みやぶきた」「足久保蒼風」など軽々とテイスティングで分別できる人ばかりです。「静印雑131」を見るだけで静岡茶とインドの交配種だという事も分かりますし、蒼風や藤かおりに似た品種だということも理解しています。茶手揉み保存会に至っては、お湯ではなく茶葉を水で浸して透明なまま飲むことを強要されますし、茶殻を食べないと立ち去ることさえできません。静岡にはタカ派(強硬派)が根強く残っているのです。

つまり他県民が気軽に静岡に来て、美味しいお茶を飲んだり探すのは非常に困難だと言えます。
駅構内や呉服町通りには静岡茶専門店がありますが贈答用の緑茶が多く、成り行きで買わされてしまいます。お茶をその場で楽しむところではありません。

一日探し周り、すっかり疲れ弱ってしまった観光客はせめてもと居酒屋などで美味しい日本酒と刺し身でも食べようとするはずです。そこで気をつけるべきなのが隠れた禁句「静岡茶が好きなんです!」
優しくて気さくな静岡県民は、きっと他県からきた人に「どこから来たんだい〜?」と話しかけ、常連客も同じように「そりゃあ遠くからわざわざ」と言うようにカジュアルに接してきます。

しかし、この禁句「僕、静岡茶が好きなんですよ〜!」と言った途端、一瞬だけ空気が静まり返ります。「あっ、そうですか。」とでも言うような表情をしながら店主はサラを拭き出し、客は残ったカツオを突いて話が途切れてしまいます。

静岡茶タブー。その理由とは…。

この地図を見て下さい。

静岡県が東部、中部、西部と分かれていますが、多くの静岡市民が「他の市には関心がありません」
辛うじて静岡市と旧清水市とのつながりはありますが、それでも旧清水市民からすると静岡市を快く思っていなかったりと、仲良しな温厚に見えて複雑な感情を抱いています。天竜(浜松)の話でもしようものなら京都と同じ遥か遠くの事だと流されることでしょう。

言わずもがな日本茶の二大産地は「本山茶」「川根茶」です。
多くの静岡市民は緑茶というのは「本山茶」と「川根茶」、「そのほか」しか無いと思っています。ウィキペディアには下のようにブランドがあると紹介されています。

本山(ほんやま)茶 – 静岡市葵区安倍奥・藁科地区。
足久保茶 – 静岡市葵区足久保地区。聖一国師(円爾)がこの地で茶栽培を始めたため、静岡茶発祥の地とされる。
両河内茶 – 静岡市清水区両河内地区
川根茶 – 島田市、川根本町
掛川茶 – 掛川市、静岡牧之原茶 – 牧之原市 ~ 牧之原台地=深蒸し茶発祥の地
菊川茶 – 菊川市、引佐(いなさ)茶 – 浜松市北区
天竜茶 – 浜松市天竜区、袋井茶 – 袋井市
小笠茶 – 菊川市、島田茶 – 島田市、金谷茶 – 島田市
岡部茶 – 藤枝市、清水茶 – 静岡市清水区、富士茶 – 富士市、富士宮市
天城茶 – 伊豆市周辺、ぐり茶(玉緑茶) – 伊東市など伊豆半島東部。
丸子(まりこ)紅茶 – 静岡市駿河区丸子地区で生産されている国産の紅茶。

これだけ多くありますが、ひどいケースでは「本山茶」しか静岡茶でないと思っている原理主義者(お婆ちゃん)もいます。一応、両河内(りょうごうち)と岡部、日本平、でお茶を作っているのは知っていますが遠い親戚のようにしか思っていません。つまり正解は…

「僕、梅ヶ島のお茶が好きなんですよ〜!」

(うん、うん、まあ分かってるな)

と店主や常連客も、黙って頷くはずです。
しかし、5分の1くらいの確率で

「おみゃ〜はよぉ〜おらっち茶を飲んだことないから、ほんなこというけんど。
本当にうんまい茶飲んだことないら?」

と爺さんに捲し立てられます。
この静岡市のお茶のまちの公式サイトを見てわかるとおり、本山茶も細分化されており、安倍奥(井川・梅ケ島)と安倍川流域(美和・賎機・玉川・大河内)、藁科川(南藁科・中藁科・清沢・大川)とでは味の特徴が異なります。初心者でも横に並べて飲めばわかるほどの違いがあります。

例えば梅ケ島の少し下にあるワサビの産地で有名な「有東木」。ここの生産者や親族からしたら有東木が一番美味しい静岡茶になるわけです。生まれ育ってずっと飲んできた味が一番慣れ親しんでいるのです。
有東木の人に「丸子の茶が美味しいです!」とか言うのは馬鹿にしているにも程があり、標高が高ければ高いほどウマイと力説されてしまいます。

ワイン好きが、「ブルゴーニュが美味しい」と言わずに「ヴォーヌ・ロマネ(コート・ド・ニュイ)のクロ デュ シャトーが美味しい」と言うように静岡茶もまた村名で細分化されています。その上で、やれ手摘みだ手揉みだ、やぶきただ交配種だ、土壌は〜などと語っているのです。

筆者が衝撃的だったのが、静岡市のとある場所でお婆ちゃんが「うちで作った今年の新茶があるから飲んでキナぁ〜」とお茶を出してくれました。
それがなんと「濁ってる!」(深蒸しなだけ)

「しかも甘い」

なんじゃこりゃぁ~と思いながらお茶を頂きました。
実はこのお婆ちゃん、結婚で静岡市に来たものの出身地は牧之原市で、牧之原で作った新茶を出してくれたようです。通りで深蒸し茶で甘みの強いわけだ…と思いました。

つまり、静岡市以外でも同じように「自分の作ったお茶が一番」と思っているのです。
ですので静岡に旅行したときは迂闊に「静岡茶が好きなんです!」と言ってはいけませんよ。

出てきた緑茶を飲みながら、「うんうん」と分かったかのように頷く他にないのです。

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About Author

1989年 静岡市生まれ 2018年の遅い上京で港区民になりました! プロフィールはこちら

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