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ランス美術館展コレクション、コローから印象派へ

I bless the rains down in Africa!
今日は天気が良いのでTOTOのアフリカを大音量で流しながらカミーユ・コローの絵画を眺めています。
え?ロマン派音楽?ノンノン、やっぱ心地よい夏の始まりは1970年代ロックに限るね。

つい先日「ランス美術館展コレクション コローから印象派へ」を見てきたので簡単に感想を書いてみたいと思います。実は数年前に静岡市立美術館でランス美術館展を見たことがあるのですが、そのときは「ランス美術館展 美しきフランス バロックからフジタへ」という名目で藤田嗣治とランス(シャンパーニュ)の繋がりについて勉強してきました。

今回は日本で人気の印象派のちょっと前の時代に焦点が当てられています。

カミーユ・コローは印象派が生まれる過程で重要な役割としたのに、日本では何故か人気が低くカミーユ・ピサロより無名です…。

カミーユ・コローのココが凄い!

「帝京平成大学のココがスゴイ!」あのファミマで無限に流れているやつね。
めちゃめちゃ雑に紹介すると、カミーユ・コローは当時フランスで評価されていなかった風景画を田舎に足を運び、そこで絵を描いたことです。

当時は宗教画こそが正義で、風景や人物画でも神話をモチーフにした壮厳な絵こそ価値があるものとされていました。
風景画なんてしょぼいしょぼい、とされていたのですがパリから南東約60kmにあるバルビゾン村を中心にしてキャンバスや画材を屋外に持ち出して描写したといわれます。
それまでは染料がアトリエで調合しないと作れないもので、屋外の持ち出すには豚の膀胱を乾燥したものに詰めたり、それを塞いだりと難しいことでした。それがチューブ型の絵の具が発明されて、パリ郊外の鉄道も整備されたので、散歩がてら外で絵を描こう!とやってみたら良い感じに描けたというワケです。
産業革命で都会の生活に疲弊していた人々が郊外の田舎の絵を見て癒やされるという流れもあったそうです。

フォンテーヌブローの森の端にあるその村で活動する作家は「バルビゾン派」と呼ばれて彼らが後世の印象派の骨格を作ったとさえいわれています。

19世紀風景画の先駆者の方が細かな技法

この展示会ではカミーユ・コローに影響を与えた人物として「アシル=エトナ・ミシャロン」や「ジョルジュ・ミシェル」「ジャン=ヴィクトール・ベルタン」の絵画が冒頭に展示されています。
戸外での制作、人物を風景に溶け込ませる技法、田舎へのノスタルジーを表現、このようなことが評価されました。

Jean-Victor Bertin , Paysage 1820

この絵画を見て、これが印象派につながるとは思えないですね。
拡大して森の部分や川や奥の山など細部を観察してみると、細い筆で影や光を丁寧に描いていることが分かります。
望遠レンズで撮影したような圧縮された奥行きと、奥の山が霞んでいることなど遠近法が確立されています。
そして構図としては左右に見切れた木々があり、それらは暗部の上に光が差し込み葉の一枚一枚の艶やかさを描写しています。

写真や画像だと分からないのですが、実際の絵画を見ると右の森にも何色もの調合した暗い色を足して奥行きのある絵に仕上がっています。技法や構図、細部の書き込みにしても印象派より19世紀風景画の先駆者や、バルビゾン派の技法が細かいことが分かります。

未完成な完成品が印象派

展示が1階2階と分かれているのですが、初期の印象派と分類されるウジェーヌ・ブーダンになると技法に変化があります。平面的でクロード・モネのそれに近いことが見て取れます。筆のタッチからルノワールといわれても勘違いしてしまいそうです。

Eugene Boudin , Sur la plage de trouville

ウジェーヌ・ブーダンは海岸や海、空をモチーフにした作品を数多く残していますが、それまでの圧倒的なかきこみと影による幻想的な表現を排除して、フィルムカメラで撮影した写真のような平面的な絵を仕上げています。

後半になるとクロード・モネの作品も展示されていて、人だかりができていました。
「ベリールの岩」も良いのですが、モネ本人のイマジネーションに影響されすぎて抽象化された作品は、カミーユ・コローと比べ、さらに心を動かされる絵か?と聞かれればNOと答えます。
進化しているかという質問にもNOと答える

Claude Monet , les rochers de belle-ile

絵画は好みなので誰がどんな絵が好きでも構わないのですが、有名なモネの絵だけをありがたがって鑑賞して、前半のベルタンをあっさり素通りしてしまうのは余りにもったいないと言わざるを得ません。

そんなワケで、晴れて無事「カミーユ・コローはいいぞ」おぢさんが誕生したのです。

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