リナシメントでは輸入車やガラスなど高額な物を紹介することが多いですが、もっと身近な物で何か無いか、考えてみました。500円で実現できる贅沢が有るのか、シリーズ連載してみたいと思います。
1回目は「国産の唐辛子」。私は国内を車で旅行するのが好きですが、その楽しみの一つに道の駅があります。道の駅はご当地の食材や名産品を売っていることが多く、手頃な価格で現地の直売品を入手できるという楽しみがあるのです。
野菜の形が不揃いだったり、現地のお婆さんがビニール袋に詰めただけの物だったり、粗末に見えるものでも味は一級品ということもしばしば。
その道の駅で何度か唐辛子(鷹の爪)を買って家で料理をしていたのですが、地域によって味が少しずつ違います。共通していえるのは国産の唐辛子のほとんどが香りが良いということです。たいてい使い切りの5~10本入で180~300円程度が多く、何袋か買うのですが数ヶ月で使い切ってしまいます。
最近の買い物で失敗したのが、自家製牛肉土鍋麺を作る時に大量の唐辛子が必要で、中国産の大袋を買ったのですが香りが乏しく別の香辛料と思えるような品質でした。反省して、ネット通販で国産の鷹の爪を買ってみたので実食してレポートしてみます。
アマゾンでは2種類しかない?
「国産 鷹の爪」と検索すると、楽天市場では岐阜県産など4~5種類ほどが販売されているのですが、アマゾンでは2種類しか取り扱いがありませんでした。国内に唐辛子を生産している農家が数百、数千以上存在してもおかしくは無いと思うのですが、現地だけで流通しているのか、はたまた加工されているのか分かりませんが選択肢が少ないという印象を持ちました。
やまつ辻田国産特上たかの爪
1つ目は「やまつ辻田国産特上たかの爪」という商品です。商品価格は270円(+配送料 211円)で送料込みでもワンコインに収まります。
裏面には「国産特上たかの爪。色、辛味、香りが特にすぐれた、希少価値の高い国内産100%のたかの爪です。たけのこのあくぬき、らっきょう漬け、ピクルス、中華料理等、従来の使い方の他にプロのイタリアンの香り、辛みづけにも最適です。」と紹介されています。
内容量は7g、製造者は株式会社やまつ辻田、大阪府堺市の会社です。公式サイトには以下のようなフレーズが紹介されています。
昔、秋まつりの頃、泉州地方の農家の庭一面に赤いたかの爪が干されました。「一升瓶にいっぱいちぎって一銭もらった」とお年寄りは話してくれます。大正四年の米国農産物展で「優秀賞」を受賞しました。https://www.yamatsu-tsujita.com/product/takanotsume.html
国産と表示されていますが、実際には京都府舞鶴市や大阪府泉州地方で生産されたものを中心に製品にしているのかもしれません。同社の輪切り唐辛子は、「昭和30年頃、八房系品種より分離され50年もの間、国内採種・選抜された ●非常に香り高く ●辛味の強い品種 ※カプサイシン含有量は外国産の1.5倍です。 堺 やまつ辻田工場にて1本づつ手作業で裁断され色鮮やかに焙煎。 賞味期限よりすべてのロットに対し、トレースが可能です。」と記載があるので、こちらも八房系品種より分離され50年もの間、国内採種・選抜されたものかもしれません。
九州産100%使用唐辛子 希少な国産 乾燥品
二つ目は「唐辛子 からみ 10g×2袋 九州産100%使用 希少な国産 乾燥品 ホール」。こちらは2パックセットでの販売で760円配送料無料。セット販売で500円は超えてしまうのですが、1パック当たり380円という低コストな商品です。
からみ エヴァウェイ株式会社 熊本県熊本市にある会社です。公式フェイスブックには以下のように紹介されています。
唐辛子日本一プロジェクトの「からみ」を筆頭に「九州産」にこだわり食の種を咲かせています! 生産量・品質・味、いずれにおいても日本一となれるよう、取り組んでいます。https://www.facebook.com/syokunotane/
ウェブサイトを見てみると「からみ」というのは組織名のようで、九州一体を中心として、唐辛子農家のコミュニティを形成して、その中でご当地唐辛子を盛り上げよう!というコンセプトを元に活動しているようです。産地のこだわりページには「播種・育苗」から「定植」、「育成・収穫・入荷」など生産の流れを公開していたり、トレーサビリティ、生産の一貫、安全性など様々な情報を公開しています。
パッケージがシンプルすぎて、このこだわりが購入者に伝わっていないのが勿体ないと思えるほどです。
実際にウェブサイトを見ると、どれだけ丁寧に生産されてきたかが分かります。実際に熊本を含む7県のどこで収穫されたか不明ですが、信頼のできる唐辛子販売者といえそうです。
ここからは、この2種類の唐辛子を実食してレポートしてみます。
左右に分けてランダムに4本ずつ出してみました。左が「からみ」右が「やまつ辻田」です。
形状が全く異なるのが見て取れます。
からみは鷹の爪として一般的な形状で、八ッ房とうがらし品種のように少しふっくらした房で果肉が厚く、ヘタの処理が行われています。公式サイトでは全て手作業でヘタを取っていると記載がありました。
対照的に、やまつ辻田の唐辛子の品種は、熊鷹唐辛子のような形状で、長細く厚みはなく、ヘタや枝が残っている状態です。
からみは色ムラが少々ありますが、形はだいたい同じで壊れているものは少なくヘタの処理も丁寧です。
やまつ辻田も、形状は似たようなものが多く、壊れているものもなく枝の長さも均一にカットされています。
からみの唐辛子の香り、実食は?
実際に味の違いを比較するために、中国産の1000gの唐辛子も参加させて検証してみました。
暴力的なほどに大量の唐辛子が入っている中国産商品……。業務用と書いてあります。
1000gで1,590円なので、100gで159円、10gで16円という驚きの安さです。
今回は生食と、胡麻油での加熱の2種類で比較してみます。
まずは生食の味の比較。
からみの唐辛子を生食
齧ってみると、炒ったアーモンドのような甘い香り、その後にコロンビア産コーヒーのような甘い香り。
食べた瞬間は、あれ?甘い?と錯覚するけど、その1~2秒後にはドン!と辛さに襲われます。
平面的な辛さがジワジワ続く感じです。
やまつ辻田の唐辛子を生食
青唐辛子の生のような香り、噛んだ瞬間から香りの立ち上がりも速く、鋭く突き抜けます。
その後にゴマやシシトウの生の香り。一瞬でハバネロソースのような強烈な辛味に変化します。
甘みは少なく、部屋の電気のスイッチを押した時のようにパチッ!っと一瞬で辛味が来ます。
新鮮な黒胡椒の粒を、奥歯で噛んだときのように弾け出てくるのが特徴的で、突き刺さる感じの辛さ、少量でも劇的に辛味を感じます。
謎の中国産 業務用・四川唐辛子
噛んで見ると少し甘い、図書館の本みたいな古書の香り。紙のようなにおいで唐辛子の甘い香りはありません。
辛味は優しくマイルド、辛味の成分は少なく、数ヶ月放置したコーヒー豆を噛んでいるような風味です。
次に加熱調理して実食してみます。
本来であれば分けないと香りが混ざってしまい厳密な比較ができないのですが、分けて炒ると火力や時間、温度の変化、食べるまでの時差があります。そこであえて同時に調理してみました。
九鬼 ヤマシチ純正胡麻油を、鉄のフライパンにひいて煙が立つまで直火で加熱します。そこに二種類の唐辛子を投げ入れ、香りが出た瞬間にモヤシを追加して10秒ほどで皿に盛ります。あとは輪島の塩を軽く一振りして完成です。
食べる前から分かるのが、”無敵の共演”ということです。シンプルな材料を組み合わせるというのが、いかに大切か実感しました。油と唐辛子とモヤシ、塩だけで美味しい料理になるとは思いもしなかったのです。
化学調味料や中華ダシ、ウェイパーなどを入れなくても唐辛子由来の複雑な香りが立ち上り、本格的な中華料理店のような匂いがキッチンに充満します。折角なので熱いうちに実食比較してみます。
からみの唐辛子を加熱+モヤシ
炒めるとコーヒーのような強いコクが引き立ちます。それも上質なコロンビア産のナッツやカカオのような香りがするコーヒーに似ています。そして信じられないことに火を入れることで、やまつ辻田の関西の唐辛子よりも辛く感じるのです。
強烈な辛味が加熱によって香りとともに引き立ちます。
やまつ辻田の唐辛子を加熱+モヤシ
焼くと更にドライになり、辛さがキレの良くなります。日本刀のようなキレの良さで、一撃にして辛味にやられます。
中華料理やタイ料理、インド料理など様々な辛さを経験してきましたが、この一撃は非常に鋭いです。
憎めないのが、噛んだ瞬間にサクッとして焼きたてのクッキーのような甘い香りが漂うことです。
これは新たな発見で生食では感じなかった甘い香りが加熱によって引き立ちます。
どちらが美味しいかは判断不能
両方食べてみた結果は甲乙つけがたく、一長一短で、好みや用途によるとしか表現のしようがありません。
1,000円で両方の唐辛子を買ってみて、白菜の浅漬、炒めもの、ペペロンチーノなど様々な料理で比較したら楽しみ方は無限大です。少なくとも大量に売られている安い中国産は二度と買わまいと心に誓いました。
ニンニクなども同じ事がいえますが、量より質です。この美味しさならば100本の中国産より1本の国産を取ります。
いやはや、料理の奥は深いなぁ〜と思いながら、胃の痛みを耐える三十一歳のはっしーでした。(おわり)