「”合理的”で美しいワイングラスはZWIESEL(ツヴィーゼル)のハンドメイド」を書いてから4年ほど経ちました。
今日はワイングラスについて気づいたことを書き留めてみます。
34年間生きていると色々なことが起こりすぎて、疲れが溜まるようです。
ここまで生きてきて気づいたのが、(多分)ガラスを収集するのが好きということです。
最近見たTwitterの漫画で「ティファニーのワイングラス」が高級グラスとして描写されていたのですが、「確かに高級グラスだよな〜」としみじみとした気持ちになりました。作者を馬鹿にする気にはならず、私自身も初めて愛用したグラスはティファニーのワイングラスでした。
よほどワイン愛好家のもとに生まれない限り、引き出物のカタログギフトなどでも貰えるそのグラスが家で一番良いものになりそうです。今、思えばOEM生産されたクリスタルグラスで、リーデルの入門用の2000円程度のグラスと同品質ですが、均一な薄さで鉛が含有された透明感の高い輝きは、13歳の心を奪うには十分なものでした。
そんな訳で20年かけて徐々に収集をして、世界各国のグラスを手にすることになりました。
ZWIESEL(ツヴィーゼル)のグラスは?
正直ツヴィーゼルのグラスは、色々とやった上級者向けな気がします。
上級者というと変ですが、輸入車でいうボルボのような立ち位置です。
例えばワイン愛好家として片足を突っ込むと、最初の一脚はリーデルのオヴァチュアなんかを選ぶのではないでしょうか。
1客1,500円から選べて、それでいて本格的なデザインと質感は、マニアであっても納得できる仕上がりです。
そこから、ヴィノムやヴェローチェなどの造形の優れたマシンメイドに憧れ、愛好会にそそのかされて、スーパーレッジェロやソムリエなどのハンドメイドに。はたまた、百貨店でシュピゲラウの形状に惚れてしまい、その後にステップアップでザルトやロブマイヤーまで来る人もいるはずです。
都内だと木村硝子のピーヴォやサヴァなど選ぶ洒落た人もいるかもしれません。
とにかく、ツヴィーゼルをいきなり選ぶ人は少ないのです。
なんというか、車の免許を取っていきなりボルボのV90とか買おうかな〜って人が、あまりいないように、他のものを体験したあとに行き着くのではないでしょうか。
最高級グラスと何が違う?
ワイングラスの最高級というのは2種類存在します。
ひとつは芸術に寄ったグラスです。バカラやサンルイ、ラリックのような荘厳な造形で圧倒されるものです。ワインの香りや味わいというよりはパーティや会席など厳格な儀式を優先したデザイン性の高いものです。もう一つは、香りや味わいを最大限引き立てるものです。ロブマイヤーやリーデルのソムリエ、木村硝子のグラナダなんかは形状も美しく、それでいて性能も高いです。
そこから逸れたものは古美術ガラスです。ヴァルサンランベールのアンティークや、ロブマイヤーの四葉など、100年以上前の希少なグラスを楽しむ人も居ます。他にもオルフェスやコスタボダなどありますが話がそれるので飛ばします。
ツヴィーゼルの立ち位置としては、どちらかというと現行のロブマイヤーのように、香りや味わいを重視したものが多いです。
シェイプは美しいですが、彫刻などはなくシンプルなデザインになっています。
例外的にデザイン性を高めたものが、こちらのAIR SENSE(エア センス)というハンドメイドシリーズです。
スウェーデンのカール・フィリップ ベルナドッテ氏とオスカル シルベリ氏のデザインデュオとのコラボにより生まれた、斬新なデザインと高機能を両立した新コレクション「AIR SENSE」。
使い心地の良いグラスの形状とともに、クリスタルガラス自体の“美しさ、軽やかさ、薄さ” に重点をおいたデザインは、シンプルでありながら凛とした調和を感じさせます。
また、AIR SENSE では、デカンテーション スフィア(デカンタ効果の機能を持った球体)を追加することで、より機能的にデカンタージュ効果が得られます。
出典元:https://zwiesel-glas.co.jp/collections/air-sense
この紹介文にあるように、中の球体(ボール)は美術的な美しさと、デカンテーションの機能を両立していると言われています。
効果のほどは謎ですが、均一な薄さでありながら、どこか歪な不完全さを併せ持つハンドメイドシリーズとして最高峰のグラスといえます。
ワイン愛好家であっても、リーデルのハンドメイドやブラックタイこそ至上。または、ロブマイヤーのバレリーナこそ至高、と考える人が多いのえ、このエアセンスに辿り着く人は色々やってみた人といえそうです。
世の中には無数のお金の使い方がありますが、このグラスに3万円以上出すのは、もはやグラス道楽をやりきった人でしかありません。買ってしまった私でさえ、これに3万円の価値があるのかは未知です。
価格と実用性のバランスが良いのがこの、THE MOMENT(ザ・モーメント)旧”WINE CLASSICs SELECT”(ワイン クラシックス セレクト)シリーズです。
1客16,500円〜でハンドメイドの美しさと、香りや味わいのバランスを楽しむことができます。左からシラー、シャルドネ、シャンパンです。ステムは極限まで細く、プレートの厚みも薄く、それでいてボウルは下に向けて膨らみがありノーズ部分はきゅっとしまっています。
リーデルには、この形状が少ないですが、ときに気難しいワインはこの形状だと香りが感じ取れるものもあります。
もう一つ美しいシリーズがこのエノテカ。
最初はワインショップとのコラボだと思っていたのですが、イタリア語から取っただけのようで、独立したシリーズです。
ロゼワイン用ですが、グラスの膨らみ方と口元の返しのシェイプが美しく、ワイングラスを眺めながらワインを飲めるほどです。
私はロゼワインを飲まないのですが、あまりのグラスの形状の美しさに一目惚れしてしまいました。
こちらはシャルドネ用グラス。
今まさに、これで安いワイン、M.シャプティエ サン・ペレイ ブラン レ タヌールを飲んでいるのですが軽量で持ちやすく、ボウルとのバランスがよく香りもキャッチしやすいです。今までリーデルこそ……と思っていた節がありますが、正直ツヴィーゼルでええやん!感はあります。値段が難点で、定価だと1客1万円以上するようです……。
こんなに美しいものを所有していいの!?と思えるほどに素晴らしいです。
心が満たされるというか、飲んでいないのに満足してしまいます。
34年間生きてきて驚いたのが、この「アッローロ / ウイスキー ノージング グラス(蓋つき) 294ml / ハンドメイド」です。
今まで蒸留酒のグラスに納得できていなかったのですが、このアッローロは本当に素晴らしいです!!
二度とグレンケアンで飲むことがないと思えるほどに、蒸留酒の香りの広がりが素晴らしいです。リーデルのスピリッツも良いグラスですが、格別にヤバいです。
今まで飲んでいたウイスキーやラム、グラッパが別物に変化します。その代償といってはアレですが2万2千円します……。
その価値があるといえます。
最後にこの着色グラス。
ツヴィーゼル トゥギャザーというシリーズですが、色付きなのに薄くて、口当たりもよく可愛らしいです。
麦茶を入れても、水を入れても何を入れても素敵で、高級なフレンチで出てきそうなデザイン性です。
最近では雑貨屋さんにも似たようなものは多いですが、やはりグラス製造の本家は違います。
重さや形状のバランスが良く、使っていると心地よさを感じるほどです。
今まで、さんざん世界のグラスを使ってきましたが、ツヴィーゼルは本当に素晴らしいです。
グラス愛好家やワイン愛好家のためだけにしておくのはもったいないほどです。
初めての車がボルボでも良いようにまた、グラス初心者でもツヴィーゼルのハンドメイドはオススメできます。
ただ、このグラスが普通になってしまうと、今後出会うグラスに対しての評価が厳しくなってしまうというデメリットはあるかもしれませんね。
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