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限られた予算の中で美しい魅力的なグラスが欲しい!というのであれば、このZWIESEL(ツヴィーゼル)の他にないでしょう。リーデル・ソムリエよりも安く、リーデル・ヴィティスよりも美しいグラスがドイツにはあるのです。
1脚6~7千円で手に入る美術品
ワイングラスに1脚7千円!? 高すぎる!と思うかもしれません。
美術品と呼べる美しさのグラスは世の中に多数ありますが、その中でも最も安い美術品”級”のグラスはと言われればZWIESEL(ツヴィーゼル)のハンドメイドを推します。国産で木村硝子という玄人好みのグラスメーカーもありますが、ここの6千円のグラスも非常に美しいです。簡単に手に入る、色々な百貨店に置いてあるという理由からZWIESELのグラスはお勧めできます。
ワイングラスには大きく2種類に分けて、ハンドメイドとマシンメイドがあります。筆者の知る限りでは大手メーカーの中で6千円以下でハンドメイドのワイングラスを売っている所はありません。
職人が手作業で膨らましたりカットをしたりするグラスは工芸品のような美しさを併せ持ちます。
このステム(持ち手)を見て下さい。非常に薄くまるで飴細工のように細いです。
美しいグラスの簡単な見分け方の一つにステムの細さと、精密さがあります。
では2~3千円で買えるリーデルの入門用グラスはどうでしょうか。
グラスを見て分かる通りいくぶんか太く、バリがあります。バリとは型抜きをするときに残るあとで、例えるなら鯛焼きのパリパリの部分です。上下で挟んだときに鯛焼きのパリパリの部分は生まれますが、同じようにグラスの型抜き後も残ってしまいます。最近のマシンメイドは優れていて、細くてバリの無いものもありますが、それでもハンドメイドのステムは持っていて気持ちの良いという一言です!
もう一度、ZWIESELのワイングラスを見てみましょう。
艷やかで美しく、ワインを注いだあとにも「クルッ」と回してみたくなるような美しさです。
次にボウルの部分を見て下さい。風船というより、風鈴…、シャボン玉のようでしょうか。
とにかく薄く透明感が高く、”液体”のようなニュアンスを持ち合わせます。
本当に美しいグラスは何も入っていなくても、グルグル回して光に当ててしまいたくなるのです。
素材の違いですが、工芸品という意味では鉛を30%以上含んだフルレッド・クリスタルグラスが美しく、彫刻やカッティングを施すのに適しています。しかし、薄さと軽さという面ではカリガラスや無鉛クリスタルガラスの方が優れています。
このツヴィーゼルは「無鉛クリスタルガラス」です。ロブマイヤーは「カリガラス」、サンルイは「クリスタルガラス」です。鉛の含有量や代替品によって名称やガラスの特性に変化があります。
非常に簡単に説明すると、クリスタルグラスは重くて厚くてカッティングに向いている、その他は薄くて透明と言えます。鉛の入ったクリスタルグラスはカッティングを施すと虹色に、スワロフスキーのように輝きます。それ以外は基本的に虹色には輝かず、白黒の輝きになります。
ワインの香りを立てるには薄さ
もし繊細なブルゴーニュ、ヴォーヌ=ロマネの香りを最大まで楽しみたいのであれば、できる限り薄くボウル部分が膨らんでいるものが理想的でしょう。
色も正確に見ることができて、香りの膨らみも良く、さらには外気の温度に慣れるので、冷やしたワインを入れておけば緩やかに暖まって香りが広がってきます。
味とワインの学問という観点から言えば、ツヴィーゼルやロブマイヤーのバレリーナ、リーデル・ソムリエなどが優れている事は間違いがありません。
ワインを飲むシチュエーションに意味を持たせたい場合
装飾を施された重厚なクリスタルグラスはどうでしょうか。
先ほどの薄く透明なグラスより劣っていると言えばそうではなく、”ワインを飲むシーン”に合わせて装飾されたグラスは選ばれます。
例えば下の写真はサンルイ・エクセレンス Saint Louis Crystal – Excellence のウォーターグラスです。
本国のフランスでは1脚で7~8万円します。日本では10万円以上のプライスが付くことでしょう。
サンルイのハンドカットで仕上げられたグラスは400g近い重さです。とても片手でひょんと持ち上げられる重さではありません。ステム(持ち手)の模様も全て手作業でカッティングされています。
こういった豪奢で重厚なグラスは、式典・祭典・パーティーや記念日など特別な時に用いる”ハレの食器”と言えます。日本人でいう、真っ赤に金で装飾されたお節などに使うお重のようなものです。
「では、○○と○○の達成を記念して乾杯!」などという時に、非常に軽量なツヴィーゼルよりも重厚なサンルイの方がシチュエーションに合っています。
または重厚なMahogany Room(マホガニールーム)の書斎に通されて、「ウイスキーでもいかがかね?」とデキャンタの酒を勧められる時には、モーゼルやサンルイ、バカラのようなクラシックで重厚、華美な装飾がされたものの方がしっくりきます。シチュエーションによってワイングラスも分けるべきなのです。
ワイングラスの比較
ここで今手元で直ぐに出せるワイングラスを比較してみます。
実はこの検証にはあまり意味が無く、ワイングラスのグレードや価格帯が異なっていたり、用途が違いシャンパーニュ用や白ワイン用など様々なものが混じっています。
しかし、グラスによってどのように厚さが違うかなどを参考にしてみて下さい。
左からロブマイヤーのハンドメイド、ツヴィーゼルのハンドメイド、ツヴィーゼルのマシンメイド、リーデルのマシンメイドです。「ステム」と「ボウル」の部分に着目してみて下さい。ここが滑らかにつながっている一体型のグラスは良いものです。一番右のように、後から接着しました!というグラスは低価格な傾向にあります。
今度、居酒屋や雑貨屋さんにあるワイングラスを見て下さい。このボウルとステムの部分が雑に接着してあるはずです。
一方で左のロブマイヤーを見て下さい。”バレリーナ”とういう名の如く滑らかに水滴のようになっています。
グラスマニアであれば何十分も眺めれいられる逸品です!しかし残念ながら1脚2万円以上するので、貴族で無い限り一式揃えるのは難しいことでしょう。
次にステムとフットプレート(底部分)を着目して下さい。驚くことにツヴィーゼルは6~7千円にも関わらず、とても薄くあたかもロブマイヤーのような仕上がりです。これはコストに対して優れているプロダクトと言わざるをえません。
リム(口の部分)も左のロブマイヤーは一周美しく一定の厚み、驚くのがツヴィーゼルが更に薄いということです。これならば繊細なワインの味の違いも直ぐに分かるはずです。
ということで、如何に「ツヴィーゼル」がコストパフォーマンスに優れているか分かりましたでしょうか。
コストを含めた、合理的な美しさを求めるならば「ツヴィーゼル」がお勧めなのです。
今回紹介はしていませんが、対極にある”不安定さ”、”不完全な美しさ”という芸術的な域を好むのであれば木村硝子がお勧めです。