昨夜、ラリックの香水瓶がヤフオクに出ていると紹介しましたが、実は現行品のラリックのグラスを初めて購入しました。以前、「クレール・フォンテーヌ」という鈴蘭の形をした可愛らしい香水瓶を手に入れましたが、グラスを買うことは無かったので初めての体験です。そんなラリックのグラスについて紹介してみます。
カッティンググラスが飽きてきた人にお勧め!
実は今までラリックのグラスを過小評価していて、自ら買うことがありませんでした。私は10年ほどガラス収集を趣味にしていますが、ガラスブランドの最高峰といえば「サンルイ」と「ヴァルサンランベール」です。この2ブランドに関しては、1日1,000件以上もネットサーフィンで調べてしまうほど何百時間と趣味で見続けてきました。入手したグラスも合計で100個以上を超すという熱心な収集をしています。
「バカラ」のグラスも数多く入手しましたが、共通しているのはクリスタルガラスの質感です。薄手で透明感が極めて高く、鉛を多く含んだフルレッドクリスタルは指で弾くと金属のような高い音を奏でます。
それだけでなく精緻にカッティングの装飾やグラヴィール模様が施されたグラスは、工芸品という名前では収まらない美しさです。特にサンルイやバカラは時代によってカットやガラスの品質が異なり、その違いもまたコレクションの収集欲を満たしてくれます。
ラリックは地味な型抜きで「香水瓶」を使って飲んでいる感覚
ラリックはそれらのフランス有名クリスタルブランドと少し異なり、カッティングを施しているものはほとんど存在しません。基本的に型抜きと表面のフロスト加工がブランドを体現しています。
型抜きというのは、炉で高温に熱したガラスを金属の鋳型などに流し込み型を抜くという作業です。上記のYoutubeを見ればイメージが掴めると思います。この動画に出ているのは中でも高級なモデルですので、量産されている廉価なグラスは別の工程で流れ作業でつくられているはずです。
一つずつ手作業で仕上げるカッティンググラスと比較すると、フロスト加工のラリックは量産品というイメージが強いのが分かるはずです。このユロット酒グラスを何個並べても、同じ時期に作られたものであれば寸分たがわず同一の仕上がりなのです。
それでいながら値段は超一流。ロックグラスであれば1つあたり3~5万円と、バカラのアルクールを上回る販売価格です。このような地味な仕上がりなら、いっそ北欧のコスタボダやオレフォス、ホルムガードの方が費用対効果が良いです。
実際に使うとラリックの良さが分かる?
実際に入手して初めて使ってみたのですが、「思いのほか良い!」と図らずも感動してしまいました。まず手触りが滑らかで、凹凸の造形があるにもかかわらず握りやすいのが不思議な感覚です。
ガラスの質感も高く氷の当たる音や、ガラスコースターに置くときの音はまさしく高品質のクリスタルガラスの音です。
コースターとして使っているガラスはご存知VLS(Val Saint Lambert)です。こちらも型抜きのフロスト加工で、どうやら1990年代頃に百貨店の贈答品として数多く流通していたようです。草花をモチーフにしていて、美しいです。レリーフではなく、インタリオ(沈め彫り)の技法ですが面白いことに反転して完成するようになっています。
裏返すと粗末なお土産物のようなサンドブラスト加工に見えますが、上に向けておくと上記のような立体的な奥行きのある花に化けて、光が当たる部分に白くハイライトが入っています。
え?光の魔術師はヴァルサンランベールの方だって?
まあ私はヴァルサンランベールの熱心な信者ですので、贔屓目ではそういうことになりますね!
とはいえ、ラリックのグラスで酒を飲むと香水瓶で飲んでいるような錯覚でたいへん贅沢な気分になれることもまた事実。こうしてまた、新しいガラスの沼に沈んでいくのであった……。(おわり)