【裁判傍聴ノート】知的障害者の男は法で裁かれるのか

一人暮らしの教科書

実際に存在する事件なので、プライバシーに配慮して登場人物や内容をボカしつつ何が問題だったのか考察してみます。

現住建造物等放火罪

江戸時代の火付盗賊改方から今まで日本でやっちゃだめよランキングに入る重罪。他人が住んでいる家に火を付けるというのは殺人と同等に重い罪なのです。※現住建造物等放火罪の法定刑は死刑、無期懲役、5年以上の有期懲役

いたずら半分でも現住建造物等放火罪に当たるので、殺意を持って火を付けると殺人罪と観念的競合として重い刑罰になる可能性があります。

世の中どうなってる!?どうしようもない知的障害者

佐賀県E市に住む山田太郎29歳男性は、被害者女性の花子が住むアパートに訪れ、玄関ドアからエタノールを流し込み火を付けた。室内にいた花子の兄が急いで消火し、そのまま玄関前にいた太郎を取り押さえて警察に引き渡す。
太郎は軽度の知的障害を患っているのもの、就労継続支援A型の事業所で出会った花子と交際を進め、2年前に未婚のまま花子を妊娠させ子を出産。その後も両親の公認のまま交際は続けるものの、結婚もせずに子供の認知を拒否、子供の世話をせずに養育費も支払わないことから花子の母が実家に子を引き取り育て、その後は両者の関係を解消。母子に会えないことに逆上した太郎が、腹いせに放火して殺すことを計画する。「奥さんのことを忘れたい」という短絡的な理由でドアからエタノールを流し込み放火。

担当医師による精神鑑定では、幼少期からの「てんかん発作」が原因でストレスによって本件の犯行動機になった可能性は否めないと、やや弱気な鑑定がされました。IQ50相当の知能指数と軽度の知的障害で、言語野は問題ないものの思慮や筆記の能力は浅いと証言しました。

それに対する検事の反対尋問では、ネットゲームのチャット履歴を甲号証として提出して「このゲーム中のやりとりでは、十分な会話能力を持っているように見受けられますが」と指摘しました。担当医は「スマートフォンなどの自動変換機能により、複雑な文章構成ができた可能性がある」と濁しつつ応答しました。

知的障害者だからといって正しく裁かれるべき

あまりにひどい裁判でしたが、途中まで見学してしまったので退出するタイミングを見失い最後まで見てしまいました。
個人的な感想ですが、日本では知的障害者がタブー扱いされて、過度に保護するような風潮があります。
しかし本件の被告人は、就労して知り合った女性と子供を作り、結婚どころか認知さえしないまま育児放棄、養育費の拒否。巧みにスマホゲームで遊びつつ、自分を拒否した被害者の女性を逆恨みして火をつけて殺そうとしたのです!
「忘れたいなら自身がアルコールをかぶって火をつけろ!」と法廷の傍聴人席で叫びたいような事件でした。

前科こそないものの前歴4件の被告人に対して、担当医師は「今回の事件の重さを受け止め、社会復帰こそが被告人の最善」と処遇を求め、フィリピン人の母親は「こんな事をする子ではない」と情状酌量を求めました。しかし本件は悪質極まりなく強い殺意を持った犯行で実刑を受けるべきです。

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