バーで黙々と飲むウイスキーとして最高の選択と言えばカリラ。
もちろんライフロイグやボウモア、アードベッグ、ラガヴーリンも男の中の男が黙々と飲むのに適しているけれど、カッコつけすぎ感があります。
白い髭を蓄えて「この道40年アードベッグしか飲まないですけど?」とう面構えであれば、アードベッグを飲めば良いのです。
カジュアルなオヤジなら「グレンリベットちょーだい!」これは分かる。陽気なオヤジがグレンリベットを何倍もおかわりする。これはかなりイタリアっぽい。
カッコつけ過ぎずに、バーカウンターの隅で黙々と飲むのには”カリラ”が最適なのです!
カリラとは何!?
カリラというのはアイラ島の北東にあり、ジュラ島の対岸に位置する蒸留所です。
アイラの中でも生産量は多く、塩っぽくスモーキーな香りが特徴的なウイスキーです。
バーで迷う素振りを見せずに「カリラ下さい」と言えば、「カリラかぁ〜」ときっとマスターは悩まします。約40%の店にはカリラが無く、残りの55%の店には12年のカリラがあり、残りの5%の店にはウマいカリラがあります。もし店に入りこのカリラ12年しか無ければ、1杯飲んで店を出ましょう。
「どのカリラになさいます?」
こんな返事が来たら、そりゃもう良いバーで信頼を置くに値する店です。
中には5~6本カリラを置いている店もあり、何度行っても飽きさせません。
しかしカリラと言ったのに、”Port Askaig(ポートアスケイグ)”と書いてあるウイスキーが出てくる事もあります。安心して下さい、これはカリラの港町から僅か数100メートル南にある漁港で、中はカリラで作っていると言われています。
塩っぽさは少なく、ボリューム感のある飲みごたえです。ロックやハイボールにしても美味しさを引き立てます。ポートアスケイグは手頃で6千円から買うことができますので、12年のカリラを買うくらいであればこちらを選びましょう。
中でも格別に驚くほどウマいのは、モリソン&マッカイMORRISON & MACKAYの セレブレーション・オブ・ザ・カスクですね!販売価格1万5千円程度です。
モリソン&マッカイとは、元モリソンボウモアの取締役のブライアン・モリソンとケニー・マッカイが設立したボトラーズブランドで、中でもセレブレーション・オブ・ザ・カスクは素晴らしい品質で、どの蒸留所を選んでも外れはありません。
ボトラーズで言えば、ウィルソン&モーガンも良いですが、王道のシグナトリー、中でもCaol Ila 1974 SV なんかのビンテージも美味しいです。
年代を感じさせることなく、5月の花畑に居るような香りに包まれて、その中にもピリッと大人な辛さが隠れています。古いカリラは加水したりロックにせず、ストレートのまま飲み切ることをお勧めします。
ヴィンテージであれば葉巻を吸いながら飲むにも似合いますよ!
カリラは他のアイラ・モルトと比べて知名度が低いので美味しいカスクが適正な値段で残っている事が多いのです。
残念ながらボウモアやラフロイグは有名になりすぎて美味しい物を手に入れるには、必要以上にコストが掛かります。アイラの閉鎖した蒸留所であるポートエレンなんかは当時1~2万円で買えたものが原酒口渇のため10~20倍以上の価格が付いています。
そう考えると少し無名のカリラのボトラーズはお手頃で美味しいアイラが飲めるのです!
長期熟成ほど美味しいわけでない!
写真はウィスク・イーとモリソン&マッカイのコラボによる「スノーフレーク」シリーズのカリラ 2008年と、オフィシャルの25年。
カリラの9年と25年、どう考えても25年の方が倍以上高価で美味しいと思うはずです。しかし何と9年のスノーフレークシリーズの方が美味しいのです!
そして先ほど紹介した「セレブレーション・オブ・ザ・カスク」も10年熟成なのに、更に美味しく鳥肌が立つほどの香りです。
ですのでカリラに限って言えばオフィシャルを飲むのではなく、ボトラーズブランドの10年前後を選ぶのがベストと言えますね!
これで、名門のウイスキーバーに迷い込んでも
「私は普段カリラしか飲まないのですが…」
「ほう、どのカリラですか?」
「モリソン&マッカイとか……」
と答えれば、「コイツはかなりの飲み手だ…」となり、きっとバックバーから隠された希少な美味しい秘蔵のカリラを飲ませてくれるはずです。