ONKYO A-7VL レビュー

ミュージック

2011年3月12日に発売されたONKYOのフラッグシップ プリメインアンプA-7VL

フルサイズプリメインアンプにも関わらず、DACも搭載されているというオンキヨー特有の珍しい機種です。
現行製品でクラスが下のA-973やA-5VL(公式)、過去のアナログアンプであるA-927LTDなどオンキヨーのアンプを中心に比較をしたいと思います。
また内蔵されたDACの音質レビューと、ヘッドフォンアンプの性能や外付けDACであるHP-A7と、オンキヨーの現行リファレンスのDAC-1000を使った比較テストなども掲載していきます。

A-7VLの全体的な外観

A-7VLはシルバーのみで、フロントパネルは定番のオンキヨーのヘアライン。
表面は水平のパネルではなく、波形のラウンドが付けられています。
左右にシンメトリーに配置されたノブはA-5VL(公式)とは違い、ゆるやかに傾斜が付けられていて有機曲線風なデザインになっています。

全体的に丸みを帯びたデザインで、A-973と比べると柔らかく優しいデザインです。
A-1VLと違い 左右とも浮き出しのノブなのでシンメトリーとはいえませんが、バランスのとれたデザインとなっています。
エンボスなどは既存の製品と同じように左上にロゴが入っています。
ノブはアルミ無垢材で、バランスや高低音調整用のトーンコントロールは排除されボリュームとインプットだけという、パワーアンプに近い仕様になっているようです。
ボリュームはリモコンで操作できるために少し重いもの、十分快適に操作できます。
ただ入力の切り替えは本体のみで操作でき、リモコンでは操作できません。

デジタル入力は両方の機器の接続が確定するとLEDが点灯する仕様になっています。
CDから光入力などデジタルに切り替える際は2秒程度で確立して音が出ます。

LEDは電源と光入出力のロック・ミュートと3つあり、それぞれ青色だけれど、どちらかというと白に近い色合いを持っています。
A-7VLは今までのデジタルプリメインと比べても薄く非常にすっきりとしたデザインで個人的には歴代の機種で一番格好いいと思います。
過去の上位機種に当たるA-1VL(公式)よりも風格があり高級感を感じます。
後に書く音質を抜きにしても十分に所有感を感じられる外観だと思います。

A-7VL024

A-7VLの音質と音の傾向

最近はしばらくA-927LTDを使っていましたが、A-7VLを繋げて何曲か聞くとスピーカーを代えたかのように音が広がって聞こえるようになりました。
とにかく細かい音まで良く拾い、低音のベースなども崩れずに芯を持たせたまま伝わってくるので安定感があり、今まで聞いていたJPOPでさえもガラッと印象が変って感じました。
B’zやUVERなどロック寄りのポップスはエレキベースとドラムがきりっと引き締まって聞こえてバスドラムやシンバル類も混ざることなく分かれて聞こえます。
エレキギターはピッキング時のアタックが鮮明に再現され、パートごとのフレーズが分かれて聞き取ることができるので、楽器を演奏する方はより音楽を聴くことを楽しめると思います。
JPOPの次にジャズを視聴すると、低音が出にくいスピーカーにも関わらずリアルにベースの弾く音が伝わり、ウィリアム浩子や伊藤君子、綾戸智絵など女性シンガーはブレスやビブラートまで伝わってきます。

音の傾向はソニーのスタジオモニターヘッドフォンのMDR-Z1000のように硬いけれども、柔らかい音も丁寧に表現できる。デジタルアンプの偏見や先入観を覆すほど驚きました。
能率が高いスピーカーだと、だいたい9時にボリュームを合わせれば十分に音量を得られます。

2ヶ月程経った時に知り合いが同じA-7VLを購入したのでセットアップの前に少しだけ借りました。
何曲か聴き比べましたが、十分にエージングされた自宅のものと音質は変わらなかったのでA-7VLに関して言えば数ヶ月のエージングは音質に影響しないと言えると思います。

A-7VL029

A-7VLの入出力

A-7VLの入出力はPHONO(MMカートリッジ)CD,TUNER,TAPE(IN,OUT),DOCK
スピーカーはA-1VLと同じように1系統に絞られています。

スピーカーターミナルは小ぶりなサイズで、モンスターXPケーブルなどの定番のサイズは余裕で接続できますがコブラ6Sなどの極太のケーブルは別途バナナプラグが必要になります。
入力系統はCDからTUNER、TAPE、LINE全て金メッキになっているので、外見や精神的にも良さそうです。
デジタルはコアキシャル(同軸デジタル)と光デジタルの2系統ですので、プレーステーション3とND-S1を両方差し込みっぱなしにするなどといった使い方もできます。

デノンのRCD-M38のようにデジタル出力とアナログ出力が付いているミニコンポも多いので、両方の出力をデジタルとアナログで接続して内蔵DACによる音質の違いを簡単に聴き比べることもできます。
デジタル入力

A-7VL016

A-7VLとA-5VL,A-973,A-927LTD,CD-D1LTDの比較

言葉で表現するのは難しいですが、直感的に感じた違いを主に簡単に書きたいと思います。

A-5VL

A-1VLが販売終了してから最近までA-5VLが最上位機となっていて、こなれた価格からも市場で人気があったようです。
何度かこの機種はD-412EX(公式)とセットで視聴しましたが、音が硬く厚みが少なく表面に張り付いたような音に感じました。
クラシックになりますが、CDでブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調op.78「雨の歌」を聞いたところ ヴァイオリン独奏+ピアノ伴奏でバイオリンの後を追うようにして流れるピアノの旋律が冷たく淡々と聞こえて萎えてしまいました。
ピアノ独奏の曲で言えばA-7VLと同じように綺麗なタッチで聞こえるのですが
そういった経緯もありA-7VLは今までのデジタルアンプとは違う印象を持ちました。

 

A-973

この機種はしばらくB&W 686と繋いで音楽を聴いたりゲームをしたりしていました。
こぢんまりとまとまりがあるものの、どの楽器も細くどことなく寂しく感じてしまいます
A-7VLのように綿密な音ではないので、つい音量を大きくして聞いてしまうのですが、耳が痛くなるだけで、どことなく不足感を感じます。
プレミアムコンポーネットのCRシリーズと比べると中域から高域の伸びもありスピード感があるため打ち込み系の音楽には向いていますが、A-7VLと比べると金額的の差と比例するかのように音質も大きく異なってしまします。

 

A-927LTD

今となっては10年以上前の機種になりますが、上記の女性ジャズヴォーカルや奥華子、元ちとせ、山下達郎、山崎まさよしなど声に限って言えば格別に綺麗でA-7VLを聞いた後でも十分に満足できるほどの音質だと思います。
特にピアノ+ヴォーカルの曲やヴァイオリンは向いていて、フラットなモニターサウンド寄りのA-7VLと比べるとA-927LTDは少し味付けされた膨らんだ厚みがある音です。
山水やコーラルなど古いスピーカーに繋げても味のある優しい音なのでレコードを好む方にはA-927のようなアンプの方がよいかもしれません。
ただ最近のロックや打ち込みの音はA-7VLの方が向いているのでオールマイティーアンプでいえばA-7VLの方が向いています。

A297LTD-3

CR-D1LTD

今は後継機が出ていますが、当時オンキヨーのハイエンドコンポでした。
現在は手元にないのですが、この機種は特にデジタルアンプ=音が硬いという印象が強く、立体感が少なく低音の引き締まりが少ないのに高音域がキンキンとしていました。
後継機も家電量販店だとA-973と同じ価格で売られています。
もし予算が許されるのであれば背伸びしてでもA-7VLをお勧めしたいです。

CIMG5451

DENON PMA-2000AE

折角なのでデノンプリメインとの比較も。
デノンの2000AEの方が高価ですが、音の傾向が全く異なり2000AEの方が音が明るく壮大で迫力があるように感じます。
解像度はA-7VLの方が高く、音の分離や立体感も断然A-7VLが有利です。
ポップスやロック、音の圧力でボンボンと迫力のある音が好きな場合はデノンを選ぶという選択もあります。傾向が違うという意味で優劣はつけれません。

DSC_2072
A-927LTD A-7VL

A-7VLの内蔵DACとFOSTEX HP-A7,DAC-1000の比較

A-7VLは96kHz/24bitまでのリニアPCM信号に対応しているので、内蔵DACと外付けであるHP-A7とDAC-1000とを比較してみました。
(ONKYO DAC-1000については記事執筆中のため、写真は後で掲載します)
初めにA-7VLとND-S1を同軸ケーブルでつなぎ、iphoneでApple Lossless形式の曲を再生しました。
今まで単体のDAC(複合機ですが)を使っていたのでプリメインについているDACはおまけ程度にしか考えていませんでしたが、箱出しのままでも十分に音質が良くてONKYOのC-S5VLやサウンドカードのSE-200PCI LTDより解像度が高く、小さなパーカッションの音からシンバルの音まで繊細で小さな音まで輪郭を持たせているように感じます。
このままでも十分に楽しむことができるので、ハイファイコンポを買うのであればA-7VLを購入して、手元にあるDVDプレーヤーやPS2,PS3などのデジタル出力がある機器をつないで使えば少ない予算でも格段と良い音で楽しめます。
A-7VLのDACはウッドベースをひずむことなく迫力のある音で味付けされてないリアルな音です。
CECのDA53N(公式)というDACと同じバーブラウン製「PCM1796」が左右独立して採用されているのでプリメイン付属とは思えないほどのDACといえます。

次にND-S1とA-7VLの間にHP-A7を挟んで再生すると、薄いビニールがなくなったかのように透き通って瑞々しく、立体感も質感も確実に向上します。
試すまではデジタルアンプにはデジタルで入力するのが一番と思っていたのですが、実際にはHP-A7を入れるか入れないかでは全く音が変わります。
オーディオ専門店でアキュフェーズなどのプリ・パワー・CDトランスポート・DACで200万円を超える機材を視聴させてもらう機会がありましたが、
自分が思うにはA-7VL+HP-A7の方が確実につぼに入ります。
弦楽器からDTMの打ち込みまで気持ちよく聞くことができました。
そして最後にA-7VLとDAC-1000とND-S1000を接続して視聴。
ご存知の通り、DAC-1000とND-S1000はオンキョーのハイエンドリファレンスシリーズに当たるモデルで、この2つの価格だけでA-7VLの購入価格を優に上回ります。
バランス出力などもありますが、A-7VLの対応しているRCAで接続しました。
視聴した感想ですが、ものすごい期待を掛けてDAC-1000を購入したのですが、複合機であるHP-A7をよりきめ細かい音にしてクールな音の特性になった感じで
内蔵DACからHP-A7に変えた時ほどの衝撃はありませんでした。
また、A-7VLとDAC-1000は同じメーカーなので相性は抜群に良いということは分かるのですが、自分にとってはHP-A7の音の方が好みです。
ただし、DAC-1000で聴くクラシックは格別に良く、ショパンのバラード(スケルッツォ)やリストのラ・カンパネラはピアノのタッチや打鍵の音がリアルで圧巻させられます。

ですので、とりあえずは内蔵のDACを十分に使い、もし不満が出てきたらHP-A7やDAC-1000などの外付けDACを試すとよりA-7VLの真髄を発揮できると思います。

余談ですが夏場にDACとA-7VLをつけっぱなしで寝てしまうと朝は凄い温度になっているので、気持ち的に長時間運用する場合はエアコンやミニファンなどを当てたいように思います。
PMA-2000AEと違い、薄型なのでヒートシンクのサイズも小さく放熱性はそこまで良いわけではなさそうです。
余分な機能で肝心の音質を下げてしまっては本末転倒ですが、寝る前にベッドでオーディオを楽しむ人も少なからずいると思うので、タイマーやオートスタンバイなどがあると非常に良いのではないかと思います。

DSC_5030

付属のヘッドフォンジャック

歴代プリメインアンプのヘッドフォンジャックが良かった試しが無かったので、期待はしていませんでしたが、やはり残念ながら音質はあまり良くないです。
SONY MDR-Z1000 とゼンハイザーHD650で試しましたが、HP-A7のジャックと比べると音に厚みもなくカスカスで高音の切れもありません。パイオニアの2万円のコンポとほぼ同じです。
ここまですっきりとしたデザインなので、もうヘッドフォンジャックを廃止したりバックパネルにこっそり設置するくらいでも良いのでは?と思います。
付属品とリモコン

リモコンの質感は普通で、ボリュームは滑らかに変化するので快適に使えます。
またRI RimoteControlでND-S1につなぐことによってA-7VLのリモコンでND-S1に差したipodやiphoneを操作できますが、この操作キーがくせ者ですっごく操作しにくいです。
真ん中に曲の停止再生があるのでエンターの代わりに間違えて押してしまう他、フォルダの曲変更やプレイリストのスキップなどまるで直感的に使えないような仕様です。
殆どの携帯電話は十時キーの真ん中のボタンで「決定」または「エンター」が割り振ってあるのでこれは欠陥としか思えません。
折角、本体が高級感があるのでデノンのPMA-SAシリーズのように金属風のリモコンにして本体と統一感を出しても良かったのではと思います。
恐らく他の機種と金型のプラットフォームを共有してコストダウンをしているのだと思いますが少し工夫して欲しかったです。
付属品は写真をご覧の通り電池と取説です。

A-7VL009

A-7VLの総評

P-3000R、M-5000R、DAC-1000、ND-S1000などとピュアオーディオに復帰したオンキヨーが、この時期に出すプリメイン。 伊達ではありません。
完成度は非常に高いと思います。
触発されて今後他のメーカーからも同クラスの機種が出ることを期待します。

オーディオシステムのグレートアップにスピーカー変更を考えるケースが多いですが、音の上流から丁寧に見直すことによってスピーカーの音が劇的に変るかもしれません。
洗練されたデザインと原点回帰であるようにシンプルで必要十分な機能。
10万円を切る価格のアンプでここまで素晴らしい音が出るとは本当に感激です。

最近では価格がこなれてきて発売当初より断然購入しやすい金額になっています。
海外の名門のオーディオメーカーのアンプも良いですが、A-7VLは価格と品質のコストパフォーマンスが抜群に良いので、プリメインアンプの中では断然お勧めできます。

タイトルとURLをコピーしました