配当金が年利40%なのに不人気な米国株「エコペトロール ADR」とは?

経済・投資

エコペトロール(Ecopetrol ADR)は、コロンビアの国営石油企業であり、米国市場においてADR(アメリカ預託証券)として取引されています。通常、米国の投資家が海外企業に投資するためには、ADRという形態を利用することが一般的です。ADRとは、外国企業の株式を米国市場で売買できるようにした金融商品であり、現地の株式を米国の銀行が預託し、米ドル建てで取引されます。これにより、米国の投資家は為替リスクや国際取引の煩雑さを軽減しながら、海外企業への投資が可能となります。

公式サイト
https://www.ecopetrol.com.co/wps/portal/

エコペトロールは、現在配当利回りが年利40%と驚異的な数字を示していますが、それにも関わらず、不人気な株の一つとなっています。高配当であるにもかかわらず、なぜ投資家に避けられているのでしょうか?この記事では、エコペトロールADRの背景やリスク、財政状況について分析し、この状況を詳しく見ていきます。

なぜエコペトロールはコロンビアなのか?

エコペトロールは、コロンビア最大の石油・ガス会社で、同国のエネルギー産業の中心的な存在です。コロンビアの地理的優位性や天然資源の豊富さから、エネルギー分野での国際的な影響力も持っています。同社は石油の探査、精製、販売までを手掛ける統合型エネルギー企業として、多岐にわたる事業を展開しています。

しかし、コロンビアは安定した先進国とは異なり、政治的・社会的なリスクが高い地域です。そのため、エコペトロールの株式が米国市場でADRとして取引されることで、投資家はコロンビア市場にアクセスできる一方で、国際的なリスクに晒されることになります。

原油価格の影響

エコペトロールの収益は、主に原油価格に依存しています。世界的な原油価格の変動は、エネルギー企業にとって最大のリスク要因の一つです。特にエコペトロールは、コロンビア国内の石油生産に大きく依存しているため、原油価格が下落すると同社の収益も大きく減少します。

WTI原油先物  https://www.sbisec.co.jp/ETGate/?_ControlID=WPLETmgR001Control&_PageID=WPLETmgR001Mdtl20&_DataStoreID=DSWPLETmgR001Control&_ActionID=DefaultAID&burl=iris_indexDetail&cat1=market&cat2=index&dir=tl1-idxdtl%7Ctl2-CLv1%7Ctl5-jpn&file=index.html&getFlg=on

過去数年、世界的な原油価格は不安定な状況が続いています。パンデミックやロシア・ウクライナ戦争などの地政学的リスクが原油価格に影響を与えており、供給と需要のバランスが崩れることで、エネルギー市場全体が揺れ動いています。このような状況下で、エコペトロールの業績も影響を受け、配当金が高いにもかかわらず株価が下落している要因の一つとなっています。

武装勢力と麻薬取引のリスク

コロンビアは長年、反政府武装勢力や麻薬カルテルとの戦いを続けており、この不安定な治安状況がエコペトロールの事業運営にも影響を与えています。特に地方においては、武装勢力が石油パイプラインを攻撃したり、企業の運営を妨げたりする事件が度々発生しています。

さらに、麻薬取引がコロンビア国内の経済や治安に大きな影響を及ぼしており、国際的な対麻薬政策がエネルギー産業に対する投資リスクを高めています。エコペトロールがオペレーションを行う地域では、麻薬取引に関連する武装勢力の影響が強く、これが投資家にとって大きなリスク要因となっています。

コロンビアにおける援助協調の現状と我が国の関与(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/10_databook/pdfs/06-11.pdf

地理的リスクと政府の対策

コロンビアは、地理的に南米の中心に位置し、石油や天然ガスなどの資源が豊富です。しかし、政治的不安定さや社会的不平等が長年続いており、これがエコペトロールを含む企業にとってのリスク要因となっています。特に、コロンビア政府の政策が頻繁に変動し、武装勢力や反政府グループとの和平交渉がうまく進まない場合、エネルギー事業の運営が不安定になる可能性があります。

2022年には、左派政党から選出されたグスタボ・ペトロ大統領が就任し、「全体的な平和(Total Peace)」政策を推進しています。この政策は、武装勢力や犯罪組織との交渉を通じて、国内の治安状況を改善することを目指していますが、その実現には時間がかかると見られています 

財政状況の分析

エコペトロールの財政状況を確認すると、いくつかの注目すべき点があります。

エコペトロールの財政状況
https://jp.investing.com/equities/ecopetrol-sa-adr-financial-summary

損益計算書のポイント

総収入: 2024年6月時点で約32.6兆COP。前四半期より増加していますが、長期的な増加傾向は見られません。
営業利益率: TTMで27.34%と高い利益率を維持していますが、原油価格の変動によるリスクがあります。
純利益率: TTMで12.48%。コスト効率は良好ですが、収益が安定しているとは言えません。

貸借対照表のポイント

当座比率: MRQで0.92と、短期的な債務支払い能力には不安が残ります。
流動比率: 1.48と比較的健全な水準ですが、負債比率が高いことが懸念されます。
総負債資本比率: 155.99%と高いレバレッジがかかっており、財務的な安定性に疑問が残ります。

キャッシュフローのポイント

営業キャッシュフロー: TTMベースで40.78%と強力な現金生成能力を示していますが、投資キャッシュフローがマイナスであるため、資本投資が利益に繋がっていない可能性があります。

エコペトロール ADRはリスクがあるのか?

エコペトロールADRは、年利40%という非常に高い配当利回りを提供しているものの、その背後には原油価格の不安定さ、コロンビア国内の政治的・社会的リスク、さらには高い負債比率といったリスクが存在します。これらのリスクが投資家の不安を呼び、結果的に株価の下落に繋がっています。

つい2年保有すれば元が取れる!と下心を出してしまいそうですが、現在の株価には実際の環境が反映されていることを考慮すると、高配当を狙いたい場合は慎重な検討が必要になりそうです。

このまま負債が増加した場合、最悪上場を廃止する可能性もありますので、 投資するとしても、小額に留めておくのが良いかもしれませんね。

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