渋谷の有名な商業施設「ヒカリエ」の土地に関する登記情報を例に、どのようにして登記情報を取得し、活用すべきかを詳しく解説します。さらに、登記情報から得られる具体的な内容や、実際に不動産取引を行う際の注意点についても触れていきます。
不動産登記情報の重要性と取得方法
不動産や土地に関する情報は、市町村が固定資産税や都市計画のために管理している固定資産台帳に基づき、ある程度公開されています。しかし、固定資産台帳に登録された情報は、必ずしも最新かつ正確ではありません。正確な不動産取引を行うためには、法務局が管理する不動産登記情報を参照する必要があります。
かつては、登記情報を取得するためには、法務局に直接出向いて申請しなければなりませんでした。しかし、現在では「登記情報提供サービス」を利用することで、インターネットを通じて誰でも簡単に取得することができますが、正確な地番や家屋番号が必要になります。地番は、普段私たちが使用している住所とは異なる場合があるため、初心者には少し難しいです。
たとえば、渋谷にある「ヒカリエ」の住所は「渋谷区渋谷2丁目21-1」とされていますが、実際にはこの建物が建っている土地は複数の地番に分かれています。登記情報を確認することで、このような細かな土地の分割や、所有者の情報を把握することができます。
MAPPLE法務局地図ビューアの使い方
地番の確認や不動産登記情報の取得には、「MAPPLE法務局地図ビューア」という便利なツールを使用することができます。このビューアを使うことで、地図上で土地の詳細な地番を確認し、必要な登記情報を取得することができます。まずはアカウントを作成し、取得したい住所を検索すると、地図上に赤くハイライトされた地番が表示されます。
全国すべてのエリアがカバーされているわけではありませんが、主要な都市部はこの地図ビューアを利用して地番を簡単に確認できます。渋谷ヒカリエの場合も、一見ひとつの土地に見えるエリアが実際には14分割されており、異なる地番が存在しています。
登記情報を取得したい場所をクリックすると、右側に詳細が表示されます。「不動産登記情報を購入リストに追加」をクリックし、オンライン決済画面に進むと、クレジットカード情報を入力して支払うことができます。支払い完了後、約15分でPDF形式の登記情報がメールで届きます。場合によっては、わずか3~4分で届くこともあります。
実際に渋谷ヒカリエの土地の一部を取得してみる
実際に渋谷ヒカリエの土地に関する不動産登記情報を取得してみた結果、次のような詳細が確認できました。
地番21-1(渋谷区渋谷2丁目)
•地目: 宅地
•地積: 4997.15㎡
•登記日: 昭和41年10月1日(昭和41年9月2日の土地区画整理法による換地処分)
•所有者: 東京急行電鉄株式会社
•過去の取引履歴:
•昭和14年10月16日に合併し、昭和22年3月28日に東京急行電鉄株式会社が所有権を取得。
•その後、東急建設株式会社や三菱信託銀行株式会社が一部持分を取得し、信託として処理された。
このように、一見単純な土地であっても、複数の企業や銀行が関わっていることがわかります。特に、信託銀行による持分の移動が頻繁に行われている点は、財産管理のための信託制度が活用されていることを示しています。
※この不動産登記情報は渋谷ヒカリエという大型商用施設のため、公開しても問題はないと考えていますが、 個人の所有しているものに関してはプライバシー侵害になってしまう可能性があるので、 公開する際は、氏名や個人を特定する情報はモザイクをかけるなど処理をお願いします。
地番21-51(渋谷区渋谷2丁目)
•地目: 宅地
•地積: 15.81㎡
•登記日: 平成24年2月17日(土地区画整理法による換地処分)
•所有者: 奥野ビル株式会社(昭和46年4月10日、売買による所有権移転)
•その後、平成21年12月2日に東京地下鉄株式会社が所有権を取得。
この地番21-51は、非常に小さな土地ですが、それでも過去の取引履歴がしっかりと記録されています。このような小規模な土地であっても、所有者の変動や売買履歴が複雑であることがよくわかります。
ここに出てくる「奥野ビル株式会社」は、2018年1月4日に合併による解散で登記記録が閉鎖されています。
なぜこの小さな区画だけが切り分けられているのかについて、実際にGoogleマップで地番の場所を重ね合わせて比較してみましたが、特に東京メトロの改札が直接あるわけではないようです。通路から見ても、目立つのは駐車場の出口程度で、区民サービスセンターの少し左に、ワンルームよりも小さいサイズの区画が所有されていることが確認できます。
もしかすると、一般の人には見えない形で東京メトロのインフラを管理する設備がこの区画内にあるのかもしれません。また、契約上の理由から、売却や譲渡を行わずにそのまま保有している可能性も考えられます。
このように、日常的に利用している施設であっても、登記という視点から考えると、全く別の側面が見えてきます。それは興味深くもあり、同時に複雑で難しい面もあり、非常に奥深いものです。
登記情報から得られる重要なポイント
不動産登記情報を取得することで、土地に関する正確な情報を得ることができ、将来的なトラブルを未然に防ぐことが可能です。特に、土地の所有者が複数存在する場合や、所有権の移転履歴が複雑な場合には、事前に登記情報を確認することでリスクを軽減することができます。
また、信託や合併など、所有権が企業間で移動する際には、登記情報を正確に把握しておくことが重要です。例えば、土地の一部が信託銀行によって管理されている場合、その土地に対しては信託契約が存在することを理解しておく必要があります。
不動産取引におけるリスク管理
実際に不動産を購入する際、購入予定地と周辺の登記情報を確認することで、さまざまな潜在的なリスクを事前に予見できます。
たとえば、家を建てる際に隣接する道路が公道か私道かを確認することは重要です。私道の場合、所有者全員の許可が必要となることがあり、これを無視して取引を進めると後々トラブルに発展する可能性があります。
また、登記情報を確認することで、該当する不動産に抵当権や担保が設定されているかどうかも分かります。抵当権が設定されている場合、その不動産は他の借入金の担保として利用されているため、所有権を取得した後でも、万が一債務不履行が発生した際には差し押さえの対象となるリスクがあります。
さらに、所有者が社会的に問題のある団体や法人であった場合、そのような不動産を購入するリスクも高まります。他にもその不動産が共同所有物件であるか、複数の権利者が存在するかどうかも記載されています。共同所有の場合、すべての所有者の同意がなければ売買や開発ができず、手続きが複雑化する可能性があります。
特に住宅で利用する場合など、一生涯そこに住み続ける可能性もあるので、購入予定地だけでなく隣接する不動産情報や土地の情報を取得した方が良い場合もあります。 こうした取引に慣れている方に相談して周辺の情報を収集するのも大切です。