“リチャードジノリ”から”ジノリ1735”へ、イタリアンフルーツ廃盤に見るブランドの再生

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私はささやかな食器マニアですが、「リチャード・ジノリ」と聞くと、自然と目を細め、昔の素晴らしい作品を思い出してしまいます。特に1960年から1990年代のリチャード・ジノリの作品は、薄手で透明感のある白磁に手描きのタッチが施されたイラストが特徴で、現代でも心を奪われます。

Via del Corso (Roma) にて撮影

しかし、これは同時に、昨今のジノリの品質に対する失望を意味します。2000年〜2010年代のリチャード・ジノリ製品は、ただ厚ぼったく大量生産品のように見え、もはや引き出物以上の価値を感じられませんでした。

Twitterで偶然見かけた「イタリアンフルーツ廃盤」の知らせを見て、ついにリチャード・ジノリが廃業するのではないかとさえ思いました。

”ジノリ1735”へ、ブランド名変更による劇的な進化

リチャード・ジノリは2020年に「ジノリ1735」にブランド名を変更しました。私はリチャード・ジノリから心が離れていたため、つい最近このことを知りましたが、実店舗で新しい「ジノリ1735」を見かけ、従来のリチャード・ジノリとは全く異なるそのデザインに感動しました。

引き出物向けのデザインは次々に廃盤となり、新しいデザインは洗練され、過去のアンティーク品をも超えるかもしれないほど魅力的です。

たとえば、オリエンテ・イタリアーノは、カーネーションをモチーフにしたシノワズリデザインで、日本の伝統美術を思い起こさせる趣があり、色合いやタッチの美しさに驚かされました。トリムを飾るゴールドも他社の金彩とは異なり、発色も良いです。見てすぐに分かると思いますが、金型も新規設計で、シェイプも一新されています。

ルブルムは永楽和全の京焼金襴手手法のように赤と金の装飾が施されたプレートで、日本の美術を融合させたようなデザインです。発色、薄さ、質感、すべてにおいて完璧に近い仕上がりです。

慶応年間(約145年前)
EIRAKU about 145 years ago
永楽和全による京焼金欄手手法で全面を赤で下塗りし、
その上に金のみで彩色した豪華絢爛な作風であるとともに、京焼風な洗練された美しさもある。

どこかこうした日本の歴史的な作品に通ずるものさえ感じます。

他にも、VOLIEREの鳥や花が描かれたプレートもあり、これはジノリ1735のアーカイブからインスピレーションを得たデザインで、現行のエルメスデザインよりもセンスが良いと感じました。

ジノリ1735のデザインには、リアリズムを追求したデッサンが平面に巧みに落とし込まれ、古典的な唐草模様がレリーフ状に施されています。しがない食器マニアになって長いですが、 これほどまでに心にときめく新品の食器に出会ったのは久しぶりでした。

予算に余裕があれば、たくさん買い揃えてしまいたいほどです。

イル・ビアジョ・リ・ネプチューノの魅力

また、その他にも感心したのが《イル ヴィアッジョ ディ ネットゥーノ(ネプチューンの旅)》です。

一見、子供の落書きのように見えるデザインも、近づいてみるとその深みがわかります。デザイナーのルーク・エドワード・ホールによるこのシリーズは、マヨルカ焼きの色合いとタッチを現代的なアートに昇華させ、彫刻やレリーフはローマの美術品を彷彿とさせるものです。ネプチュンの三叉槍を持つブロンズ像や二頭立て馬車のシーンなど、古代ローマをモチーフにしたデザインが印象的です。

新しいジノリ1735への期待

ジノリ1735は、過去のアーカイブからインスピレーションを受けながらも、新しいデザインで新古典主義の継承を表現しています。これは現代のミニマルアートに対するアンチテーゼとも捉えられるかもしれません。

もちろん、すべてがハンドペイントというわけではありませんが、転写されたプリントも非常に細かく、発色の美しさはウェジウッドを超える品質です。白磁の品質も改善され、軽くて密度が高く、毎日使いたくなるような仕上がりです。お値段の方もなかなかに特別な価格になってしまっているのですが、今までのリチャード・ジノリのイメージが一新して、憧れの対象となりました。

私は、最近のウェジウッドやマイセンやヘレンドは、停滞期を迎えていると思います。
過去の作品が素晴らしかったブランドほど、そこに陥りがちく、 昔の作品のブランドイメージを追い越すことが難しいためです。これらのブランドは、1900年代の作品が素晴らしすぎて、いまだに当時のデザインにすがっていることも多いです。

リチャード・ジノリは、かつての素晴らしい作品に固執するブランドが多い中で、過去のデザインに縛られず、新たな方向性を打ち出していることが評価できます。特に「ジノリ1735」として再スタートを切った後、近年では「GINORI DOMUS」といったホームコレクションを発表し、現代のライフスタイルに適応したデザインを提供しています。このコレクションには、ラウンジチェアやキャビネット、照明器具など、家具とインテリアが含まれており、すべてがイタリア製です。

このように、ジノリ1735は単に過去の遺産に頼ることなく、新しいデザインと技術でブランドの進化を遂げています。みなさんも店頭でぜひ新しいジノリ1735の作品に触れて、その進化を感じ取ってください。

Ginori 1735 | Italian design porcelain | Shop Online
Ginori 1735. Italian luxury excellence. Lifestyle and artisanal heritage in the porcelain and design industry.
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