自粛期間中で、またはそうでなくとも隣人や同居人の騒音や生活音、道路での車両の通行音が気になってストレスを感じたことはないだろうか。
現在私が住んでいる物件の隣人は大学生のようで、大学生の一般的な生活リズムは夜型が多いので、どうしても夜中に音が発生してしまうのは免れない。かといっていきなり苦情を入れて関係が円滑にいかなくなるのは避けたいし、疲れているのにぐっすりと眠れないというのも避けたい。夜でなくとも、日中のテレワークやオンライン講義の集中をかき乱されるようでは困る。
そこでMOLDEXの耳栓が8種類ほど入ったお試しパックのようなものを購入してみたので、使用方法とそれぞれの使用感をまとめていく。
使用方法についてはまず耳栓を回転させながら先の部分を指でつぶすと、形状記憶されたかのようにつぶれた状態になるので、その隙をついて耳栓を挿入する。このとき反対側の手で耳の上側を引っ張った状態にして挿入することで耳栓が耳の奥まで入りやすくなる。その後耳栓が耳の内部で完全に元の大きさまでに膨張するまで40秒~1分ほど待ち、最後に耳栓を外側から押し込むとブレずにしっかり挿入することができる。(押し込みすぎには十分お気を付けを。)
肝心の耳栓についてだが、まず8種類もあるため、それぞれ何が違うのかと思われた方も多いであろう。意外にもサイズに関しては1つを除いて、いずれもほとんど変わらない。違うのはカラーリングと素材(もっと細かく言えば表面の加工と遮音性)である。材質は全てアクリルポリマーであるため、PVCのような特有の臭いは存在しない。
カラーリングについては大きく分けて2種類。単色と複数色が用いられたマーブル模様である。
素材に関しては表面の質感が大きく異なる。つるつるであるかのように感じさせるほど気泡のような凹みが小さいものとそうでないものに分かれる。そして意外にも気泡が荒いものが遮音性が低く、気泡が細やかなものは遮音性が低いというわけではない。
また、遮音性能の評価指数で用いられるNRR(Noise Reduction Rating)とは米国環境保護局(Environmental Protection Agency)の査定により規定される指数で、騒音減衰指数のことを指す。そのディメンションはdBであり、防音保護具を着用しなかった際に感知するdBから、その防音保護具のNRRの数値分のdBを減衰させるとされる。dBには相対と絶対は存在し、ここでは音圧レベルに関して言及しているため厳密にはdB SPLと表記するのが物理学的に正確であろうが、今回はそこまでは深入りしないようにする。いずれにせよ、dBが対数表記の物理量であることはおさえておきたい。
これらは以降で個別に言及することにする。
今回は3か月弱にわたって新幹線移動やバス移動、地下鉄移動、睡眠時などなどのさまざまなシチュエーションでその性能を検証した。
メローズ(Mellows)
遮音値:NRR30dB
カラーリングは単色のオレンジであり、遮音性に関しては気泡が小さいのにもかかわらず、この中ではまずまずといったところである。大きさと柔らかさが自分には合わなかったのか、寝ている間などに脱落することが多かった。この8種類のなかでは特に秀でたところも劣っているところもなく、個性がないという印象が拭い切れない。強いて言うならば若干柔らかめの材質だが、反発力は相応にあるといった感じか。
先端からリム部までは2.7cm、リム部の太さは直径1.5cmである。
メテオ(meteors)
遮音値:NRR33dB
カラーリングは単色のライムグリーンで、ピューラフィットとほぼ同色である。このメテオとメテオスモールのみが中央部にくびれ構造を持つという形状的な特徴を有する。この2種以外は先端からリム部にかけて単調に太さが増加するという形状である。比較的柔らかめで表面もなめらかな印象はあるが、他の同程度の柔らかさを有する耳栓より若干反発力の強さや形状記憶性の高さを感じる。個人的にはこのくびれ構造のフィット感と、長時間使用しても疲労を感じさせない特性が好みである。また、リム部分が把持しやすい形状でもあるため、耳の奥深くに入り込むリスクも相対的に低いように感じられる。遮音性も十分だが、この使用感は長時間利用する際に発揮されるため、長時間利用する際はこちらをおすすめしたい。
先端からリム部までは2.6cm、中央の膨らんだ部分は1.2cm、リム部の太さは直径1.7cmである。
メテオ スモール(meteors SMALL)
遮音値:NRR28dB
単色ライムグリーンのメテオに対して、ベースのライムグリーンにエメラルドグリーンがマーブル模様となっているカラーリング。先端から後ろにかけて細い部分から太くなり、また細くなり、最後にリム部分といった具合で、くびれが存在する。表面はメテオより若干なめらかでツルツルとした印象を受ける。これだけが1つ飛び抜けて小さいように感じるが、遮音性は十分である。ただし、メテオと比較するとやはりどの音域の音も若干遮音性という観点で劣っている。
女性や子どもなど耳が小さめの方におすすめだが、一般的な男性でも問題なく使用ができ、長時間の利用でも痛みや違和感を感じにくいサイズ感となっている。長時間使用しても痛みなどは全くない上に、高音はしっかりと防ぐものの目覚ましの音は多少聴こえるので睡眠時にはこれかもしれない。実際近くの道路の車の音や工事の音がうるさいときに装着すると見事にその騒音がカットされて安眠できる。それにも関わらず宅配便のインターホンの音や目覚ましの音はしっかり聴こえるので不思議な感覚を覚える。
先端からリム部までは2.4cm、中央の膨らんだ部分は0.95cmと8種類のなかで最も小ぶりな耳栓となっている。リム部の太さは直径1.5cmと標準的である。
ゴーイングリーン(GOIN’ GREEN)
遮音値:NRR33dB
他と比べて若干の硬さを感じる材質であるが、カモプラグほどではない。カラーリングは蛍光イエローをベースとして、蛍光グリーンが入ったマーブルである。そして、他の耳栓に比べて若干硬い材質であるように感じられた。着け心地に関しても遮音性に関しても上位互換が存在するし、この耳栓でなければという必然性を感じられる要素が無かった。加えてリム部に関する加工がこの8種のなかで最も荒く、気泡というより穴と言うべきようなものや、バリも存在する。
先端からリム部までは2.8cm、リム部の太さは直径1.4cmである。
スパークプラグ(SPARKPLUGS)
遮音値:NNR33dB
この8種類のなかでおそらく最も表面がきめ細やかでツルツルの耳栓で、最も柔らかい耳栓である。そして、この数ある耳栓のなかで唯一、違うカラーリングどうしの耳栓で1ペアが構成されており、そのカラーリングは片方が蒲鉾を連想させる鮮やかな蛍光系ピンクとホワイトのマーブルと、もう一方がKawasakiのライムグリーンを連想させる蛍光系グリーンと薄い蛍光イエロー、そしてホワイトのマーブルである。遮音性も良好である。
長さは2.8cmとやや長めで、太さもこのなかでは標準的な直径1.5cm(リム部)。
ソフティー(Softies)
遮音値:NRR33dB
他の耳栓と指で押し比べてみてもかなり柔らかく、スパークプラグの次に柔らかいように感じた。形状も元通りになるのに他と比べて時間がかかる様子である。大きさは通常の大きさだが柔らかめの素材であるため耳の内部が痛くなりにくい印象を受ける。そして他と比較して明らかな軽さと密度の小ささを感じる。カラーリングはホワイトをベースとした蛍光オレンジのマーブルである。遮音性はこの8種のなかでは実に標準的なものである。
先端からリム部までは2.7cm、リム部の太さは直径1.5cmである。
ピューラフィット(PURA-FIT)
遮音値:NRR33dB
スパークプラグ、ソフティーに次いだ柔らかさを有していると感じた。また、遮音性もかなり良好で、カモプラグの次に高いように感じた。カラーリングはメテオと同様の単色ライムグリーンであり、表面加工に関しては材質や気泡の小ささの関係でかなり滑らかな触り心地と着け心地を体現している。遮音性と着け心地の両方を効率的に求めるならこれをおすすめする。
先端からリム部までは2.7cm、リム部の太さは直径1.4cmである。
カモプラグ(CAMOPLUGS)
遮音値:NRR33dB
色はカーキ系の迷彩パターンであり、その名に忠実である。彩度が低いのでこのなかでは最も目立ちにくいのではないか。表面の加工は若干粗く、カッパドキアを彷彿とさせる気泡が目立つものの驚異的な遮音性を発揮する。おそらくこのなかでは最も優秀な遮音性なのではないか。ラップトップのキーボードをタッチする音が聞こえない。米軍採用の売り文句にも納得がいく性能である。とにかく遮音性を求めるならこれ一択だろう。気泡が粗いからといって、特段使用感が悪かったり痛みがあるようなものでもなかったが、この8種の耳栓のなかでは最も硬質な質感を有する。
先端からリム部分まで3.0cmとこのなかでは最も長い仕様となっているが、リム部の太さは直径1.5cmと標準的。
MOLDEX耳栓8種 その遮音性と着け心地 総評
いずれも想定していた以上の性能を発揮した上に、8ペアセット+ケース1個で500円という価格から、個人的にはかなり満足のいくものであった。100円ショップの耳栓を利用するぐらいならこちらの利用をおすすめする。
個人的なおすすめはカモプラグで、次点でピューラフィット、メテオ、スパークプラグであるが、こちらのセットで一通り試してみてから気に入ったものをまとめ買いしてみてもよいだろう。
また、意外なメリットとして一定以上の時間耳栓を使用した後イヤホンなどで音楽を聴くと明らかに普段は聴こえないような解像度で鑑賞ができる。耳栓を用いることは普段連続で使用して疲弊した耳を休憩させるという役割もあるのだろう。
ちなみにケースは1ペアが収納できるものが1個しか付属していないので、仕切りのついたケース、いわゆる薬ケースなどにまとめて入れるとそれぞれの種類が混ざらずに取り出しやすくなるだろう。
昨今の情勢に鑑みると、残念ながら後期もこの耳栓のお世話になることになりそうだ。余談ではあるが、猫を飼っている人は耳栓を猫に食べられてしまう危険性が大いにあるので、導入は厳しいという話を先月何処かで聞いた。