伝説的な靴職人 ステファノ ベーメル
フィレンツェは数あるイタリアの都市の中でもレザーに関する文化が特に発展している街です。町中にレザー小物やバッグの店が立ち並び、チェレリーニやペローニなどの現地で人気なブランドはもちろん、世界的な有名ブランドであるサルヴァトーレ フェラガモもまた、この街に起源を持つのです。
さてその中でも、世界的に有名な靴職人がいます。惜しまれながらも2012年に48歳という若さで他界してしまった、STEFANO BEMER ステファノ ベーメルです。
1988年にスミズーラ靴の工房として店を開いたステファノ・ベーメル。10代の頃から靴の修理を請け負っていましたが、その腕の良さにSTEFANO BEMER ステファノ ベーメルのオリジナルの靴を求める声が多くなったこともあり、自ら注文靴を学んで23歳で創業。若くしてマエストロとなった彼は、ひたすらに美しい靴を追い求めているうちにTIE YOUR TIE タイユアタイのフランコ ミヌッチに見出され、一躍有名になりました。
彼はまるで子供のように靴を愛し、そして自分の職人と顧客を愛することで、人々が深く感動するような美しい靴を製作していました。
エキゾチックレザーを自由に操ったかと思えば、クラシックなカーフでごくごく自然な外羽根の靴を作ったり。靴に対する愛情から生まれる造形、そして圧倒的な作りの良さは世界中にファンを生み出していました。
愛情と好奇心が生み出した最高の靴
STEFANO BEMER ステファノ ベーメルの作る靴は好奇心に満ち溢れていました。新しいデザイン、新しいレザーや色彩、そしてクラシックとの融合。さらには顧客が履き込むことによって生まれる経年変化まで。靴に対するこれ以上ない思いが生み出した作品の数々は、まず一目で人を感動させ、そして何年経っても履く人を感動させ続けるのです。
「もしそれが素晴らしい品質で作られていたなら、靴は私たちがもっと気持ちよく歩くこと、そして生きることを助けてくれる。最上のクラフトマンシップによって、高品質な素材から作られたとき、靴は私たちを幸せにするプロダクトとなり、不可避と言われたブランドの国際化と、産業的に生産される商品から我々を守り抜いてくれる」 -Stefano Bemer
彼の生み出す靴は最高峰の靴がどうあるべきかを示すものでした。
決してブランド化して産業的になりすぎず、しっかりと最高のクオリティを実現し続けること。そしてマーケティング的な視点ではなく、職人の靴に対する愛情から生まれる自由な発想や好奇心からデザインやモデルを生み出していくこと。
STEFANO BEMER ステファノ ベーメルの作る靴がもう手に入らなくなってしまったのは残念ですが、彼の死後はトマゾ メラーニがブランドを引き継ぎ、STEFANO BEMER ステファノ ベーメルの右腕として活躍していた日本人職人の二人である坂東雅子、井俣久美子がその靴作りを継承しています。