ステファノ ブランキーニという異端児
イタリア靴らしい艶やかさに、ノルヴェジェーゼ製法の重厚感。日本でも紹介されることの多いSTEFANO BRANCHINI ステファノ ブランキーニ。このブランドの靴は一度見れば忘れない存在感があるので、名前を聞いてぱっと靴の姿が思い浮かぶ人も多いでしょう。
1953年に様々な靴職人の故郷であるボローニャに、靴職人の長男としてSTEFANO BRANCHINI ステファノ ブランキーニは生まれました。そして当然の流れとして13歳で靴を作り始めると、17歳にはその腕を買われてA. TESTONI テストーニに入社。A. TESTONI テストーニはボロネーゼ製法で有名なボローニャの老舗ですが、そこでパタンナーとして活躍しました。
そして靴職人としてのスキルを身につけると、37歳の時に自分の靴ブランドであるSTEFANO BI ステファノ ビを創業。今では懐かしく思えるこのブランド名ですが、これが彼のスタートだったのです。
デザインと正統派クラシック靴の融合
迫力のある大きく張り出したコパに、今までの靴からは考えられないようなスクエアトゥ。そして装飾として用いられる派手なステッチ。ある意味悪趣味すれすれの感覚で生み出されるアクの強いデザインは、当時クラシック一辺倒の革靴に慣れていた人々に衝撃を与えました。
それから6年後の1996年にはSTEFANO BI ステファノ ビのブランドをLVMHグループに売り、より靴工房らしさを追求したブランドを目指していきます。STEFANO BRANCHINI ステファノ ブランキーニという本人の名前を冠したブランド名は、このとき生まれたのです。
意味のあるノルベジェーゼ製法
彼の生み出す靴の何よりの特徴は、あの大胆なステッチがソールを這うノルペジェーゼ製法です。これはデザイン的にインパクトがあり後に様々なブランドが採用することになりましたが、STEFANO BRANCHINI ステファノ ブランキーニが用いるのはあくまで機能的に考えられたもの。アッパーとソールを大きく張ったコバに極太の糸で強固に縫い付けるこの製法は、非常に手間と時間がかかり熟練の技が必要です。
そのため多くのブランドではマッケイ製法の靴に飾りのノルベジェーゼ風ステッチを入れただけのものが多く、実際にはノルベジェーゼ製法と言えないものがほとんどなのですね。
それに対しSTEFANO BRANCHINI ステファノ ブランキーニがトップグレードとして展開するノルベジェーゼ製法は、あくまで靴の強度のために用いられる本物なのです。
最近では南イタリアの工場でOEM製作されているSTEFANO BRANCHINI ステファノ ブランキーニですが、その作りやデザインには未だに本人の意思が生きています。