コンテンツへスキップ

「記念日ワイン」は事故予防のため絶対にボルドーワインにするべき

「今日は朝早く起きちゃったし楽天パトロールでもしなきゃ!」と日常飲みの格安ブルゴーニュワインを探していると、興味深いレビューを発見してしまいました。ただでさえコスパ抜群のルー・デュモンのレアセレクションを「安い順」でソートすると、上位に出るのは[モルゴン 1995 ルー デュモン レア セレクション AOCモルゴン フランス ブルゴーニュ 赤ワイン ワイン 辛口 750ml Morgon 1995 Lou Dumont Lea Selection AOC Morgon]なんと評価2になっています。

 

ああ〜、神の仲田晃司さんも失敗することもあるのか。
と思いつつ、レビューを読んでみると

「香りは失われ、味はすっかり枯れ果てており、ボディ感もありませんでした。意見が分かれるということでしたが、私にはこれが美味しいと思える感覚はないようです。」

「抜栓時コルクがボロボロに崩れ落ち、目が点に。銀婚の記念にと初めて25年物のワインを買ってみたのですが、悲しくなりました。味はそれほど落ちていなかったので、茶こしでコルクを濾しながら飲みましたが、やっぱり悲しさが少し残りました。ショップの保存具合を怒るより、悲しみを思い知った銀婚記念でした。」

といった具合に怒りのレビューが……。

安いブルゴーニュの古酒は訳あり博打!

レアセレクションというのは、ルー・デュモンの仲田晃司さんがネゴシアンとして瓶のまま買い付けしたワインです。25年眠っていたボトルを試飲して、「これは面白い」と、ワイン好きに楽しんでもらうことを重視してリリースしています。

そもそもブルゴーニュワインというのは長期熟成させるワインではありません。
ごく一部の村のグランクリュは30年以上持つブルゴーニュも存在しますが、5~10万円クラスのワインでないと10年以上美味しく熟成させるのは難しいです。長期熟成に向いているといわれるタンニンと骨格がしっかりとしたジュブレ・シャンベルタンでさえ、優れた生産者でないと長期は難しいです。

「モルゴン」というのは、そんなブルゴーニュの中でも最も長期熟成が難しいワインです。何しろブドウの品種がピノノワールでなくガメイで作られるのです。クリュ・ボジョレーといって、解禁になったボジョレー・ヌーヴォーの上位互換ワインなのです。
つまりモルゴンはそもそも、「え?ボジョレーってヌーヴォーだけじゃなくて、こんな美味しいワインもあるんだ」と4~5年前の古酒ボジョレーとして飲まれるのが正しい楽しみ方です。

なんらかの事情で25年眠っていたボジョレーを引っ張り出して、販売価格2,500円で売るというのは、ワイン好きの知的好奇心を満たすためにあると考えるのが自然です。そのためにリコルクもされておらず、当時のままで売っています。

私自身、ルー・デュモンのレアセレクションが大好きで30種類以上飲んでいるのですが、全てが博打です。何しろ、何年も生産者がセラーに寝かせていた(放置していた)訳ありなボトルです。ロット差もおおきく、5本買うと5本バラバラの味がする、なんてこともあります。20~30年経つということは、2~3年では全く気にならない極少量の微生物の差が、ワインの風味まで変えてしまうのです。これもまたワインのロマンではあるのですが……。

悪いことはいいません、よほどのワインマニアでない限り、記念日に数十年前のブルゴーニュはアカンです。
(全く飲めない位に状態ヤバいものもあるので、予備を数本用意しないとダメですよ……)

とはいっても、めちゃめちゃ美味しかった1989年のレアセレクション(ブルゴーニュ)

記念日のワインは売っていない

残念ながら記念日のワインというのは非売品です。2000年に作られた焼酎を手に入れるくらい難しいことです。どの生産者も樽熟成や瓶熟成など一定の期間おいて、大半のワインを売りに出してしまうからです。生産者によっては、瓶の一部を地下セラーに寝かせておいて適切なタイミングで「バックビンテージ」として販売することもありますが量は少なくタイミングもバラバラです。

例えばシャトー・ラトゥールは2021年時点でもバックビンテージとして、寺田倉庫が2010年のビンテージを販売していますが、価格も当時よりも高く量も少ないです。ましてや1980~2010年まで網羅して売られることはありません。

そうなると、「自分で購入して保管する」もしくは「誰か保管してあったものを買う」しか無いのです。最近はワインショップが増えたり、ワインセラーの普及により2000年移行のワインは状態が良いものが眠っていることがあります。ただ2,000年以前のワインは状態が良いものは本当に少数しか流通していません。

マニアでなければ、「エノテカセラー」がおすすめ

記念日に美味しいワインが飲みたいのであれば、エノテカで購入してエノテカセラーに保管するのが最適解です。この場合、考えられる中で最もコンディションが良い古酒を楽しむことができます。

例えば記念日のボルドーワインを12本購入して、エノテカセラーにあずけて10年錫婚式、15年水晶婚式、20年磁器婚式と引き出すといった方法がベストです。ボルドーワインは主にカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローなどが主体で作られますが、特にカベルネ・ソーヴィニヨン主体のボルドーは保管方法が正しければ、10~20年の熟成ではびくともせず角が取れてまろやかに円熟していきます。
結婚当初はお互い硬かった関係が、10年単位で柔らかくなっていくのをワインが体現してくれるといった感度を実感できるはずです。

内部の温度変化が少ない大型ワインセラーで湿度と温度を一定にできるのであれば、家庭での保管でも大丈夫ですが、一般家庭であればエノテカセラーなんかに預けた方が安心です。

ボルドーなら多少安くても長期熟成できる

欲を言えばメドック格付けの高級ワインを選んだ方が、確実に美味しいワインを楽しめます。50年以上経っても華やかな香りを見せてくれるワインばかりです。3級のシャトー・パルメなんかは長期熟成に向いていないといわれるメルローでさえ半世紀経っても枯れずに楽しめるほどです。品種だけでなく生産者の技量までワインに反映されます。

必ずしも10万円以上するような高級ワインでないとダメということはありません。先日、「【昭和39年】57年前の赤ワイン(1964年)はどんな味【飲める?】」という記事で1964年のシャトー・シャス・スプリーンを飲みました。シャトー・シャス・スプリーンは今でこそ8,000円ほどしますが、数年前まで5,000円切っていました。
おそらく10~20年前は、3,000円以下で購入できたのではないでしょうか。
それだけ安い手頃な56年前のワインでもしっかり飲むことができるのです!長期熟成となればボルドーは偉大ですね。

そうは言っても、今から間に合わせたい場合

「昭和末期に結婚したときは貧乏で妻に苦労をかけたけど、会社も大きくなって余裕の出た今こそワインで乾杯したい」こんな事情がある場合は、フランスワインに強い信頼のできるワインショップに相談すると、過去のワインを所有している業者にあたって探してくれるはずです。
日本の業者でも、中にはフランスのワイン商に強いバックボーンがあり、フランスの古酒販売業者から取り寄せることも可能です。ブショネや劣化のリスクはありますが、それでも現地のセラーで眠っていたものはコンディションが良好です。他にもスイスのワイン商から輸入するケースもあります。

ただし、いずれも1日2日では不可能です。できれば2~3ヶ月以上余裕を持って相談すれば快く応じてくれるはずです。信頼できるワインショップが無い場合は、高級なフランス料理店に相談して記念日ワインを空けたいといえば、所属のソムリエが探してくれるはずです。ひらまつレストランなんかは自社でも相当数のワインを在庫しているので、もしかしたら所有しているかもしれません。

リカーショップよしだのようなワインショップも過去のビンテージを所有しています。
個人的な感覚では10~20年前であれば美味しいワインを引くのは可能ですが、30年以上前のワインになるとワインショップを通しても博打なところはあります。

そんなわけで、事故予防のため記念日ワインは安いブルゴーニュではなく、絶対にボルドーワインにしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

都会の喧騒を忘れさせる『朝香珈琲』。東京各地の魅力をブレンドに込め、洗練されたデザインのパッケージで、あなたのコーヒーライフに上質なひとときを提供します。
copyright otonaninareru.net