「ブルゴーニュの専門家」といわれ続けて、ウン10年。マスターソムリエでも生産者でもないのに、なぜ専門家と呼ばれるかというと貧乏すぎて村名ワインが買えないからです。
ワインのエチケット(ラベル)に「Bourgogne(ブルゴーニュ)」と書いてあるものは、基本的に様々な村で収穫されたワインをブレンドして作られます。それも村名ワインの品質に満たないブドウが用いられることがほとんどです。村名ワイン以下はアウトレット商品とまではいいませんが、日常飲み用の安ワインなのです。
中でも品質が低いのは、1本で千円から2千円で売られているブルゴーニュワインです。誰か生産したか分からないような買い付けブドウで作り、様々な産地がごちゃませになっている可能性が高く、没個性的でアルコールジュースにようになっているものも存在します。
3千円以上のACブルゴーニュになると、ネゴシアンがこだわって作っているものもあり、マルサネなどの安い村のワインに自社畑の村名落ちを使うことで、安いのに美味しい!というワインも存在します。この違いが安いブルゴーニュの面白さのひとつです。
順不同、比較的価格の安いものから紹介していきます。
ドミニク・ローラン ブルゴーニュ No.1ヌメロアン
ドミニク・ローランの挨拶代わりともいわれるブルゴーニュ。
このキュヴェはコート・ド・ニュイの村名ものを80%格下げして使用しています。100%樽熟成でノンフィルターです。年々ブレンドの比率が異なり味わいもバラバラです。ジュブレ・シャンベルタンのようなケモノとミントの香りを持つような、一見村名ワインのような1本に出会うこともあります。成城石井でも売っていることがあります。
ネット通販だと3,000円を切る価格で売られていることもあるので、非常にお買い得な1本です。
ドメーヌ・ジェラール・ラフェ ブルゴーニュ
上記のリンクは「パストゥーグラン」というガメイが混ざったものなので、違いますが通常のブルゴーニュでも3千円前後で入手ができます。あまり有名ではありませんが、モレ・サン・ドニにに本拠地を置くドメーヌで、ジュブレ・シャンベルタンのクロドベーズ(特級畑)も生産していて品質が高いのが特徴です。ACブルゴーニュは、透明感があって冷たい果実の香りが広がり、その中に少しだけ黒薔薇が存在する感じです。
水っぽいのが玉に瑕ですが、一度は飲む価値のあるブルゴーニュワインです。
ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレ ブルゴーニュ
7代目当主は、かの有名なロマネコンティを内包するヴォーヌロマネの村長をしていたこともある超有名生産者です。透明感のある古典的な製法はブルゴーニュに求められる要素をきっちり反映しています。昨今の流行りで凝縮したエキスでアメリカのピノのようなスタイルを作る生産者もいるなか、モンジャール・ミュニュレは絶対にブレない古典的なブルゴーニュワインとして楽しめます。今年はフィサンと、ヴォーヌ・ロマネの1級畑レ・スショを飲みましたが、どちらも素晴らしいワインでした。ACブルゴーニュはまだ試していないのですが、外さない1本です。
フィリップ・シャルロパン・パリゾ ブルゴーニュ・ルージュ キュヴェ・プレステージ
急に値段が上がってすみません。シャルロパンはジュブレシャンベルタンに本拠地を持つドメーヌです。ピノ・ノワールの神様と呼ばれるアンリ・ジャイエから指導を受けていた一人で、ジャイエから愛弟子として可愛がられていたと言われています。
ワイン造りにおいては、徹底した収穫量の制限や、低温マセラシオンによるエキスの抽出、自然酵母の発酵など、師であるジャイエ氏の影響が色濃く見られます。先ほどのモンジャール・ミュニュレと比べると色も濃くエキスが強いのですが、決してグロ・フレール・エ・スールのベルナールのような乱暴な果汁爆弾ではなく、エレガントな香りを併せ持つバランスの良いブルゴーニュです。アンリ・ジャイエの後継者としては値段も手頃なので高騰するまえに今のうち飲んでおきたい1本です。
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ドメーヌ・ラモネ ブルゴーニュ
シャサーニュモンラッシェのトップドメーヌ「ラモネ」、バタール・モンラッシェでも10万円以上、特級畑のモンラッシェになると50万円近い価格になります。赤はどうやら知名度が低く不人気なようでACブルゴーニュが5千円前後で手に入ります。
今年はラモネのブルゴーニュ2015年と、シャサーニュ・モンラッシェ1級畑クロ・サン・ジャン2016年を飲みましたが、どちらも高い透明感と白ワインの作りてらしいエレガントな香りでうっとり。恋するACブルゴーニュNo.1ですよ!
ACブルゴーニュも、珍しいシャサーニュのピノ・ノワールを使って作っています。ほとんど村名ワインと思える品質です。値段も村名ワイン級ですが……。
ドメーヌ・ピエール・ダモワ
こちらも有名なジュヴレ・シャンベルタンに本拠地を置く生産者。所有する畑は95%がジュヴレ・シャンベルタン、なかでも特級畑シャンベルタン クロ・ド・ベーズ最大の所有者です。ミネラルとタンニンのバランスが完璧で、丁寧に作られているのが一口飲んだだけで分かるACブルゴーニュです。
大きな難点が、あと2千円出すとピエール・ダモワの「ジュブレ・シャンベルタン」が買えてしまうという点です。そりゃウマいっすよね。
ドメーヌ・ダヴィド・デュバン ブルゴーニュ ルージュ
コレめっちゃうまいACブルゴーニュ!
4千円切るのにモレ・サン・ドニとシャンボール・ミュジニィのような味がする……って調べてみたら本当に入っています。「こちらのブルゴーニュ・ルージュは、モレ・サン・ドニとシャンボール・ミュジニィの小さな6つの区画より、樹齢40年~60年と古樹のブドウを使用しています。牡丹などのフローラルなアロマと、ピュアで美しい味わいにあふれています。なめらかでシルキーな口当たりと、凛としたミネラルが加わることで、気品のあるエレガンスを感じます。」だそうです。めっちゃお買い得。
ちなみにジュブレ・シャンベルタンも飲んだのですが、ACブルの方がコスパが良いです。
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ドメーヌ・ジョルジュ・グラントネイ ブルゴーニュ
たまにセールが掛かると3千円以下で手に入る激ウマACブルゴーニュ。貧乏なので最近コレばっか飲んでます。中身はなんとヴォルネイとポマールとムルソーのブレンド。
1口で3度美味しい、同時に村名が楽しめる!?え?貧乏?うるせー
これ、ポマールとヴォルネイも飲んだことありますが同等の品質基準で作られています。確かに優美な香りやV.V.のタンニンの骨格など村名にはかないませんが、それでもコスパ高いACブルゴーニュです。
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ドメーヌ・ベルトー・ジェルべ ブルゴーニュ レ プリエール
あんま有名じゃないけど丁寧に作ってるシリーズ第二弾。この度はコート・ド・ニュイに戻って、フィサンに本拠地を置く女性醸造家のドメーヌです。この夏は狂ったようにベルトージェルべのフィサンを飲みまくって、畑ごとの違いの秘密を暴こうと躍起になっていました。
約5日間の低温マセラシオン。天然酵母で発酵というジョルジュグラントネイに通ずる雰囲気があります。まだ有名ではないのですが、ここの作るワインはどれも丁寧で美味しいですよ。白のフィサンも最高。
ACブルゴーニュは値段も手頃で一度は飲んでほしいですね。
ドメーヌ・アルロー・ペール・エ・フィス ブルゴーニュ・ロンスヴィ
これだけまだ飲んだことないのですが、ジュブレ・シャンベルタンだった区画が、移民のために半分以上も格下げされてしまって村名から外れてしまったそうです。
マニアによると、まんまジュブレ・シャンベルタンの味なので最強ACブルゴーニュの一つというワケです。
あ、あと忘れていましたが「フーリエ」「ルー・デュモン」「ジョセフ・ドルーアン」も今年買って飲みました。ブショネでしたが……。ヴァンサン・ルグーなんかも美味しかったです。
有名生産者のACブルゴーニュは基本的に外れすくない?
他にも一例では「ロベール・グロフィエ」「ポンソ」「アラン・ユドロ・ノエラ」「クロード・デュガ」「エマニュエル・ルジェ」「メオ・カミュゼ」「ルロワ」「ルーミエ」など入門ブルゴーニュをリリースしています。ただし8,000円や〜10,000円、それ以上の価格で販売されていることもあります。
その価格帯だとフィサン、ジュブレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、ボーヌ、ヴォルネイあたりだと十分に美味しい村名ワイン(場合には1級畑)を購入できてしまうので悩みどころです。
まずは上記の10本試してみてくださいね!