古い洋書の傍らに――クリストフル アルビ レターオープナー

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フランスの書籍を渉猟していると、時折アンカット本に出会うことがあります。天や小口が裁断されておらず、ページがつながったまま販売されている、あの時代錯誤な本のことです。

Amazon.frでcomme neuf(新品同様)と表記されている古書を注文すると、手つかずのアンカット本が届くことがしばしばあります。またフランスでは未だにこの種の本が作られているため、いかにも愛書家が好みそうな古典文学関連の書籍を買うと、新品のアンカット本が手に入ることもあります。最近私が読んだなかでも、ヴァレリーとマラルメの初期往復書簡集は、たった2年前に刊行された本であるにもかかわらず、アンカットの古風なフランス装でした。

ところで、古書であれ新品であれ、そのような本を読むにはペーパーナイフが必要です。普通の文具店に売っているような安価なレターオープナーでも事足りないことはないのですが、いかんせん使い心地が良くありません。本来ペーパーナイフに刃付けは不要ですが、どういうわけか刃がついていたり、あるいは無粋なことに「ダンボールも切れる!」などと称し、鋸刃を備えたものまで売られています。持ち手が安っぽいプラスチック製なのは言うまでもありません。おそらくどの商品も、大切な本のページを開くのに使われることなど考慮されていないのでしょう。事務職員が、会社で封筒――あるいはダンボール箱――を開くのに用いるのであれば、それでも構わないかもしれません。しかしそのような品は、古典文学を愛する読書家の書斎には、決してふさわしいものではありません。

安物ではなく、ちょうど上等なテーブルナイフのように、美しく輝き、適度な重みがあり、フィレステーキを切るかように紙をすらりと切れるペーパーナイフはないものか――そんな愛書家の思いを叶えてくれるのが、クリストフル アルビ レターオープナー、あのシルバーカトラリーの名門が作るペーパーナイフです。

Christofle Albi letter opener

材質はシルバープレート。銀食器愛好家であれば、スターリングシルバーでないことを不満に思うかもしれませんが、ひとたびこの輝きに魅せられてしまえば、シルバープレートかスターリングシルバーかなどといった問題は雲散霧消してしまうことでしょう。

持ち手には、同じアルビシリーズのカトラリー同様、2重のラインによる控えめな装飾が施されています。

刃付けは行われておらず、刃先が丸くなっていますが、これはペーパーナイフとしては一般的な仕様です。このようなナイフで紙を切ると、切り口が微かに毛羽立ち、温かみのある自然な風合いに仕上がります。切れ味を心配する向きもあるかもしれませんが、紙を裁つ感覚は実にスムーズであり、快感すら覚えるほどです。

閉じたページは、まるで著者から届いた封書です。フランスの古書店から取り寄せた本に刃を入れ、ページを開くとき、時折私は、何十年もの時を超え、過去から送られてきた私信を開封しているかのような錯覚を覚えます。過去と現在が重なり合う、この特別な瞬間――古いヴェネツィア製のインク壺が、詩人アンリ・ド・レニエを、昔日の水都をめぐる生き生きとした夢想に誘ったように、私は、19世紀から続くこのカトラリーメーカーが作ったペーパーナイフで古い洋書を開くとき、失われた過去が、生きた温かみをもって、目の前にふわりと姿を現すように思うのです。

過ぎし日に憧れる懐古趣味の読書家にとって、クリストフルのレターオープナーは、手軽に手に入る現行品のなかでは最良の選択肢といえましょう。

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