こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。いつもは当店ブログにて色々なことを書いているのですが、あまりにマニアックで洋服タンスの隅をつつくような記事ばかりです。
そもそも生地の原料がトルコ産であるか南アフリカ産であるかによって生じるわずかな違いは、ほとんどの人には関係ないことなのですから。
そこで今回はもっとわかりやすく誰にとっても有益な情報をこのウェブマガジンで紹介しようと、そういうわけなのですな。
毎日のスーツに季節感を
個人的には「スーツは武器」という言葉に共感を持っていないのですが、皆様はいかがでしょう。
まあそれは私にとって「スーツは趣味」だからということもあるのですが、スーツは別に相手を威嚇するために着るべきものでも、自分を強く見せるために着るべきものでもないと私は思うのですね。
スーツを武器として捉えると、結局いかに完璧に着こなすかという話になってしまう。ですが完璧というのは大変難しいし、つまらんものです。
袖丈が0.3mm長いとか、シルエットが1年10ヶ月くらい時代遅れだとか、そういう話になってしまいますからね。
スーツはむしろ楽しむものです。
毎日仕事で着るもので制約もあるかもしれません。
だからこそその中で工夫し、自分の生活や仕事にあった「選択を楽しみ」、さらにはそれを「着て楽しむ」ことこそがスーツの本質でしょう。
そこで何を選ぶか。スーツを選ぶときには、ブランドやデザイン、色と生地を選ぶことになります。
ブランドは予算等の関係もありますので、逆に言えばなんでも良いかもしれません。デザインはクラシックなものがエレガントです。
すると一番選んでいて楽しいのが、生地なのですね。
なんとなくスーツになると全てがオールシーズンな服に思われてしまいがちです。
しかし春夏になるとリネンのシャツを着たりするように、スーツにも季節に合わせて様々な素材の生地があります。
ですから春夏は、春夏らしい生地を選ぶと着こなしが一気に楽しくなるのです。
春夏はウールモヘア生地がおすすめ
さて、そこでおすすめなのがモヘアという素材。
通常ウールと合わせて使われることが多いのですが、オーダースーツの世界では春夏の定番です。(むしろ既成のスーツであまり見かけないのはどうしてでしょう?)
春夏で代表的なのはリネンなのですが、仕事で使うことを考えるとどうしてもシワやカジュアル感が気になってしまいがちです。
それに対してモヘアは、ちょっとシャリっとしたリネンのような爽やかさと、上品な光沢感があります。
このシャリっとした風合いは単に生地の雰囲気が出るだけでなく、まとわりつかないので、湿気の多い時期にも快適です。
またシワに対しても強く、雨にもデリケートではないので、6月の梅雨の時期にもぴったりなんですね。
ちなみに形状の記憶もしてくれるので、一度アイロンをかければしばらくトラウザーのセンターライン(クリース)が消えないのも、実用的で良いですね。
私のように店の椅子に腰掛けてコーヒーを飲み、パソコン上で講釈を垂れる仕事であればウールでもビキューナでもなんでも変わりませんが、外での仕事が多い方にはこのタフさが大変有用だと思います。
私も年に数回のイタリア出張のときはモヘアのトラウザーを履くことが多い。
地面に膝をついて写真を撮ったり、重い荷物を持ったり、砂糖たっぷりエスプレッソを浴びるほど飲まされたり、朝食に甘いパンしか出てこなかったり、頼んでおいたスーツが手付かずだったりという過酷な出張でもへこたれずに済むのですね。
「まあ、モヘア着てるしなんとかなるだろう」
と皆さんもそういう気分になるはずです、きっと。
モヘアの生地にも色々なものがあり、一見するとウール100%とそれほど変わらない雰囲気のものから、いかにもモヘアらしいちょっと節や霜のあるような生地感のものまで様々です。
是非オーダースーツ店や、セレクトショップなどでモヘアを使ったスーツをチェックしてみてくださいね。
その表情の豊かさ、そして独特の風合い。
一度知ればきっと春夏スーツにモヘア生地を選びたくなってしまうはずです。