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ジャケットスタイルは「生地選び」をテーマにしよう

こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

「あの髭店主め、やっと記事を寄稿したか!」とお思いですね。ネット上のメンズファッション世界を切り開いたウェブマガジン『大人になれる本』を私が見捨てるはずがないでしょう。このウェブマガジンはさながらギリシャ神話の英雄たちが集合し、黄金の羊の毛皮を求めて幾多の困難の中を進んだアルゴー号のような存在なのです。

アルゴー船

ちなみにこの「黄金の羊の毛皮」とは?

もちろんテイラー&ロッジのラムズ・ゴールデンベールに決まっているでしょう。

つまりこのウェブマガジンで一発当てて、最高級のウール生地でスーツを仕立てたいな〜という思いが詰まっているという意味です。

春夏ジャケット着こなしで一番大切なこと

さて、早速本題に入りましょう。

今年の春夏のジャケット着こなしについて、すでに皆さんも色々と思考を巡らせていることでしょう。

そういうわけで今回は、トレンドのTの字もない洋服屋の店主が、皆さんに今年の春夏のジャケット着こなしのポイントを解説いたします。

実際ジャケットスタイルのような着こなしにトレンドは必要ありません。まして当店のお客様は自分の体型やお好みでシルエットも決めていらっしゃいますから、着丈やラペル幅はトレンドと全く無縁なのですね。

ですが、着こなしのどこに軸足を置くかによって、今年らしさは十分に演出できるのです。

今期は「生地選び」をテーマとすると良いでしょう。

素材選びに注目すべき理由

実は最近のトレンドは矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、「ビスポーク」です。しかしこれは誰もが服をオーダーするようになったというわけではありません。

オーソドックスなビスポーク風、クラシックなナポリ仕立て風、そしてそれを少し誇張したビンテージ感のあるスタイルが今注目されているわけです。

頂点にあるのは、老舗や新進気鋭のサルトリアでのビスポーク。しかし流石に手が出ない!という人はハンドメイドの既製服。それもちょっとな人は、そんな雰囲気を取り入れたカジュアルな既製服。そういう流れです。

ナポリのハンドメイドを謳う高級な既製服はもちろんのこと、カジュアル全盛期を築いてきた(洗い系)ブランドたちさえ、いかにビスポークっぽい雰囲気のコレクションにするかという方向性に向いています。

そういうわけで元からのビスポーク好きな方々からすればいい迷惑なのですが、ビスポークのスーツやジャケットを着こなしている人は皆ナウでトレンディなのですね。

ですからシルエットや細かい部分に関しては、いつも通り自分が好きなように選んでいればよいのです。しかし差がつくのが、生地選びなのですね。

意外にも知られていないことですが、ビスポークの世界と既製服の世界では、選ばれる生地がかなり異なります。もちろん共通したものも多いですが、全体的な傾向は驚くほど違う。

例えば既製服では柄物や織り柄があって、カシミアやシルクを使った3者混の生地などが人気です。それに対してビスポークでは比較的べーシックでハリコシのある生地が人気なんですね。逆に繊細な生地や滑らかな生地などはそこまで求められません。

ビスポークブームという不思議なトレンドのおかげでそういうクラシックな生地、コシの強いビンテージ生地が見直されています。

ということで、せっかく春夏の着こなしのためにジャケットを新調するのであれば、そんな生地に注目して選ぶのはいかが?というのが私のおすすめなのです。

キッドモヘアとリネンに注目

左がキッドモヘア(ドーメル のスーパーブリオ)で右がアイリッシュリネン。どちらも当店在庫品です。

さて、そこでおすすめなのがキッドモヘアとリネンです。

ん?これはどちらからというと今プロフェソーレ・ランバルディが売りたい生地では?と思った方は、当店のお客様ですね。お口にチャック、またはボタンフライでお願いいたします。

このキッドモヘアというのは昔からビスポークスーツに人気の素材です。アンゴラ山羊の毛のことで、リネンのようなシャリ感があり、光沢とハリコシが強いのが特徴です。

そのためウールと混紡して使用すると、独特の宝石のような光沢、綺麗な発色、シワへの強さと涼しい着心地が実現でき、本当に素晴らしい素材なのですね。

例えば当店でも力を入れて入荷しているビンテージのスーパーブリオという生地は、モヘアの中でも上質なキッドモヘアを、ゆっくりと低速で織り上げたことで生まれた奇跡のような生地。

現代の生地とは違う風合いと、みるい感じ(静岡弁 : 若く未熟だがその点を愛でていう言葉、転じて柔らかいの意)を楽しめます。

最近は滑らかな生地がとにかく好まれていたために息を潜めていましたが、一度好きになれば病みつきの生地です。

一番のおすすめはやはり、ベーシックながらも素材感が際立つネイビーでしょう。

もう一つおすすめなのが、リネンです。

これはすでに馴染み深い素材ですが、やはり注目は少しウェイトのあるリネンで、しかもシルクやウールと混紡されていないピュアリネンでしょう。

リネンはシワになりやすいイメージもありますが、上質なアイリッシュリネンなどは着込んでいくうちに柔らかくなり、逆に鋭いシワもつかなくなっていきます。

有名なのはスペンス・ブライソンとWビルでしょうか。あとはホーランド&シェリーにもリネンのバンチがあり、良い雰囲気です。

当店でも、光沢がありハリコシも兼ね備えた素晴らしいアイリッシュリネンを入荷しています。(ベルギーを始めとした良質なリネン原材料を輸入し、アイルランドで紡績、生地しているものです。南アフリカや中国で紡績する会社も多い中、希少なリネンです)

こちらはベージュ、ネイビーとブラウンがおすすめで、もし着る機会があるのであれば是非スーツで挑戦していただきたいですね。

このアイリッシュリネンについて詳しくはこちらで書いています。

ただし個人的にはおすすめは230g/m〜280g/mのリネンです。

300〜500g/mといったヘビーウェイトのリネンもありますが、逆に着る季節が限られてしまいますし、誤解されがちですが重ければ良いというわけではありません。

本当に上質なリネンであれば230gでも十分ハリコシがありますし、そうでないリネンは500g/mにしても重すぎてジャケットのシルエットが定まらないばかりで、良いことがありません。

この二つの素材を正しく覚えておけば、春夏の着こなしはずっと楽しくなるはずです。

それでは、ご機嫌よう。

「ジャケットスタイルは「生地選び」をテーマにしよう」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: メンズファッションのお勧め記事一覧 – 大人になれる本

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