Fallan & Harvey サヴィルロウの注文服テーラーが作る、既製服 (上)

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このブランドをご存知の方は、そう多くないでしょう。

しかし私はむしろこのブランドを見たことがないどころか、イギリスのスーツに興味を持ったこともないような方に、このスーツを紹介したいのです。

まず私がイタリア贔屓であり、これまで数百着ものイタリアのスーツやジャケットを手にしておきながら、イギリス製に至ってはたった2着のシャツを所有するのみであったことを、ここに白状しなければなりません。

しかし先日このスーツを着たとき、その瞬間から私はイギリスの仕立てのファンとなってしまったのです。

もちろんこのスーツは無事にお店を抜け出して、私のワードローブに来ておりますから、ゆっくりと紹介していくことにしましょう。

Fallan & Harvey とは?

私は以前からイタリア服が好きでしたが、だからといって英国の服を嫌っていたわけでも、バカにしていたわけでもありません。

いわば多くの日本人が富士山に対して持っているくらいの畏怖の念は持っており、もし機会があればサヴィルロウのスーツも着てみたいとは思っていました。

とはいえ以前記事にも書いたように、英国は注文服が主となっていることもあって、既製服が非常に少ない。そういうわけでサヴィルロウのスーツを着るチャンスには、これまで恵まれていなかったわけです。

しかし、ふとしたきっかけで出会ったこのスーツ。珍しく日本で既製服として展開されているファーラン&ハービーを手に取ったとき、私はついに買わずにはいられませんでした。

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もともとファーラン&ハービーは、キース・ファーランとピーター・ハービーが二人で始めたテーラーで、その歴史は1976年とサヴィルロウの中では比較的新しいものの、老舗と肩を並べるほどの腕前で、ロンドンでは定評のあるテーラーといわれています。

すでにキース・ファーランは亡くなっており、今はピーター・ハービーがマスターカッターを務めていますが、店自体はこちらもサヴィルロウのデイヴィス&サンに収まる形となっています。

こかの注文靴フォスター&サンにヘンリー&マックスウェルが収まっていたりと、イギリスではそれほど珍しいことではないようですね。

ファーラン&ハービーは日本のビームスと親しい関係があることもあり、数十回と渡日しており、インターナショナルギャラリー・ビームスで既製服の取り扱いもあることから、日本では手に入りやすいサヴィルロウのスーツの一つです。

このスーツもインターナショナルギャラリー・ビームスの取り扱いのものです。

ちなみにファーラン&ハービー以外に日本で手に入りやすいサヴィルロウの仕立てと言えば、新宿伊勢丹で展開のあるギーブス&ホークスでしょうか。こちらはもう少しデザイナー的要素の強い既製服でしたね。

「構築的なシルエット」を超える仕立て

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このファーラン&ハービーのスーツを一言で表現するのであれば、まさにこれに尽きるでしょう。注文服の仕立てと、英国紳士のディテールです。

一見すると地味にも見えるこの仕立て、さすがはサヴィルロウのテーラーです。裏地にネームタグさえ縫い付けないといわれたサヴィルロウのテーラーが仕立てるスーツは、実に控えめでありながら、非常に手間がかかっています。

まずはその構築的なシルエットです。

イタリアファッション主流の今ではイタリア服を賛美するためのネガティブキャンペーンとして用いられる「英国スーツの構築的なシルエット」ですが、これの本質を知っている人がどれほどいるでしょうか。

確かにこのスーツも、着用したシルエットは構築的です。しかしそれは何も分厚いパッドが鎧のように全体に張り巡らされているからではありません。このスーツを手に持つとむしろ、シルエットからは想像できない繊細さに驚くでしょう。

一番顕著なのが肩まわりです。スクエアな雰囲気のショルダーラインからすると、いかにも分厚い肩パッドが入っているように見えるかもしれません。しかし実際には薄めのパッドが肩を包み込むように入っているだけです。(パッドの厚さだけで言えば、アットリーニの肩パッドの方が厚いくらいですね)

すなわち、ファーラン&ハービーの職人は、そのカッティングとアイロンワークで、この構築的なショルダーラインを生み出しているのです。ここが、驚くべきところですね。

またウエストの美しいドレープ感もそうです。ボリューム豊かなバストから思い切り絞り込まれるイングリッシュ・ドレープはアイロンワークの賜物といえるでしょう。

続きはこちら↓(2016年12月21日公開)
Fallan & Harvey サヴィルロウの注文服テーラーが作る、既製服 (下)

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