Cordoba コルドバとは?
毎度ながら、ガットギターの世界は選択肢がエレキギターなどに比べると非常に少なく、本格的なエレガットを20万円周辺で欲しいと思ったら、すぐに手に入れることができるもの、新品で選べるモデルは必然的に数機種に限られてしまいます。
そんな中で有力な候補となりやすいメーカーが、スペインのコルドバ。廉価ラインからハイエンドまでを展開するこのギターメーカーですが、ハイエンドラインはスペイン製でハンドメイドにて作られているというこだわりぶりです。
ジプシーキングスのシグネチャーモデルを作ったことから一気に知名度が上がり、フラメンコギターやクラシックギターの定番メーカーとなっています。
Cordoba 55FCE Negra エレガット
この55FCEはCordoba コルドバの中でも評価がわかれるエレガットシリーズの最上位機種です。もちろんその最大の特徴は非常に薄いボディ。まるでフルアコのギターのような薄さで、「本当にそれで音出るの?」と問いたくなるような見た目です。
ついでにこの55FCE Negraはジリコテという非常に硬質でレアな木材をサイドバックに用いて作られている限定バージョンです。
ひとつずつ素材をみていきましょう。
まずはトップですが、これはスプルースの単板です。白っぽい色で目の詰まった印象。ナット幅50mm、スケール650mmのわずかに薄めのネックは意外なことにマホガニーではなく、シダーです。ブリッジは インディアンローズで、エレガットの要であるピックアップにはFishman Prefix ProBlendが採用されています。
Cordoba 55FCE Negraの音
このギターは大体のウェブサイトにてフラメンコギターとして扱われています。それは恐らくジプシーキングスが使用しているからだと思います。しかしフラメンコギターを想像しながら弾いてみて、拍子抜けです。
このギターはフラメンコギターではなく、クラシックギターのような太く深みのあるスムーズな音のギターなんですね。確かにゴルペ板が付き、薄いボディからするとフラメンコギターの歯切れ良く軽い音を連想させます。ですがこのギターはサイドバックの材質がジリコテで非常に重く硬質だからか、非常に太く深い音が出ます。少し粘っこさもありますね。
また音量は、このボディの厚さの一体どこから出てるの?というほど前に出てくる。フルサイズのものとはもちろん音の響き方が違いますが、例えて言うのであれば非常に高級なバイオリンのように、ボディを余すところなく使い、しかもボディ全体を振動させて容量以上の音量を得ているような、そんな印象です。
YOUTUBEのデモ試奏動画などでは、かなりガチなフラメンコギター奏者の人たちが弾いていたりしますが、実際にはラスゲアートやフラメンコ的なアポヤンド、トレモロ、ストロークといった奏法とはあまり相性が良いとは言えないギターだと思います。これはこのギターの音はマジメもののフラメンコを弾くに深すぎるし、音量のダイナミクスもピアニッシモ〜フォルテが広いタイプのギターで、フォルティシモの気持ちの良さがあるフルサイズのフラメンコギターには敵わないからですね。
それよりもむしろ、女性ギタリストがさらりとボサノバをつまびいたり、歌の伴奏に使ったりという使い方の方がギターの音のスムーズさ、丸さや深さを生かすことができます。
またこのギターの試奏動画は新品のギターを使ったものがほとんどなので、新品の弦の金属的な硬さが残った音になっていることが多いです。これは店頭での試奏も同じです。弦がある程度落ち着いて来た頃にはより柔らかく自然なサウンドになるので、これも要注意です。
以上、Cordoba コルドバ 55FCE Negra エレガットのレビューでした。
素晴らしいギターなので、是非試奏してみてくださいね!