Paco Castillo パコ・カスティージョとは
例えばフラメンコギターを本格的に習っている人に「本格的なフラメンコギターが欲しいんですけど、いくらくらいで買えばいいですか」と聞いてみましょう。
「うん、100万円くらいかな」と言われるはずです。フラメンコギターというのはそもそも世界が狭いために、本格的なものといえば全て手工品になってしまい、恐ろしく「本格的」なお値段になってしまうわけですね。
しかしそれではいかん!フラメンコギター人口が減少するばかりだ!と危機感を持ってお手頃でまあまあ本格的なフラメンコギターをたくさん輸入してくれている(?)クロサワ楽器が展開しているスペイン製ギターのメーカーがパコ・カスティージョです。
213F フラメンコギターの特徴
この213Fはパコ・カスティージョが展開しているフラメンコシリーズの入門モデルです。入門モデルとはいえ7万円ほどという値段設定ですが、非常に評価の良いギターです。
トップはスプルース単板、サイドバックはシカモアの合板です。持ってみると意外と重量がありますが、それでもやはりローズウッドを使用したギターなどに比べると軽量。ボディはかなり厚みがありフルサイズといった印象です。もちろんスペイン製ですが、この値段なので流石に機械を使った製作でしょう。
このギターの良さは何より、フラメンコらしい音色。巷に出回っている入門用フラメンコギターといえば、見た目に明るい木材を使いゴルペ板を貼っただけで音色といったら歯切れが悪く、音量も出ない、気持ちよい音の硬さもないといった具体で名ばかりのフラメンコギターであることが多いです。
見た目がフラメンコでも、弾いた弾き心地や音がフラメンコギターでなければ意味がありませんし、フラメンコギター独特の奏法であるラスゲアートやルンバなんかはいつまで立っても理想の音が出ず、感覚が掴めないでしょう。
その点パコ・カスティージョの音は、ややデフォルメされた印象はありますが、しっかりとフラメンコらしさを感じさせます。特にカポタストを使ったときのサウンドは、非常にバランスの良いニュートラルなフラメンコという印象。低音から高音までバランスよく出てきます。
例えばラスゲアートの歯切れのよさ。これはクラシックギターで練習していたり、見た目ばかりのフラメンコギターで練習していたりすると、どうやっても気持ちの良い音が出ないので、実現することができません。しかしパコ・カスティージョのギターならば、歯切れの良い音が出る弾き方が確実に存在する。それを追いかけて練習すれば良いというわけです。
ただ、少し深みのあるサウンドが特徴な213Fは、セカンドのバッキングよりファーストのメロディラインの方が魅力が存分に出るかもしれません。
単音弾きのアポヤンドの音量は、中途半端な入門用フラメンコギターとは雲泥の差です。パコ・カスティージョの213Fはボディが厚めなおかげが低音が出るギターなので、アポヤンドのときの深みは感動的です。
サイドバックが合板のためボディが響ききっていないような印象もなくはありません。しかしそれを考えても、この値段帯では最もフラメンコらしい音色が出ていて、上達の早いギターだと思います。
そこがこのパコ・カスティージョの最大の魅力ですね。
他のフラメンコギターに比べて
幸いスペイン製のギターを弾く機会がわりと多いので、せっかくですからパコ・カスティージョとそれらのギターの一つを比較してみましょう。
同じ値段帯で比べられることの多いアントニオサンチェス。
このギターはエレガットですが、EG-1と定価10万円を超えたクラシックギターです。素材がスプルースとマホガニーで、フラメンコギターではありませんが、参考までに。サウンドは非常に甘く、軽くつま弾いてボサノバなどに使いたい音色です。
他にアントニオサンチェスのフラメンコモデルも使っていたことがありますが、こちらは定価6万円ほどです。音色はパコ・カスティージョのフラメンコギターよりも軽めでより歯切れの良さを追求した感じ。セカンドギターでラスゲアートを多用したフレーズを弾くのであれば、より明るい音が出るのでおすすめですね。
いかがでしたか?
今回はパコ・カスティージョのフラメンコギターを紹介してみました。値段からは考えられないほど素晴らしい、フラメンコらしい音のギターですので、是非試してみてくださいね。