音作りの現場が求める音。音の再現力、SONY史上最高
液晶ポリマーフィルム振動板を採用。スタジオユースでの厳しい要求に応えるリファレンススタジオモニター (SONY公式サイト抜粋)
モニターヘッドフォン 注目のMDR-Z1000
2010年11月10日発売のSONYスタジオモニターでは最上級機種であるMDR-Z1000
今までSONYのヘッドフォンを使った事はなかったのだが、試すなら一度は最上級モデルを。
と言うことで待望を期して発売された新型スタジオモニターヘッドフォンのホットレビュー。
MDR-Z1000キャッチコピーに偽りなし
ファーストインプレッションは「絶対的な自信」
気に入っている曲を再生してすぐに気がついたのだが、まず音の位置が安定している、楽器ひとつひとつが不動で芯があるということ。
クラシックの演奏会などに行くと、曲の途中でコンマスがヴァイオリンソロを弾くことがあるが、まさにそのもの。硬いのではなく音に芯がある。そんな印象を感じた。
ばらつくことなく高次元で全ての音がバランス良く成り立っている。
ミドルクラスのヘッドフォンでありがちなヴォーカルだけが離れて聞こえるということはなく
ひとつひとつ素直に聞こえ、音が分離しているのに全体で見るとまとまっている。
XYZ軸のように奥行きさえも綿密に表現されている。
徹底してソースに忠実
SONY最上級のモニターヘッドフォンだけあって、制作した音をチェックしたり
全ての音を確認しながら歌を収録するような用途に向いているのがひしひしと伝わってくる。
今まで聞いていたCDを忠実に再現するとこんな音になるんだ。と、曲を変える度に思える。
ピアノジャズなどライブ音源でも立体感が伝わり、あたかもその場にいるようにさえ感じられる。
そのかわり古い収録環境の悪いCDに入ったノイズも忠実聞こえるので音源が良くないディスクは機器疲れるように思えた。
音の傾向はオンキヨーのデジタルアンプのようなストレートで硬めの音に聞こえる。
純モニターヘッドフォンを謳っているだけあって当然なのだけれど
ゼンハイザーHD650のように、ウォームで全体が膨らむ傾向もないので自分には味気ない。
だが原音再生の点で言えば確実にMDR-Z1000の方が優れている。
HD650とMDR-Z1000を比べながら何曲か聞いているとMDR-Z1000は特にエレキベースの音が優れていて、まるでライン6のベースアンプの前に立って演奏してもらっているように心地よく聞こえる。
他にもテクノ、ユーロビート、トランスと打ち込み系はもちろんの事、流行の初音ミクなんかのキャラクターソングも格段と綺麗に聞こえるのでインターネットの動画ユーザーにもお勧めできる。ただ上記のとおりビットレートが低い曲は悲惨なのでご注意。
ライブイベントでの使用
ライブハウスや収録スタジオ定番のMDR-CD900ST。
MDR-Z1000はあまり現場で採用されていないもの求められる方向性が近く、少なくても趣味のイベントやスタジオユースにも十分に対応できると思う。
実際にライブイベントでリニアPCMレコーダーの録音レベル調整の為にヘッドフォンを使ってみると、ライブで演奏している音がそのままの音でリアルタイムに伝わってくる。
ドラムの迫力など生演奏と比べられるほどヘッドフォンの性能は高い。
適正レベルに合わせることが安易に行えるだけでなく、指向性のマイクの調整など結果がすぐに分かるので録りたい音のイメージが浮かびやすくダイレクトに調整できるので録音したものを後で聞いてがっかりという事がなく、思った以上に快適に使える。
というよりも本来の真価を発揮しているのだ。
写真は地元の小さコンサートホールのPA。以前に日本テレワークの収録に立ち会ったときも音声担当の方がMDR-CD900ST使ってました。事実上の標準規格のようですね。
MDR-EX800STのようにソニーミュージックエンターテイメント扱いではないのでプロの人がMDR-Z1000を使っているかは不明です・・。
MDR-Z1000の装着感とアウトドアでの使用
イヤーパッドの表面はサラサラとしており、ぴったりと耳にフィットする。
外の音がカットされて自分の声も5分の1程になったようでイヤマフにもなる。
若干圧迫感があるものの動いている時もずれる事が少ないので歩きながら使う事も可能で
ケーブルと衣類が擦れて起こるタッチノイズも無いので屋外での使用にもお勧めです。
もちろん遮音性が高いので車の通りや混雑したとこでの使用は避けた方が良いですが。
試しにiphoneに直接差して視聴してみたところ、ハイインピーダンスの為にHD650のように音が極端に小さくなったり音が曇ることはない。
ただ再生機器の性能がそのまま音質に反映されるため、QA350と比べてしまうとiphoneの音は鮮度が落ちて、ずっと冷蔵庫にいれっぱなしのお刺身のような萎びた音質に感じる。
なのでipodやウォークマンに直接差して使いたい人は高級イヤホンを購入した方が音の劣化的な意味では良いかもしれない。
付属のコードは2種類あり、室内用とポータブルオーディオなので自由に付け替えができる。
この点はハイエンドヘッドフォンに共通するのだが、長期使用・断線時のコード交換が簡単に行える。
また、専用ポーチが標準で付属するので安心して持ち歩く事ができる。
MDR-Z1000の総評
現在の実売価格(4万円弱)を考えるとモニター・リスニング含め競合が多い価格帯なので
一概にMDR-Z1000をお勧めする事はできないものの、原音再生にこだわるならば金額以上の満足感が得られるのは間違いない。
視聴して自分の好みなら長年のパートナーになりえるヘッドフォンである。
また予算的に厳しい場合には、ひとつ下のクラスでMDR-ZX700という普及価格帯(実売7千円程度)がある。
MDR-Z1000と比べてこそ、立体感が少なく音の深みの不足感を感じるものの、1万円台の密閉型ヘッドフォンでは自分の中ではベストバイ。
MDR-Z1000の後にMDR-ZX700を聞いても、アコーディオンの音のつやめきなど失われずに表現されるのは驚いた。
同じ価格帯にSHUREのSRH840-Aがあるが、こちらは打楽器の緊張感があり、狭いスタジオでリスニングしているような良さがある。
ただSRH840にはMDR-ZX700のようなボーカルの分離感がないので、一長一短といえる。
Z1000を視聴して好みであれば同じコンセプトで作られているMDR-ZX700をお勧めしたい。