唯一手縫いを凌駕したマシンメイド。FRAY フライ

DSC_6846

FRAY フライのシャツが最高峰と呼ばれる理由

イタリアには一流と呼ばれるシャツファクトリーが数多く存在します。伝統を感じさせるルイジ・ボレッリ、手縫い袖付けで定評のあるバルバ、ヌケ感のある襟シェイプで時代をリードするフィナモレ…それら多くのブランドが手縫いを多用したナポリ仕立てを特徴としている中、フライは手縫いのハンドメイドでもなければ、ナポリのブランドでもない。

しかしそれでもFRAY フライのシャツは、最高峰のシャツの一つとして常にその名が上がるブランドです。

それはなぜか?

理由は簡単です。FRAY フライが単なるマシンメイドのシャツではなく、クオリティのために「ミシン縫いを選んだ」シャツであって、手縫いに劣っているどころか、その縫製への追求がむしろ他の手縫いシャツを凌駕する深さだからです。

ボローニャ生まれのシャツ

DSC_4422

さて、FRAY フライのシャツについて考える前に、少しイタリアの地域性についても考えてみましょう。イタリアはそれぞれの地域によって、まるで別の国であるかのように個性があることで有名ですが、中でも南北の違いは非常に大きい。

ミラノを中心とした北イタリアは、スイスやオーストリアの影響を色濃く受けた地域です。服作りもまた、スマートで洗練されていて、一切の無駄の無い仕立てとなっています。それに対しどちらかと言えばアフリカに近いとも言えるナポリでは、独特な工夫すなわち「ひねり」を用いた仕立てが特徴になっています。

またナポリは手縫いによる柔らかく、手のかかった仕立てが特徴ですが、逆に言えばスマートさや洗練さではなく、表情の豊かさにメリットがある。

日本には「精密さ」は作れても、イタリア人特にナポリ人の作る「表情の豊かさ」というものは中々作れない。そういうこともあって、日本では圧倒的にナポリ仕立てが人気なんですね。

対し今回紹介するFRAY フライは、ボローニャ生まれのブランドです。ボローニャと言えば、マセラティやランボルギーニで有名な都市であり、西ヨーロッパ最古のボローニャ大学がある学術都市でもあり、そしてフィレンツェからほど近い、文化の中心地でもある町ですね。

そしてこのボローニャは、ローマとミラノの丁度中間にある北イタリアの町です。このことからも、FRAY フライのシャツが手縫いを多用したナポリシャツとは異なる、洗練されたスマートさを特徴としていることが裏付けられています。

ちなみにこの付近では、電車ですぐ近くの町であるパドヴァにマシンメイド最高峰のブランドと言われている、Belvest ベルベストが生まれていますね。こちらも同じくマシンメイド最高峰です。

地域的なつながりを感じますね。

マシンメイドなのに優れている理由

DSC_6849

ではなぜ、ハンドメイドのシャツが主流の高級シャツに比べても、FRAY フライのマシンメイドシャツが最高峰と言われているのか。まずはマシンメイドという言葉について考えてみましょう。

そもそも服の業界では手縫い=ハンドメイド、ミシン縫い=マシンメイドと呼ぶことが多いです。実際にはハンドメイドシャツといっても全てを手縫いで作るわけにはいきませんので、ミシン縫いもするのですが、袖付けやボタンホール縫いなど重要なところを手縫いで仕上げているものを便宜上ハンドメイドと呼んでいます。

それに対しマシンメイドは、ほとんど全体的にミシン縫いにて仕上げているものを指しますね。

下の写真は左がBARBA バルバ、右がFRAY フライの袖付け部分です。バルバは外側を手縫いでとめてあり、フライはミシン縫いでとめてあります。

DSC_6851

ですが改めてFRAY フライのシャツのミシン縫いの部分を見てみると、それがどれほど精巧かが分かります。1cmに10ピッチの間隔のミシン縫いは恐ろしくわずかな隙間を残して、立体的に裁断された生地と生地を縫い合わせています。

重ねている部分も他のどんなシャツよりも幅が狭く、無駄がまったくありません。非常にドレッシーで、洗練された印象です。しかもよく見ると重なりは脇の下の方が幅が狭く、上の肩の方が幅が広い。

これは脇の下でごろつきが起きるのを防ぎつつ、肩で十分な可動域と耐久性を実現するためですね。その結果の着心地は、ハンドの袖付けに劣らないものとなっています。

そもそもハンドの袖付けは可動域を増やし、柔軟で自由な着心地を実現するために行われるものです。しかしFRAY フライはカッティング、シルエットそのもので素晴らしい着心地を実現している。

ハンドを多用した表情豊かなシャツがナポリの回答なら、完璧なシルエットをデザインし、それを厳密に再現することこそが「素晴らしいシャツ」に対する北イタリアの回答なのではないでしょうか。

袖付け以外の部分もそうです。他のシャツよりも高いレベルのシャツを作るために様々な研究をし、結果を出すためにミシン縫いを用いている。FRAY フライは結果を優先し、ハンドメイドという言葉のイメージに甘んじなかったということですね。

だからFRAY フライは、マシンメイドでありながらも常に最高峰という言葉を与えられているのです。

究極のシャツ生地

DSC_6847

最後に、シャツを考えるうえで縫製と並んでもう一つ非常に大きな要素となる、シャツ生地についても見てみましょう。上がフライのシャツの生地ですが、一見するとまあシンプルなシャーティングといった感じでしょう。

しかし実際に触れてみると、その滑らかさに驚きます。ちょうどロロピアーナの上質なカシミアを、薄くシート状に伸ばしてみたら、こんな手触りになるのではないかというような、しっとりとした感じです。

FRAY フライはまた、使う生地がかなりラグジュアリーなものばかりということでも有名なシャツですが、確かにこの生地はBrioni ブリオーニやAttolini アットリーニのようなブランドタグのついたシャツと同等のレベルではないでしょうか。

生地はイタリアやスイスの本当に上質なものだけを使っているとのことです。また、このシャツに関しても非常に番手が高く、軽やかでありながらしっかりとハリのある生地を使用しています。

直接肌に触れるものだけあって、ここは非常に大きなポイントですね。

とりあえずFRAY フライを試せ

一般に消耗品と言われているシャツですし、中々5万円という値段は出せるものではありません。しかしそこにはそれなりの理由があり、だからこそ世界中の人々にFRAY フライは愛されている。

それに生地は繊細とはいえ、ミシン縫いのFRAY フライは、ハンド多用のシャツよりもホツレなどの心配が少ないという地味な利点もあります。アレッサンドロ・ゲラルディのシャツのハンド風袖付けが一回目の洗濯(押し洗い)で盛大にほつれたのは、なかなかのお祭りでしたからね。

そういうわけで、もし素晴らしいシャツを探しているということであれば、とりあえずFRAY フライを試してみよう。

と、私もまたFRAY フライの魅力にひれ伏してその月並みなアドバイスをしてしまうことになるわけです。