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【薬コラム連載】腸があなたの幸せのカギを握っている

薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。

こんにちは。薬剤師ライターのたんぽぽむしです。
秋と言えば、きのこ、栗、さつまいもなど、美味しいものが多くてついつい食べ過ぎちゃう…なんて方も多いかもしれませんね。
そして、食べ過ぎたあとに残るのは「太る」という後悔と、便秘による不快感。
「便秘」はお腹が張って気分が悪いだけでなく、老廃物が血管から吸収され免疫機能が衰えて風邪をひきやすくなったり、肌荒れや頭痛、疲れを引き起こす原因になるとも言われています。
せっかく美味しいものを食べたのに、それが身体に悪い影響を与えてしまったなら、幸せ気分も半減してしまいますよね。
そこで今日は、「そもそも“便”って何からできているのか?」「どうして便が出にくくなるのか?」を考えながら、その対策(食事や生活、体操、困ったときの薬の使い方など)を具体的に説明するとともに、今は便秘でない方も、今後さらに健康で幸せな毎日を送るために、心がけたいポイントについてお伝えしたいと思います。
題して『腸があなたの幸せのカギを握っている』

では、便秘について説明する前に・・・質問です。

1. 便は何からできているのか?

どうです?大体わかるという方は多いと思いますが、完答できる方は案外少ないのではないでしょうか…。

まずは「食べ物のカス」…多分これは最初に出てきますよね。
他には「水分」…そうです。便の70~80%が水分なのです。
下痢便じゃなくてもそんなに多く水が含まれているのかと驚かれた方もいるかもしれませんね。
そして「腸内にいる細菌の死骸や一部生きている菌、腸の細胞のはがれたものなど」…ここまで答えられた方がいたら、便のことをよく勉強されていてホントに素晴らしいです。
便がこれらによって構成されているということは、これから説明する便秘解消法を理解する上で大事な知識となりますから、頭の片隅において続きをお読みください。

では、引き続き質問です。

・あなたの排便回数は週に2回以下ですか?
・感覚的に排便4回に1回以上の割合で、次に当てはあることがありますか?
 強くいきまないと便が出ない。
 ウサギの糞のようなコロコロ便や硬い便が出る。
 排便後にまだ便が残っているような、すっきりしない感覚が残る。
 肛門当たりが詰まった感じがする。
 便が出ないので、手でお腹を押さえたり、誰かに便をかき出してもらうことがある。

以上6つの項目うち2つ以上に「はい」と答えた方は「便秘」に当てはまりますが、いかがでしょうか?

2. なぜ便が出にくくなるのか?

大腸がんなど腸の病気や、糖尿病・甲状腺などの内科系の病気、そして薬の副作用によっても便秘になることがあります。
けれども今日は、それ以外で特に原因がわからず皆さんを悩ませる便秘(機能性便秘)について考えていきたいと思います。
(血便や激しい腹痛、嘔吐、発熱、しこりなどの症状がある方、自分の便秘の原因が病気または薬によるものかもしれないと思われる方は、まず医療機関に受診・相談してくださいね)

それでは、いよいよ便秘の原因について考えていきましょう。
一般的には「偏った食事」「ストレス」「運動不足」が挙げられます。
それでどうして便秘になるのか、具体的に

1  便のかさになるもの(食事量や水分)や善玉菌の不足
2  大腸の蠕動運動(便を押し出す力)の弱さ
3  直腸・肛門付近の筋肉や感覚の低下

と3つに分けて考えていこうと思います。

 

1 便のかさになるもの(食事や水分)や善玉菌の不足

「便は何からできているのか?」の項でお伝えしたように、まず便の70~80%は水分でできています。ですから水が不足していたら、当然、便は出にくくなりますよね。
出にくい便は、腸内に長くとどまるうちに、さらに水分を奪い取られて硬い便になり、一層出にくくなるという悪循環に陥ります。
夏場は特に体温調節のために身体の中の水分が「汗」として体外に出され、結果として体内の水分が不足します。夏に便秘になりやすいのはそのためです。

【便秘解消のために】
まずは、意識してこまめに水分を摂ってください。
一度にたくさん飲んでも吸収されにくいので、回数を多くした方がよいです。
朝、起きてすぐにコップ1杯の水を飲むことは、図1にも示されるように、胃が刺激されて脳から腸に指令がいくという点でもお勧めです。
冷水を飲むという方法もありますが、個人的には身体にやさしいお白湯をお勧めします。
同じ水分でも緑茶や紅茶、コーヒーには、便を硬くする「タンニン」や利尿作用のある「カフェイン」が含まれるので控えると良いでしょう。

次に、食事。
ダイエットなどであまりにも食事量が少ない方は、便のかさになるものが足りないので出にくくなることは分かると思います。
では、たくさん食べているのに出にくいのはなぜか?
それは食べているものの種類に問題があるかもしれません。

便秘解消のためにお勧めなのは、何といっても「食物繊維」
栄養学の分野においては、身体の働きを助け、調子を整える「機能性成分」に分類され、「水溶性」と「不溶性」に分けられます。
食物繊維は腸内を移動しながら不要物をからめとって腸内をお掃除したり、排便を促して便秘を予防・改善したり、大腸がんや糖尿病・脂質異常症のような生活習慣病にも効果があります。
では、具体的にはどんな食品が当てはまるのでしょうか?

水溶性食物繊維:果物、豆類、こんにゃく、海藻、納豆・オクラ・モロヘイヤなどネバネバ食品など

…腸内をゆっくり移動するのでお腹がすきにくくなり、食べ過ぎが防止できます。糖分の吸収を抑えたり、添加物などの有害物質やコレステロールを包み込んで身体から出す働きがあります。

不溶性食物繊維:大根やゴボウなど硬い根菜、きのこ、玄米やライ麦のような穀類の外皮、豆類、ネバネバ食品など

…水を吸収して膨らみ、腸を刺激し動かすこと(蠕動運動)で便を出やすくします。

また、食物繊維は腸内にいる細菌のえさとなるので、善玉菌を増やしたり、悪玉菌が悪さをしないよう抑えたりといった効果もあります。

それでは、次に、腸内細菌の働きについて。

話が広範囲に及びますが、腸内をイメージするために大事なところなので続けます。
私たちの腸内には100種類、100兆個以上、重さにして1.5kgもの細菌がいると言われ、それらは「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」
と大きく3つに分けられます。人によってそのバランスは異なり、同じ人でも体調により変化します。また、食事を工夫することで「善玉菌」を増やすことも可能です。

 

「善玉菌」ビフィズス菌、乳酸菌など
・免疫力アップ・アレルギー症状の軽減
・感染の防御
・消化・吸収を助ける
・身体にとって有益なビタミンBやKの生成
(具体的には、口や目の粘膜を保護し風邪をひきにくくする。
細胞の再生を助け、美しい肌や髪に。
タンパク質分解を助け、精神安定物質セロトニンやドーパミンの合成に働く。
老化やガンを招くと言われる過酸化脂質を分解etc.)
・腸管運動の促進

「悪玉菌」ブドウ球菌、大腸菌、ウェルシュ菌など
・腸内の腐敗が進み、免疫力が落ちる
・毒素・発がん性物質の生産
・ガス・便の形成
・便秘・下痢
・高脂肪食を好み、太りやすくなる

「日和見菌」バクテロイデス、連鎖球菌など
・腸内で有利な菌の働きを助ける
・健康な時にはおとなしくしているが、身体が弱ると悪い働きをする。

【便秘解消のために】
・水溶性、不溶性にこだわることなく、まずは、海藻、こんにゃく、きのこ、野菜などの食物繊維をよく噛んで食べるとともに、ヨーグルト、漬物、納豆などの発酵食品も積極的に摂るよう心がけましょう。
・悪玉菌による腐敗が進み、発生したガスによりお腹が張っている場合には、まずはおかゆやうどんなどの炭水化物を少量よく噛んで食べ、腸が動くようになってから食物繊維を摂ると良いでしょう。
・食品と合わせてオリーブオイルを摂ると、便を柔らかくして滑りがよくなるのでさらに効果的です。オリーブオイルが苦手な人は、オレイン酸の量は減りますが、ごま油で代用しても構いません。

【便秘薬の種類】
“酸化マグネシウム”
腸内の水分を保ち、便を柔らかくして出しやすくします。
医療用でも市販薬でもありますが、癖になりにくい薬です。
ただ、この薬を飲む場合は、とにかくこまめに水を飲むこと、大量の牛乳や乳製品(大人の場合は目安として1日1ℓ以上)を摂らないことに注意してください。

2 大腸の蠕動運動の弱さ

蠕動運動というのは、腸の収縮と拡張により内容物(便)を運ぶ運動です。昼も夜も1秒に1cmくらい動きます。
また、蠕動運動は、副交感神経の働きにより支配されています。
副交感神経というのは、リラックスしているとき、休息しているときに働く神経で、対になる交感神経は、人が活動しているときやストレスを感じるときに働く神経です。
ですから、人は怒ったり興奮したり、ひどくストレスを感じるときには交感神経が優位に働き、腸の働きが弱くなるので便が出にくくなるのです。

また、腸の運動は、腹筋や背筋など腸の周りにある筋肉によって支えられています。そのため、運動不足により筋肉量が低下すると、腸の蠕動運動も弱くなります。
男性に比べて女性の方が便秘になりやすいというのは、この筋肉量の差によるところが大きいです。

【便秘解消のために】
・まずはリラックスするため大きく深呼吸。
・副交感神経をしっかり働かせるため、夜更かしをせず、睡眠時間を確保しましょう。脳を休ませると腸もしっかり働いてくれます。
・筋力を付けるために、軽く汗ばむ程度の運動をするよう心掛けましょう。歩幅を広めに意識したウォーキングなどでもよいです。
・布団にうつ伏せになって左右にごろごろ転がることで腸の内容物を動かしたり、腹部の右下部や左上部を体側から手で挟み込んでマッサージするのも効果的です。特に、右下部は内容物(便)が腸内を下から上に向かって通過するところで、腸の運動が弱いと詰まりやすくなります。外から力を加えて補助してあげるとよいでしょう。

【便秘薬の種類】
癖になりにくく、比較的安心して使えるのは、①で紹介した”酸化マグネシウム“ですが、それだけでは効果がない場合には、刺激性の下剤を使います。
成分としては“センナ、センノシド”“ダイオウ”“ピコスルファートナトリウム”など。
6~10時間くらいで効果が出るので、寝る前の服用が一般的です。
ただ、個人的には、癖になって徐々に効かなくなるので、本当に困ったときだけ使用することをお勧めします。
また、このタイプの薬は、小児や妊婦さんは基本的に使わない方がよいでしょう。
小児には発売以来副作用が出ていないと言われる”マルツエキス“がお勧めです。

3 直腸・肛門付近の筋肉や感覚の低下

高齢者や、便意があってもすぐにトイレにいけない状態が続く人、そして便秘薬を常用している人は、直腸に便が移動しても感覚が鈍り、脳への反射や脳からの排便指令が出にくくなります。

【便秘解消のために】
・毎朝、決まった時刻に、トイレに座る習慣を付けましょう。
・便意をもよおしたときには、我慢せず、排便するよう心掛けましょう。
・感覚を鈍らせないため、下剤(特に②の刺激性下剤)の使用は控えましょう。

以上、今回は腸や便について伝えてきましたが、まとめます。
食物繊維や発酵食品を積極的に摂り、腸内の善玉菌を増やすということは、便秘解消だけでなく、免疫力を高めたり、病気や老化を防いだり、肌や髪などの質を上げたり、ひいては幸せホルモンと言われるセロトニンなどの神経伝達物質を増やすことにもつながります。
ビタミン剤をサプリメントで取るよりも、腸内細菌を整えてしっかり働いてもらう方がずっと効果が高いです。
逆に、悪玉菌が増えると、身体に悪い脂っぽい食事を欲するようになり、さらに腸内で腐敗が進んで、身体も心も荒んでゆきます。
手軽に食べられるインスタント食品やコンビニ弁当など、化学的に作られた添加物が入った食べ物は腸内細菌にダメージを与えます。
ヒトは野菜や豆、海藻などをよく噛んで、素材のもつ自然のおいしさを感じながら、ゆったりとした気分で楽しく食事をすることで、便秘も解消され、心豊かな毎日を送ることができるのです。
みなさんも、腸内を善玉菌でいっぱいのお花畑(フローラ)に整えるよう、次の食事からさっそく意識してみてはいかがでしょうか?

参考文献
今日のOTC薬 改訂第3版 南江堂
一生太らない体をつくる「腸健康法」 藤田紘一郎 大和書房
最新版 知っておきたい栄養学 白鳥早奈英監修 学研プラス


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