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【薬コラム連載】私はこうしてやけどを治しました


薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。

こんにちは。ライターたんぽぽむしです。

先日私は料理の最中にゆで汁(熱湯)が手にかかり、慌てて鍋を置いたため、またお湯がはねて・・・という「やけど」を経験しました。

多少のやけどはこれまでにも何度も経験しているため、最初はそれほど心配していなかったのですが、通常なら流水で数分冷やせばピリピリ感もなくなるところが、今回ばかりは痛みが尋常でなく。手を水に浸けていれば全く痛みがないのですが、水から出して数秒経つと激痛が走りまして。息子の下宿での日曜夕方のできごとだったため、このまま県外で救急病院に受診すべきか、とりあえず急いで帰って自宅近くの救急病院にかかるか、それとも翌日受診でも大丈夫か?等々、結構焦り考えました.

結局、救急電話対応の看護師さんのアドバイスにより、「保冷剤で患部を冷やしながら新幹線で自宅まで戻り、2時間以内に自宅近くの救急病院で外科医に診てもらう」つもりで新幹線に飛び乗りましたが、車内で調べると自宅近くの救急には内科と小児科しかなく、負傷していない左手を使って見つけたやけどの手当て「ラップで患部を覆い空気に触れさせない方法」のアレンジで、持っていたポリ袋で患部をぴっちりと覆ったところ、なんと激痛はほぼおさまったので、受診はせずに自分で手当てし、割と短期間に痕も残さず治すことができました。自分にとっては「衝撃的かつ感動の体験」だったので、今回はそのことについて書きたいと思います。

題して『私はこうしてやけどを治しました』

まず、熱湯や蒸気などの熱源によって

やけど(火傷)したときの初期の基本的対処について。

  • 患部を水で冷やす。(ピリピリした違和感がなくなるまで。目安は15~30分くらい)

服の上から広範囲にかかった場合は、無理に脱がせず、服を着たまま水をかける。

水をかけられない部位や範囲が広い場合は濡らしたバスタオルなどで覆う。

強い水流を患部に直接当てないよう注意する。

その後、患部が腫れてくる可能性があるので、指輪やブレスレットをしていたらはずす。

氷で冷やすと凍傷になることがあるので注意。

保冷剤で冷やす場合は直接患部に当てず、何かで包んで使う。

  • 患部が空気に触れないよう保護する。

(消毒はしない)

白色ワセリン(なければオリーブ油やベビーオイルなど)を塗った食品用のラップで覆い、上から包帯やタオルなどを巻く。

ハイドロコロイド素材の絆創膏(キズパワーパットなど)があればそれを貼り、1日1回患部を水洗いして交換する。(夏場はもっと頻繁がよい)

ガーゼは皮膚を乾燥させるので使用しない。

それでは、やけどについて詳しく解説するにあたり、まず皮膚の構造と役割から説明します。

皮膚の構造

 

皮膚の役割

  • 病原菌などの侵入を防ぐ(表皮)
  • 体内の水分保持 (表皮)
  • 暑いときには汗を出させ、寒いときには毛を立たせたりして、体温を調節する (真皮)
  • 外部からの刺激(熱い、冷たい、痛い等)の感知 (真皮)
  • 汗腺や皮脂腺から汗や皮脂の排泄 (真皮)
  • 外部からの衝撃を和らげる(皮下組織)
  • エネルギーを脂肪の形で蓄える (皮下組織)
  • 体内での温度バランスの調節 (皮下組織)

こうして挙げてみると、生まれたときから私たちの身体にはもれなく付いていて、あまり意識もしなかった「皮膚」というものが、実はたくさんの重要な役割を果たしていたことに今更ながら驚きます。

そして、その皮膚が何らかの原因により傷ついたときには、身体への影響が大きく、上記の機能が果たせなくなれば、生命を落とすこともありうるというわけです。

では、やけどの程度はどうやって判断するのでしょうか?

それは、シンプルに「広さ」と「深さ」の2点からです。

やけどの広さ

 

上の数字を目安に、やけどの広さを確認します。

やけどの範囲が体表面積の20%以上(子どもや高齢者は10%以上)になると、熱傷ショックを起こして生命にかかわる危険性があるので、直ちに大きな病院に受診する必要があります。

手のひらで覆える範囲が体表の約1%で、その範囲以内で、赤く浅いやけどならば、市販薬でも治療が可能です。

やけどの深さ

度熱傷

表皮まで:皮膚の赤みと痛み、軽い腫れ(ひどい日焼けと同じ状態)/ 数日で治癒

浅達性度熱傷

真皮上層まで:強い痛みと腫れ、水疱ができる。水疱底の真皮が赤い / 1~2週間で治癒

深達性度熱傷

真皮深層まで:感覚が鈍く麻痺し、色は白く乾燥気味。水疱底の真皮が白い。水疱ができないこともある / 3~4週間で治癒

度熱傷

真皮全層から皮下組織まで:血流は遮断、皮膚全層の壊死あり。痛みはなく、皮膚が炭化状態 / 完治までには数か月が必要

深達性Ⅱ度以上だと色素沈着やケロイドなど痕が残ることあります。

*私の場合は、右手の人差し指から薬指まで3本、第一関節から指の付け根まででした。手のひらで覆える範囲なので1%未満。(電話のときに救急の看護師さんにも、「範囲はどれくらい?」と聞かれましたね。)

2本の指は完全に水疱に、もう1本もあやしい感じで、痛みが強く、指全体に赤く腫れていたので、自分では「浅達度Ⅱ度」と判断しました。本来ならば受診すべきところでしょうが、深達度Ⅱ度ではなさそうだったのと、ポリ袋法(持っていたリンデロンVG軟膏を塗り、ビニール袋で1本ずつ指を覆う方法)でだいぶ痛みが治まったので、受診はせずに自分で手当てしてみることにしました。

家に着いて、もう一度患部を水洗いし、ティッシュで水分を拭き取り、家にあった「キズパワーパッド」で1本ずつ指を覆い、指を曲げるとはがれそうだったので、上からテープで留めました。あっ、その前に患部をなるべく濡らさないよう注意しながら、シャワーも浴びましたね。左手だけで髪を洗うのは、結構大変でした。精神的には、当初のドキドキはおさまっていましたが、後で考えると、まだ完全に落ち着いてはいなかったと思います*

どんなときに医療機関を受診すべきか?

・水疱(水ぶくれ)がある。赤色ではなく紫色や白っぽいやけど(Ⅱ度熱傷以上ということ)

・顔、粘膜、関節、陰部のやけど

・痛みが続いている

・市販薬などを使って様子をみていたが、2週間経っても治らない

・範囲が広い(大人で体表の20%以上、子どもや高齢者は10%以上。あるいはⅡ度熱傷が体表の15%以上、Ⅲ度熱傷が2%以上)

・熱以外(電気や化学薬品など)によるやけど。カイロや電気毛布などの低温やけど(長時間によるやけどは思ったよりも症状がひどい)

・糖尿病の人、免疫抑制剤や副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)で治療中の人

市販薬で対応できるのは?

・範囲が狭く、手のひらで覆える程度

・赤くて浅い(深いところまで到達している場合は白っぽい)

・ヒリヒリ痛む(深いところまでの場合は痛みを感じない)

市販のやけど薬の成分は?

・乾燥を防ぎ皮膚を保護する:白色ワセリン、親水軟膏、オリーブ油

・被膜を作り、傷を治し、炎症を抑える:酸化亜鉛

・血行をよくし、薬の吸収をよくし、治りやすくする:ヘパリン類似物質、トコフェロール酢酸エステル(VE)、ビタミンA、パンテノール

・表皮や肉芽が作られやすくする:アラントイン、エルゴカルシフェロール

・炎症やアレルギー症状を抑える:デキサメサゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル(副腎皮質ホルモン:ステロイド)

・痛みを緩和する:リドカイン、ジブカイン

・肉芽が作られやすくする:紫雲膏(漢方薬)

*私は、最初だけ化膿止めと炎症を抑える目的で、ステロイドと抗生剤の入った塗り薬を塗りましたが、やけどの数時間後にはキズパワーパッドを貼っていて、水疱が破れたところも化膿しそうもなかったので、翌日からは塗り薬は止めて、キズパワーパッドのみにしました。

薬剤師という仕事柄、右手は動かし続けるし、水にも濡れるため、1日経つとパッドが剝がれそうになり、また傷口からの分泌液(治すための液)で白く盛り上がったため、1~1.5日ごと、割と頻繁に取り換えました。(2~3日貼ったままにできると書かれている商品もあります)どの指の水疱も破れたので、自分でめくって(はさみで切って)しまいましたが、日を追うごとに、破れたところから出る水が減り、ピンク色のツルツルした皮膚が下から再生されてゆきました。一番軽症だった薬指は、1週間くらいでパッドを貼るのを止めましたが、まだ皮膚の一部、白い皮がペリペリと剥ける“日焼けの痕状態”だったため、ヘパリン類似物質クリーム(ヒルドイドクリームなど)を塗ったところ、それから数日ですっかり元に戻りました。

残りの2本の指も、薬指より1~2日後から同様の処置に変えたところ、2週間以内に完治。やけどの痕は全く残りませんでした。

治療中の食事は、いつもよりも多少ビタミンとタンパク質を多めに摂り、皮膚の再生が促進されればと意識した気もしますが、それ以外は、特別なことは何もしていません*

ポイントは

  • すぐに冷却
  • 乾燥させないよう、患部を覆う(白色ワセリン+ラップかキズパワーパッドで)

この2点です。

そして、病院にかかる場合は、

“皮膚科”、“皮膚形成外科” それ以外では“外科”です。

最近は、消毒はしない(かえって悪くなる)ので、消毒などの自己処置はしないで受診してください。

また、軽いやけどのときには、アロエの果肉も有効かもしれませんが、民間療法の「味噌」は、やめた方がよいです。

それから、やけどをしたところは、その後、数か月は直射日光に当てない方がよいようです。

なぜキズの消毒しないのか?また湿潤療法(キズパワーパッドなど)についても、もっと詳しく知りたい方は、

湿潤療法のパイオニア 練馬光が丘病院 傷の治療センター科長

夏井 睦(なつい まこと)氏の著書

「キズ、やけどは消毒してはいけない」 主婦の友社 をご覧ください。

湿潤療法をしてくれる病院を探すには

http://www.wound-treatment.jp/

また同氏による

「炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学」光文社新書 も、個人的にはとても面白いと思うので、興味のある方は読んでみてください。

今回は、前回に引き続き、皮膚関係のお話でした。

一家にひとつキズパワーパッドがあると便利だと実感した出来事でした。

では、また。


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