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第2回 ライター田中のメンズファッション講座【服の品質 編】

「ライター田中のメンズファッション講座」と題して、メンズファッションの考え方や服の選び方、自分のスタイルの作り方などを総合的に解説していく連載です。

前回は大人が着るべき服はどういう服なのか、ということを解説しました。特にドレスダウンの考え方は非常に役に立つので、ぜひ覚えておいてくださいね。

今回は第2回「服の品質」編です。

品質の良い服を着るべき理由

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メンズファッションでは品質が特に重要になります。これは前回の記事でも少し書きましたが、今回はより掘り下げて解説していこうと思います。

まず多くの人はこういう疑問を持つでしょう。

「なんで品質にこだわらなきゃならないの?」

疑問を持つのも当たり前です。前回出てきた大学生ブランドであるHARE  ハレやRAGEBLUE レイジブルーであれば5000円程度のジャケットが、イタリアのラグジュアリーブランドであるKiton キートンのジャケットになると70万円になってしまう。5000円ではジャケットのボタンも買えなくなってしまうわけです。これを不思議に思わない方が不思議ですね。

しかしその70万円のジャケットはともかく、9万円のジャケットは男であれば持っていた方がいいアイテムだと私は思います。それはなぜか?9万円のジャケットを注意深く選べば、70万円のジャケットとうっかり見間違えてしまうほどのクオリティの物を手に入れることができるからです。

では品質の良い服を着るべき理由とは?

それをこれから解説していきましょう。

品質の良さで着こなしがお洒落、上品に見える

品質の良い服はまず、見た目が違います。そしてその見た目の違いは必ず、着こなしに影響をもたらします。

例えば同じブルーのジャケットがあったとします。一つは品質の良くないジャケットで、縫製は平面的で歪んでおり生地はポリエステル。もう一つは品質の良いジャケットで、生地は目の詰まったウール、縫製は手縫いを多用した立体的なシルエットです。

 

右の男性の着こなしは大変お洒落ですが、この大変上質なハンドメイドのジャケットと左のものとを取り替えて着せたら、同じようにお洒落な着こなしにはならないはずです。

具体的な違いは数多くあります。まずは生地。ポリエステルの青と上質なウールの青では発色が違うため、品の良さと奥行き、光沢感がまったく異なります。

次にシルエットです。まるで帯を締めていないハッピのようなシルエットの左のジャケットに比べ、右のジャケットは身体にしっかりと沿っている。襟の太さや着丈、袖丈なども全てクラシックなので大人っぽい色気がありますね。

私には残念ながらこの写真から服のブランドを判別することは出来ませんが、イタリアのナポリ仕立て特有のラペルのダブルステッチや、繊細で丁寧な手縫いによるボタンホール、太めのラペルの返り方などを見ていると、おそらくはかなりの品質ではないでしょうか。生地はホップサックウールと呼ばれるざらりとした質感のもので、最高級ではなくとも、コストパフォーマンスに優れたものであるはずです。

「ブランド品もユニクロも変わらないだろ」という意見をよく耳にします。確かに安定した品質を提供しようと努力しているユニクロと、ブランドネームで高いプライスを付けているブランドのジャケットであれば、見た目の印象は変わらないか、ユニクロの方が良い可能性も高いです。

事実、最近ユニクロの縫製は本格的なものも増えており、例えばベトナム製でポケット部分にAMFステッチ(飾りのミシンステッチ)の入ったパンツなんかは、雑誌を席巻しているイタリアのインポートパンツとパッと見ではまったく変わりないものとなっています。

しかし生地代だけでも定価の数割になってしまうような良質な生地を使って、身体に沿うようなシルエットを作るために手作業で立体的な裁断を行い、手縫いとミシンを使い分けて時間を掛けて縫製をするようなジャケットと、ユニクロのジャケットでは流石に見た目の印象が違います。

このように品質の良さは着こなしを左右する。だからメンズファッションでは品質にこだわるべきなのです。

品質が良いと、余裕があるように見える

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品質が良い服を着るべき理由の一つは、余裕があるように見えることです。もちろん品質が良い物は高級ですから、お金に余裕があるように見えるのは当然です。しかしそれだけではありません。着ているものの品質が良ければ、日々の生活や、感性や、性格にも余裕があるように見えるのです。

品質の良いものを着ているということは、日々服に気を使っているということになりますよね。例えば非常に気持ちの良いカシミアの仕立ての良いジャケットを着ている人がいたら、その人にはいくつかの余裕があります。

もっとも分かりやすいのは金銭的な余裕ですね。

カシミアは高級な生地ですし、それで仕立てのいい物を探したら10万円は超えてしまうでしょう。またクリーニングも、もしこだわるのであればかなりの値段になってしまいます。

次に振る舞いの余裕です。

これは考えてみると当然のことですが、色々な動作が丁寧な人でなければカシミアのジャケットは着ることができません。

すなわちその人はジャケットを脱ぐことが出来ないホテルのディナーでも、丁寧に一つ一つの食べ物を取って口に運び、上品に食べる余裕がある可能性が高いということです。また車から降りるときにもジャケットが車のボディに触れてススがついて黒くなってしまわないよう気をつけることができるということも分かります。

またこういった服への気遣いは、時間的な余裕と気持ちの余裕がなければできませんよね。

このように、品質の良い服を着ることにはいくつかの余裕が必要ですし、逆に品質の良い服を着ている人は服への最低限の気遣いをする余裕があるということになります。

それを人は無意識に感じ取ります。

もちろん服が全て、なんてことは一切ありませんが、その人が質の良い服を着ていたならば、人は無意識にその人から余裕を感じるわけです。そしてその余裕は大人の男らしさと品の良さにつながります。

スーツが良ければビジネスチャンスを掴める

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メンズファッションでは品質が大事だということを解説していますが、特にスーツに関しては着こなしのディティールとスーツの品質でほとんどが決まってしまいます。

そして着こなしがしっかりと出来ている場合、良いスーツを着ることは他の人よりもビジネスチャンスを掴みやすくなるということもなります。

こんな例で考えてみます。例えば自分がこれからスタートしようとしているビジネスプランをサポートしてくれる人間を探しているとして、その人間を知っている、そういった人達との強いつながりを持っている人が間近にいたとしましょう。

そこであなたがポリエステルのひどい仕立てのスーツを着て、自分が新しいビジネスプランを持っていて、それをサポートしてくれる人間を探しているという話をしにいったとしましょう。

すると相手は、特に素晴らしい人脈を持っているいるような人、本当の意味で高い立場にいる人ほどこのように感じるでしょう。

「こんな貧相な男が新しいビジネスを成功させることができるはずがないだろう。そもそも自分の武器になるスーツにさえ、10万円の投資が出来ない人間が、大きなビジネスに適切な投資をして成功することができるはずがない。こんなに醜いスーツをひどいシャツに合わせて着ていても何も思わないくらいだから、繊細さも無ければ感性も美的感覚も乏しいだろう。しかも自分のスーツと身なりにさえ気を遣うことのできないこの男が、他人に対して気を遣うことができるだろうか。私の大事な友人達に失礼なことをしてしまうかもしれないし、自分が恥をかくかもしれない」

と、そういうわけで答えは「NO」となってしまう。

その人が立場の上の人と接することのできるマナーや気遣いを最低限持っていそうか、見識が深そうでビジネスを成功させるような器量や敏感さ、センスなどを持っているか。そういったものはスーツの着こなしと品質を見れば一瞬で分かってしまうでしょう。

これは極端な言い方ではありますが、「スーツの生地や仕立てに関心を持って、装いに気を使っている人」は、「その他の様々なことに関心があり、いろいろな話題について話ができる人」「些細な気遣いができる人」に見え、逆に「スーツに気を使っていない人」は「いろいろなことを楽だから、安いからといって判断する、安直で自分の都合を優先する人」に見えてしまうでしょう。

「スーツの良し悪しなど分からないだろう」と思われるかもしれません。

しかし、特に歳の上の女性などはすぐに質を見抜きます。私がロロピアーナというイタリアの上質な生地ばかりを扱うブランドのウールを使ったチェスターコートを着ていたときですが、ある貴金属・ジュエリー店の役員の女性に「素晴らしい生地のコートをお召しですね。触ってもいいかしら?」なんて言われたりしたものです。

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またあまり想像できないかもしれませんが、わりに地位や資産を持っているような人達の間では、日本でもブラックタイ指定、つまりタキシード指定のパーティがカジュアルに行われていたりします。このようなことになれている人々は、スーツの良し悪しなどはそのシルエットや生地感などからすぐに見て取るでしょう。

何も50万円のスーツを買う必要はありませんが、自分で常に品質に注意しながらスーツを選ぶのは非常に大切です。

 

服の品質の良さが「入場券」になる

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例えば新婚旅行でヨーロッパへ行き、特別な旅だからと奮発して最高級の部類に入る5つ星ホテルを予約したとしましょう。

当日いつもの観光のつもりで品質の良くないものを着ていたとしたら、恐ろしく不当な扱いを受け、ひどく不快な気分になるようなことが起きるかもしれません。例えばスタッフに馬鹿にされたような態度を取られたり、バーやラウンジで「本当に客なのか?」と尋ねられたりといったことです。

イタリアのローマでこんなことがありました。

私はそのとき有名なホテルのインペリアルルームという、特別な部屋に泊まっていました。この部屋はエクスクリューシヴ・ラウンジといって食事やお酒などのドリンクが無料で提供されるラウンジを利用する権利がついていて、いつでも何度でも利用することができます。最高級のシャンパンも一流シェフの作るスイーツも食べ放題です。

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さてそのラウンジを使うとき、私は常にジャケットを身につけているか、もしくはシャツを着ていました。ジャケットはシルクウールを用いたハンドメイドのもので、シャツはイタリアを代表する高品質な紳士服ブランドと言われているBrioni ブリオーニというブランドのものでした。

受付のスタッフは時間によって別の人でしたが、何度利用しても何も言われることなく、にっこりと「ようこそ」と言われるだけでした。

しかし一度だけ、ちょうど慣れてきた頃ですね、朝食をとろうとしてうっかりしていて就寝時に着ていたカットソーのままラウンジに行ってしまったわけです。すると受付のスタッフがすかさず私を呼び止めると、ルームナンバーを控えるからルームキーを出してくれ、と聞きました。

「なるほど、服装で判断していたのか」と改めて感じさせる一件でした。

このようなヨーロッパの格式高いホテルやレストランはもちろんのこと、日本の一流ホテルやラウンジ、レストラン、バーなどではその人の着ている服の品質で、その人がその場にふさわしいかを判断しています。

他にも高級車のディーラーもそうですね。例えば乗っていたBMWが事故で壊れて、型落ちの代車でBWMやアウディなどに車を見にいくとしましょう。もしも着ている服の品質があまりに悪ければ、もはや冷やかしだと思われて相手にされないかもしれません。

しかしそんなときに品質の良いものをセンス良く着ていれば、「この人は何か事情でこの車に乗っているんだな」と思わせる力があります。

このように品質の良さは「入場券」となります。品質の良い服が大事な理由はここにもあるのです。

 

いかがでしたか?

ライター田中のメンズファッション講座ですが、今回は服の品質の話をしてみました。ともすると色やデザインだけで選びたくなってしまうファッションアイテムですが、やはり品質の良さは色々な面から重要になってきます。

品質で服を判断するという視点を持ち続けていくことが大切です。

次回は服の着心地についてを買いていこうと思います。

 

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