久しぶりに映画館でアニメを観てきました。夜の上映だからか、20代から40代がおおく、中には老夫婦もいました。観客はシアターの半分ほどで、静かで穏やかな方が多い印象でした。
映画「ルックバック」を観て、強く印象に残ったのは、物語が藤本タツキの体験や感情をまるで平面化したかのように表現されている点でした。
これは悪い意味ではなく、意図的に平面的に描くことで、まるで記憶を辿るような叙事的な雰囲気が漂っているのが特徴です 。
※ここからネタバレありです!!まだ観てない方は、お戻りください。
ストーリー紹介
物語は、学校新聞に4コマ漫画を描いていた藤野が、引きこもりの京本という少女と出会い、創作への情熱を再確認するところから始まります。
藤野は、自分が上手いと思っていた絵を京本の圧倒的な画力に圧倒されますが、その挫折をきっかけに絵にさらに没頭します。一方、京本も藤野の影響を受けて引きこもりをやめ、大学進学を目指すまでに成長していきます。しかし、物語の中盤で京本が事件に巻き込まれ、藤野は再び創作に対する熱意を失いかけます。
この映画は、二人が互いに「背中を追いかける」ように成長していく姿が描かれています。京本が藤野の背中を見て勇気を得たように、藤野も京本の存在に刺激されて再び創作に向かうのです。
この「背中」というモチーフが作品全体を通じて重要なテーマとして描かれており、互いに影響し合いながら成長していく二人の姿が感動的でした。
印象に残ったシーン
特に印象的だったのは、藤野と京本の間に見られる微妙な関係性です。
表面的には、藤野は京本をアシスタントのようにぞんざいに扱っているように見えますが、実際には藤野も京本を心から尊敬していたのだと思います。
しかし、その感情を素直に表すことができず、時折横柄な態度を取ってしまいます。これは、藤野のキャラではないと自覚している部分や、恥ずかしさからくるものでしょう。
一方、京本はそんな藤野に対して、自分が必要とされていることを嬉しく感じていると思います。藤野との関わりが、京本にとって大きな意味を持ち、引きこもりという自分の殻を破り、大学進学という新しい挑戦をする原動力となったはずです。この微妙な距離感と互いの尊敬が、二人の関係をより深いものにしています。
他にも、二人の両親の描写がほとんど登場しないのも特徴的でした。これにより、藤野と京本の二人だけの世界に没入でき、第三者の存在がほとんど排除されていることで、二人の関係に焦点が絞られています。
ところどころ、クラスメイトなど出てきていますが、重要なシーンは全て二人の世界で、他は補助的な役割でしかなかったと思います。
音楽と映像美
映画のもう一つの魅力は、その美しい映像と音楽です。haruka nakamuraによるピアノを中心とした楽曲が、藤野と京本の繊細な心情を映し出し、観る者の感情を引き込んでいきます。特に、二人の心情を表す山形の風景描写と音楽が相まって、非常に感動的なシーンが多数見られました。
まとめ
「ルックバック」は、創作の喜びと苦悩、友情と喪失、そして再生を描いた感動的な作品です。藤野と京本の絆がどのように深まり、互いに影響を与えながら成長していくのかが、観る者に多くの考えを与えてくれます。藤本タツキの描く独特な世界観と感情表現が、非常に印象的な映画でした。