渋谷で焼肉屋を経営してみよう!意外に利益が出ない厳しい業種?

経済・投資

「焼肉屋でもハジめて一発儲けようや!」
「とりあえず初期費用借り入れで、連帯保証人になってくれるだけでイイから」

地元の少し怖い先輩に このような言葉で誘われたらどうしますか?

焼肉屋を経営するというアイデアは、仮想通貨や投資のような実態が分かりにくいものよりマシかもしれません。しかし実際には、焼肉店の運営には予想以上に多くのコストがかかり、利益を上げることが非常に難しいことがわかります。

この記事では、渋谷で焼肉屋を開業した場合に必要な初期投資、日々の運営費用、そして見落としがちなコストを考慮した具体的な損益計算を紹介します。

憧れの「渋谷」に焼肉屋を出店してみよう!

渋谷は多くの人が集まるエリアで、集客力が非常に高いことから、飲食業にとって魅力的な立地です。しかし、賃料が高く、物価も高い都市であるため、経営にはリスクが伴います。
例えば、渋谷駅から徒歩数分の物件では、面積にもよりますが家賃が月33万円〜50万円が相場です。

焼肉店の初期投資

焼肉店を開業するには基本的に、スケルトン物件からの改装が必要になります。
内装が完全にない状態からスタートするため、ゼロから店舗を作り上げる必要があります。以下に、主な初期費用を詳しく説明します。

物件の詳細と初期コスト

所在地: 渋谷駅から徒歩3〜4分の好立地で、賃料は月額33万円の物件。築47年とやや古い建物であり、地下1階部分の店舗。
物件タイプ: スケルトン物件(内装や設備が一切ない状態)。そのため、電気、水道、排気設備などの設置から始める必要があり、初期費用がかさむことが予想されます。

坪数: 11.99坪(約40㎡)
保証金: 約400万円
礼金: 約36万円(1.1ヶ月分の賃料)
内装工事費: スケルトン状態からの改装には、1坪あたり30〜50万円かかることが一般的です。今回の物件は約12坪なので、360万〜600万円の範囲が予想されます。内装工事の内容には、座席配置、照明、厨房レイアウト、カウンターやトイレの設置などが含まれます。
厨房設備: 焼き台、冷蔵庫、冷凍庫、シンク、調理台などを含めて約200万円が予想されます。
排煙設備: 焼肉店は煙が多く発生するため、排煙ダクトや換気システムの導入が不可欠です。これには50万円〜100万円程度の費用がかかります。
広告宣伝費: 新規オープン時に必要な広告費として約100万円が見込まれます(食べログやホットペッパーなどのグルメサイト掲載費、SNS広告費など)。

これらの費用を合計すると、最低でも1,236万円の初期投資が必要です。

見落としがちな費用

焼肉店の運営では、見落としがちなコストがいくつかあります。以下にその例を示します。

1. 電気代・水道代: 焼肉店は冷蔵庫や焼き台の使用量が多いため、電気代や水道代が高くなる傾向があります。月々の電気代は約8万円、水道代は約2万円と見積もり、年間では約120万円かかります。

2. おしぼり代: おしぼりを提供する場合、1日100本を使用すると仮定して、月々約54,000円のコストがかかります。年間で約54万円の出費です。

3. 消耗品費: 食器や調理器具、清掃用品などの消耗品も定期的に補充が必要です。これらのコストは年間約25万円を見積もります。

4. 修繕費: 焼肉店では、排煙設備や冷蔵庫の故障、内装の損傷などで修繕費が発生します。これらの費用は年間約20万円を予備費として確保する必要があります 

5. 決済手数料: PayPayやクレジットカードの決済手数料は約3.5%とされ、売上に対して年間約166万円の手数料が発生します。

6. 広告宣伝費: 新規開業のため、グルメサイトへの掲載やチラシの配布、SNSの運営費用など、毎月5万〜10万円の広告費がかかることが多いです。年間で約60万円を計上します 。

7. 税理士費用: 年に1回の決算を依頼するために、税理士費用として年間約20万円が必要です。

売上予測

次に、売上を予測します。渋谷の焼肉店では、ランチとディナーの営業を行うことが多いため、それぞれの売上を分けて計算します。

ランチタイム

•客単価: 約2,000円
•1日あたり12テーブル × 1回転(1日) = 24,000円
•月間売上: 24,000円 × 30日 = 720,000円

ディナータイム

•客単価: 約6,000円
•1日あたり12テーブル × 1.5回転(1日) = 108,000円
•月間売上: 108,000円 × 30日 = 3,240,000円

合計月間売上

•ランチとディナーの合計月間売上: 720,000円 + 3,240,000円 = 3,960,000円

年間売上

•3,960,000円 × 12ヶ月 = 47,520,000円

年間の損益計算

ここまでのデータを基に、年間の損益を計算します。

1. 年間売上: 47,520,000円
2. 年間固定費: 28,189,200円(家賃、人件費、社会保険料)
3. 年間変動費: 19,008,000円(食材費など、売上の40%)
4.追加費用:
•電気代・水道代。おしぼり代他: 465.32万円

最終損益計算

年間損益 = 年間売上 – (年間固定費 + 年間変動費 + 追加費用)
年間損益 = 47,520,000円 – (28,189,200円 + 19,008,000円 + 4,653,200円)
年間損益 = 47,520,000円 – 51,850,400円 = -4,330,400円

結論: 焼肉屋を経営するのは厳しい?

このシミュレーションでは、年間の損益は約433万円の赤字という結果になりました。焼肉店の運営は、固定費が高い上に見落としがちなコストが多いため、経営を成功させるには売上を大幅に増やす必要があります。

この計算には雨の日や台風などで来客数が少ない時期は計算に入っていませんし、コロナの緊急事態宣言といった不確定な要素も入っていないので、さらにリスクは高くなります。

材料やスタッフを共有し、経費を圧縮できるチェーン店であれば、利益が期待できますが個人店の場合は、宣伝・集客から材料管理まで全て自前でやらなければならず非常に苦しいことが分かります。

さらに、廃業時のリスクも考慮する必要があります。スケルトン物件で契約した場合、閉店時には物件を元のスケルトン状態に戻して返却する必要があり、そのための原状回復費用が追加で発生します。これには、内装の解体工事や設備の撤去費用が含まれ、数百万単位のコストがかかる可能性があるため、廃業の際のリスクが非常に高いといえます。

渋谷という競争の激しい市場で焼肉店を経営するには、しっかりとしたビジネスプランとリスク管理が不可欠です。最初の数年間は赤字になる可能性を考慮し、十分な運転資金を確保することが成功の鍵となります。また、廃業リスクを含めた長期的な視点での計画が必要になりそうです。

そんなことから、怖い先輩に「焼肉屋でもハジめて一発儲けようや!」と声を掛けられても、「一度持ち帰って検討しますので、経営計画書と収益計画書を出してください」と厳しい対応で挑みましょう。

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