SNSと現実が連動する劇場型犯罪が増加している?

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インターネットへの投稿が現実の事件へと結びつく

古くは、2000年5月3日に発生した「西鉄バスジャック事件」があります。この事件の犯人は当時17歳の少年によるもので、犯行予告をインターネット掲示板「2ちゃんねる」に投稿しました。犯人は「ネオムギチャ」というハンドルネームを使用しており、このことから「ネオムギチャ事件」とも呼ばれています。インターネットが普及し始めたばかりの時期で、インターネット上での予告が現実の事件に直結する例として、当時大きな衝撃を与えました。

また、2010年11月4日には「尖閣諸島中国漁船衝突事件」が発生し、その映像が海上保安官によってYouTubeに流出されました。このいわゆる「sengoku38事件」も、インターネットが現実の事件を大きく広めるツールとして機能した例です。

単純な犯行予告とは異なり、こうした強い動機を持った告発型の事件も増えており、メディアが伝える情報に対する不信感や、正義感によってネット上で自身の動機や考えを公開するケースが見受けられます。

舞台は掲示板からSNSに移動

最近では、SNSが犯罪や事件の情報発信として利用するケースが目立ってきています。
2022年7月8日、世間を震撼させた「安倍晋三元首相銃撃事件」が発生しました。この事件の犯人である山上徹也容疑者は、その動機についてSNS上で投稿していたことが話題となりました。

事件当時スクリーンショットを保管

山上容疑者は、「silent hill 333」というアカウント名でTwitterを利用しており、そのアカウントが彼本人ではないかと疑われました。事件後、彼の過去の投稿が注目を集め、フォロワー数は急速に増加。リアルタイムで見ていた私も、彼のフォロワーが瞬く間に1,000人未満から15,000人に増加する様子を目撃しました。しかし、数日後にこのアカウントは凍結されました。

通常、犯行声明や動機は警察を通じてメディアに発表されますが、SNSの普及により、個々の投稿が直接一般人に伝わる時代が到来しました。こうした投稿が感化され、模倣犯が現れるリスクも増しています。かつての「グリコ・森永事件」でも、テレビの報道を受けて感化された模倣犯が企業脅迫を行った例がありました。

現実とSNSが連動する時代

最近の事例として昨日の「ヤマハ発動機の社長切り付け事件」が挙げられます。
一昨日、Twitterで「ヤマハ発動機社長の娘」を名乗るアカウントが意味深なツイートをしており、話題になりました。最初に私がそのアカウントを見た時は、最新の投稿に対して「いいね」が500件ほどで、フォロワーも非常に少ない状況でした。

ヤマハ発動機の日高社長□親子ゲンカ□で負傷、殺人未遂容疑で娘を逮捕[新聞ウォッチ]

ヤマハ発動機の社長が就寝中に包丁で切りつけられたか 娘(33)を殺人未遂の疑いで逮捕

しかし、Yahoo!ニュースで「ヤマハ発の社長切り付け事件」が報道されると、そのアカウントの投稿が現実の事件とリンクしていることが明らかとなり、急速に注目を集めました。

ニュースが出た後、そのアカウントのフォロワー数は一気に4,542人に増え、最新の投稿への「いいね」も同程度まで増加しました。
ニュースによれば、社長は軽傷で済んだとのことで一安心しましたが、翌日にはフォロワーがさらに増加し、1万1,000人を超えるほどになりました。「いいね」数も2万5千件を超えていました。

わずか1日で2万いいね増加 閲覧数も1,652万件に

このように、SNS上での投稿がリアルタイムで現実の事件とリンクし、その情報が瞬時に拡散される時代に私たちは生きています。これにより、一般人がダイレクトに事件の関係者の投稿に触れ、感情や意見が大きく左右されることが避けられません。

一般人がこうした投稿をダイレクトに見てしまう時代

2024年現在、インターネット上で発生する事件や犯罪は、SNSを通じて急速に拡散され、一般人がそれを直接目にすることが当たり前の時代となっています。特に、犯行をSNSで公開することで、犯人の思想や動機に触れる機会が増え、同情や共感を引き起こすことも少なくありません。これにより、SNS上で犯行が再現されたり、感化された人々が犯行を計画するという危険も増しています。

この状況にはメリットとデメリットの両面があります。メリットとして、SNSは従来のメディアが報道しない情報や、事件の背景をより深く知ることです。一般人が直接情報にアクセスできることで、真実に迫ることができる一方、偏った報道や意図的に切り取られた情報から逃れる手段にもなります。たとえば、事件の当事者や関係者からの直接の発信を通じて、感情的なつながりが強まることもあり、事件の背景をより理解しやすくなる点が挙げられます。

一方で、デメリットとしては、こうした投稿が引き金となって新たな犯罪が誘発されるリスクや、精神的な負担がかかることが大きな問題です。強い自精神がなければ、犯罪に関する投稿や犯行予告を繰り返し見ることで、心理的な悪影響を受け、恐怖や不安が増す可能性があります。また、SNS上で発信される過激な内容や思想に感化され、模倣犯が現れるリスクも高まっており、これが社会に与える影響は計り知れません。犯罪が「舞台」として扱われることで、その境界が曖昧になり、私たちの日常生活により身近に犯罪が迫っていると感じることが多くなっています。

昔では考えられなかったこの状況は、インターネットの普及と共に現実の一部となりつつあります。SNSが犯罪の「舞台」となり、我々はそれに巻き込まれないよう、より一層の警戒が必要な時代が訪れたと言えます。SNSを通じて得られる情報は重要である反面、適切なフィルタリングや心のケアが求められる場面も増えてきそうです。

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