入門に便利な新書、選び方に気をつけて

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ちょっとした知的好奇心を満たすのに便利なのが、書店に並ぶ「新書」です。
新書とは、特定のテーマや話題について、易しい文章や内容で解説した書籍の形式で、高さ18センチ程度のサイズの本になっています。専門家が初心者にも分かりやすく解説してくれるので、気軽に入門することができます。

(※この記事は中立的な思想ではなく、私の偏った個人的なブログ記事ですので、ご留意ください。)

なぜ気をつけた方が良いのか?

新書の中には、自費出版と広告が組み合わさったようなスタイルのものも存在します。出版にあたり、著者に対する基準は設けられていないため、名誉ある大学教授から医師、公務員、あるいは私のようなブロガーレベルまで、玉石混交です。

最も問題のある新書は、商品やサービスを売る目的で出版されているものです。
たとえば、「本当は怖くない!ガンは3ヶ月で治る!」といったタイトルの本は、後半で自社商品やサービスがいかに優れているかを宣伝して書いています。さらに悪質なのは、第三者視点で公平に比較しているように見せかけた、論文風の形式を取っているものもあります。

標準治療の抗がん剤と民間療法を比較する際に、サンプル数5〜10名の結果を平然と引用してくるような新書もあります。医師免許を持つ著者でも、民間医療に転向し、怪しいサプリメントや治療を提供している場合があるため、このような情報には慎重になるべきです。

ひどい歴史書も存在する

最近読んだなかで、最もひどい新書として挙げられるのは『絶対に挫折しない日本史』(古市憲寿、新潮新書、2020年)です。

途中までまともな日本史を教えているように見えますが、江戸時代あたりから徐々に怪しくなっていきます。特に、「日本がいかに戦争で過ちを犯していたか」を誇張し、政治的な主張を混ぜ込んでいる箇所が目立ちました。著者が大学教授かと思いきや、本の最後まで「史学」を教えてくれるわけではありませんでした。

『日本はいつ「終わる」のか(平成〜未来)』に至っては、エビデンスの低い情報を引用し始め、第二部の「テーマ史編」では、神話と物語の日本史、土地と所有の日本史、家族と男女の日本史、戦争と平和の日本史が続きますが、フェミニズムや左翼的な主張が色濃く出ています。

たとえば、次のような主張です。

「暴力を伴う戦争は過去のもの。これからは情報戦争が主流で、アメリカ、ロシア、中国などの先進国は、流血を伴う戦争を絶対にしない。」

初版発行が2020年9月17日ですので、当時はそう思ったのかもしれません。しかし、発行の2年後には、ロシアがウクライナを侵略し、民間人を含む大量虐殺を行いました。ロシア正規軍が民家を破壊し、民間人に対して拷問や凌辱を行うなど、ウクライナ侵攻開始から2年半で民間人の犠牲者が1万1520人に達しました。また、中国もウイグル族への弾圧・迫害を行い、次は台湾に政治的な圧力をかけています。

古市憲寿氏の主張は理想主義的で、現実を見誤っていることが明らかです。『絶対に挫折しない日本史』と銘打っているにもかかわらず、本書の後半はこのような政治的な主張が中心になっています。

初めて本書を読み、左寄りな思想に驚いて著者の氏名を検索したところ、「上野千鶴子」という名前が関連検索に出てきて納得しました。この二人は、社会学の先輩・後輩であり、共著も出版している仲であると紹介されています。上野千鶴子氏は左翼的かつフェミニストで、彼女の思想が古市氏の歴史書に色濃く反映されていました。

私は電車で本を読むことが多いのですが、ここまで酷い新書に当たったのは初めてで、あまりの怒りから帰りの駅で本をゴミ箱に捨ててしまいました。私の大好きな塩野七生氏でさえ、「歴史の正史をベースにした創作読み物」と厳しい批評を受けることがありますが、古市憲寿氏の本書は日本史どころか、単なる「お気持ち表明レベル」です。『日本が戦争をするべきでなかった10の理由』にでもタイトルを改めて欲しいです。

入門に便利な新書ですが、中には疑似科学や政治的な主張が強い本も紛れ込んでいます。読んでいて「アレ?」っと思ったら、別の本を参照するなど、調べ直すことが大切です。また、著者が他にどのような本を書いているかを調べるのも有効です。たとえば、古市憲寿氏の場合、歴史書は1冊だけで、他には『誰も戦争を教えてくれなかった』『希望難民』『だから日本はズレている』といった戦争や難民をテーマにした本が多く見られます。

こうした理由から、新書を選ぶ際には十分注意してください。

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