ジャーミン通りの古参店 フォスターサン
かつて世界の中心と呼ばれたロンドンのピカデリー広場から一本入ったところに、紳士の聖地とも言える通りがあります。ジャーミン通り。それほど大きな通りではないのにも関わらず、紳士にとってこの通りの存在は生活に欠かすことができません。
老舗シャツのTurnbull & Asser ターンブル アッサーやHilditch & Key ヒルディッチ キー、紳士服ブランドのHACKETT LONDON ハケット ロンドンを始めとして、実に様々なブランドがこの通りに店を構えているのです。
もちろん英国の靴ブランドもほぼ全てがここに店を出しています。JOHN LOBB PARIS ジョンロブ パリ、EDWARD GREEN エドワード グリーンなどの高級靴ブランドはもちろん、GRENSON グレンソンやLOAKE ロークといった比較的手軽なブランドも軒を連ねています。
しかし中でも独特な雰囲気を放っているのが、このFOSTER & SON フォスター サンです。
FOSTER & SON フォスター サンもまた1840年創業と非常に歴史のある靴工房です。顧客にはポール ニューマンやフレッド アステアを始め、様々な有名人が名を連ねます。
日本人職人の活躍で有名に
基本的にはビスポーク専門の靴ブランドであったこともあり、日本での知名度はあまり高いとは言えませんでした。
しかし日本人の女性職人 松田笑子 氏が2002年よりFOSTER & SON フォスター サンに入店しました。
この日本人の女性職人が活躍していることがメディア等で紹介されると、日本での知名度も高くなって、注目されはじめたというわけです。
最近ではビスポークのトランクショーが日本で開催される他、日本のセレクトショップで既成靴の取り扱いも始まるようになりました。
奇跡の木型職人 テリー・ムーア
もともと靴づくりの名店であったFOSTER & SON フォスター サンですが、このブランドをロンドン随一の名店に押し上げたのがテリー・ムーアという伝説的な木型職人です。
彼は1965年からFOSTER & SON フォスター サンで靴を作り続け、完璧なフィッティングを生み出し続けています。まるでこの人本人が奇跡の木型であるかのように、彼が手がければどんな足にもフィットする靴が出来上がる、とつとに有名なのですね。
FOSTER & SON フォスター サンの靴の特徴はまず、極端さや過剰さとは無縁な非常にクラシックな佇まいでしょう。全体的になんとなく丸みを帯びており、足の立体をそのまま生かすような自然な曲線で構成されるFOSTER & SON フォスター サンの靴は、とても控えめでエレガントです。
テリー・ムーアは常に「エレガントであること」を第一としています。質実剛健で、特にはカントリー的なニュアンスも持つノーザンプトンの靴に対して、FOSTER & SON フォスター サンが打ち出す方向性でもあったのですね。
フォスター サンの既成靴をどう見るか?
この名門ビスポーク靴ブランドFOSTER & SON フォスター サンがノーザンプトンに自社の靴工場を新設したのは、他のブランドにとっても驚きだったでしょう。ノーザンプトンにとっては30年ぶりの新工場、不景気の続く英国にしては異例の話ですが、これは日本の商社が出資したことで始まった工場です。
この商社の子会社が日本さらにはアジア全域においてフォスター&サンを独占的に輸入販売し始め、いずれは日本旗艦店の開設も予定しているとのこと。
老舗のビスポーク靴ブランドがこのような大きな展開をし始めることは珍しく、これがどのような結果をもたらすかは、今のところ誰にもわからないことです。